(71) 冬のぬくもり

 

 

 

 夜更けに音もなく雪が降り積もると、翌朝いちめん銀世界に変わる冬。ほんの一日を境にして様変わりする、この季節の不思議です。

 

 

 大和 當麻寺庭園

 

 

 

 いよいよ雪の話題がふえる年の瀬になりました。

 

 子どもの頃は冬ならではの遊びにわくわくしていましたが、、、

今は熱燗におでん、鍋、、、温かいものに目が向くこの頃です。

 

 

       どぶろくと おでんは 夜の 共稼ぎ

                            (江戸川柳)

 

 

 大根、こんにゃく、厚揚げ、玉子、がんもどき、少し贅沢して牛すじにタコ、、、あつあつのおでんは冬の風物詩そのもの。

 

 寒い、ということが旨いにつながる幸せのひとときです。

 

 

 湯気が嬉しい おでん屋のおでん

 

 

 俳句では「おでん」も季語だそうです。もちろん冬の季語。

 

       戸の隙に おでんの湯気の 曲がり消え

 

       おでんやを 立ち出でしより 低唱す

 

       振り向かず 返事もせずに おでん食ふ

 

       志(こころざし) 俳諧にあり おでん食ふ

 

 

 いずれも おでん好きで有名な高浜虚子のとぼけた味わいがある句です。

 

 おでんの湯気は身体だけでなく、気持ちまでも温めてくれます。

 

 

 

 慌ただしい年の瀬で忘れがちな「思いやり」や「温かい気持ち」を思い出させてくれる童画があります。

 

 

 西島伊三雄童画カレンダー 「昭和 あの頃」より (あぶり出し)

 

 

 西島伊三雄画伯は、子どもたちに継承していきたい日本の心のぬくもりを、ほんわかやさしい童画で伝えてくれてます。

 

 

            西島伊三雄童画の世界「あやとり」 

                           (QUOカードより)

 

             「一緒にやろう」と

             ヒモをかけた両手を

             姉がさし出してきた

             中指にひっかけたり

             親指をはずしたり

             だんだん複雑になり

             とうとうもつれてしまった

             火鉢のそばでタマが

             気持ちよさそうに寝ている

    

 

 

 

 寒い中でも、誰かといると心が温かくなります。

 

 

      「寒いね」と 話かければ 「寒いね」と

              応える人のいる あたたかさ

                              俵万智

                                    (サラダ記念日)

 

 

 普段、身近にいるのがあたり前になっている人に、ふと、ぬくもりを感じるのもこの季節なのかも知れません。

 この歌が持つほのぼのとした雰囲気に、人の幸せがじんわり伝わってきます。

 

 

 夫婦、両親、兄弟姉妹、恋人、など、いつも支えてくれる大切な人への感謝をつづった歌があります。

 

 

               心 の 瞳

                         作詞  荒木 とよひさ

                         作曲  三木 たかし

                          歌   坂本 九 

           

         心の瞳で 君を見つめれば

         愛すること それが

         どんなことだかわかりかけてきた

         言葉で言えない 胸の暖かさ

         遠まわりをしてた 人生だけど

         君だけが いまでは

         愛のすべて 時の歩み

         いつも そばで わかち合える

         たとえ あしたが 

         少しずつ 見えてきても

         それは 生きてきた 

         足あとが あるからさ

         いつか 若さを 

         失くしても 心だけは

         決して 変わらない 

         絆で 結ばれてる

 

         夢のまた夢を 人は見てるけど

         愛することだけは 

         いつの時代も永遠(とわ)のものだから

         長い年月(としつき)を 歩き疲れたら

         微笑みなげかけて 手をさしのべて

         いたわり合えたら

         愛の深さ 時の重さ 

         何も言わず わかり合える

         たとえ 過去(きのう)を 

         懐かしみ ふり向いても

         それは 歩いてた 

         人生が あるだけさ

         いつか 若さを

         失くしても 心だけは

         決して 変わらない 

         絆で 結ばれてる

 

         愛すること それが

         どんなことだかわかりかけてきた

         愛のすべて 時の歩み

         いつも そばで わかち合える

 

         心の瞳で 君を見つめれば ・ ・ ・ ・ ・


 

 

    冬空のすずめ

 

 

 

 頬が切れるほどの冷たい風が吹きすさんでいても、

 『おかえり』の一言で暖かくなる胸のなか。

 冬のぬくもりは、あなたにそっともたれていくこと、、、

 外はとても寒いから。