(160)夏からの贈り物
真っ青な空に、モクモクとふくらみ、どんどん大きくなっていく白い入道雲。
廿日路(はつかじ)の 背中にたつや 雲の峰
与謝蕪村
(意訳)
中山道を行く旅人の背中に入道雲が湧き出ている。
「廿日路」とは中山道のことで、江戸から京都まで約20日かかることからこの別名が付けられたといいます。
沸き立つ入道雲(雲の峰)は、夏の鮮烈な風物詩です。
次々と湧き上がる入道雲 丹波山地にて
夏になると、ふとした光景に思い出が浮かび上がり、気持ちが昂ります。
入道雲、花火、ひまわり、かき氷、浴衣、麦わら帽子
あるいは蝉の声や、風鈴の音色
そして茜色に輝く西の空
夏の茜空 和歌山加太にて
ひとことで 私を夏に 変えるひと
白のブラウス ほめられている
俵万智
(未来のサイズより)
俵万智さんが詠んだ夏の恋歌です。
白を纏う 平安神宮神苑の睡蓮
※スイレンの花言葉は「清純な心」
陽射しの眩しさが日に日に増していく真夏の入口で、ひときわ視線を引く白色は、光を反射し「涼しさ」「清潔感」を連想させます。
白は、色というより「光を纏う色」なのかも知れません。
古来から真っ白な衣は夏の象徴だったようです。
春すぎて 夏来(き)にけらし 白妙(しろたへ)の
衣ほすてふ 天の香具山(あまのかぐやま)
持統天皇
(意訳)
夏になると衣を干すという 天の香久山に白い衣が干してあるのが見えるわ。
天上から山が降りてきたという神話が語られる天の香具山は、畝傍山、耳成山とともに大和三山と称されます。三山に囲まれた地は、持統天皇(さらら姫)により遷都された藤原宮です。
さらら姫は、きらめく緑と純白のさわやかな夏の色に、はるか古代のロマンス伝説に思いをはせていたのかもしれません。
夏は、藤原宮に今なおロマンの香りを贈ってくれます。
いにしえに想いをよせて やさしい香りが漂う古代蓮
※古代蓮の花言葉は「清らかな心」
「枕草子」 第一段 (抜粋)
清少納言
夏は夜。月のころはさらなり、
闇もなほ、ほたるの多く飛びちがひたる。
また、ただ一つ二つなど、
ほのかにうち光りて行くもをかし。
雨など降るもをかし。
(意訳)
夏は夜がいい。月が輝いている満月のころは言うまでもなく、月が出ていない新月のときでも、ほたるが飛びかっている光景がいい。また、ほたるが1匹2匹と、ほのかに光って飛んでいくのも趣きがある。雨など降るのも趣きがある。
涼月の輝き
夏の夜空に浮かぶ月は、涼やかな心地よいひとときをもたらしてくれます。
暑さから一息つく夜、昇る月の光に涼しさを感じてきた人々は、夏の月を「涼月(りょうげつ)」と呼び、月を愛でてきました。
夏の月 昇りきつたる 青さかな
阿部みどり女
「夏の月」は暑い夜に青白く輝く涼しげな月です。夏の空の高い位置で輝く月はいかにも涼しげです。
涼やかな音色を奏でて♪
「風待月(かぜまちづき)」とも呼ばれる夏は風が恋しい季節です。
暑い日が続くと、風を恋しく待ち、ほんのささやかな風にも救われる感じがします。
さーっと吹く風になびき、涼し気な風鈴の音が聞こえてきます。
古くは寺院の魔除けだった風鈴も、今では夏の風物詩。
夏ならではの音色がやさしく響きます。
露草(つゆくさ)
※花言葉は「ひとときの幸せ」






