(155)青の詩(うた)

 

 

 

青空を旅する「蓮角(れんかく)」   平城宮跡にて (再掲)

※インド、東南アジアに生息する日本では数少ない旅鳥

 

 

 

『青い空』

         金子みすゞ

 

なんにもない空
青い空、
波のない日の
海のよう。

 

あのまん中へ
とび込んで、
ずんずん泳いで
ゆきたいな。

 

ひとすじ立てる
白い泡、
そのまま雲に
なるだろう。

 

            「金子みすゞ 童謡全集」より

 

 

詩人、金子みすゞにとって、空は憧れの的。想像の翼を羽ばたかせることができる場所だったようです。

 

 

 

 

 青の夜空   アラビア半島 リワ砂漠にて (2018年4月撮影)

 

 

 

『あお』

         谷川俊太郎

 

よるのやみに ほろぶあおは
あさのひかりに よみがえる あお
あおのかなたに すけているいろは なにか

うみのふかみに にごっていくあおは
そらのたかみに すみわたる あお
あおのふるさとはどこか

こくうをめざせば そらのあおはきえる
てのひらにすくえば うみのあおはすきとおる
あおをもとめるのは めではない

かなしみのいろ あこがれのいろ
あおはわたしたちの たましいのいろ
わたしたちのすむ このほしのいろ

 

「シャガールと木の葉」より

 

 

「青」は、悲しみの色 憧れの色 私たちの魂の色 私たちの住む この星の色です。

 

果てしなく広がる空と静けさをたたえる海がもたらす[青」は、単なる風景以上の深い心象をもたらしてくれます。

 

 



青い炎        富山県・黒部ダムにて

 


 

大和の国・薬師寺には、「西遊記」三蔵法師のモデル、玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)の像が祀られた「玄奘塔」があります。

経典を手に入れるまでは絶対に東に向かって帰らないという玄奘三蔵の不屈の信念を二文字にした扁額「不東(ふとう)」が、この「玄奘塔」に掛かっていますが、その基調は、魂の色「青」です。

 

 

高田好胤和上の染筆

 

 

中国は唐の時代、都 長安(ちょうあん)で務めに励んでいた玄奘三蔵は、飢饉などの厳しい現実に直面し、より深く仏教の原典を学ぶため、天竺に行くことを希望します。
しかし、当時の人々にとっては本当にたどり着けるのかわからない未知の旅。さらに、旅には出国の許可が必要でしたが、国内の情勢不安からその許可も下りません。
それでも諦めない玄奘三蔵は、ひとり秘かに出国します。
指名手配犯として追われたり、賊に襲われたり、砂漠で遭難したりの、過酷な旅路を生き抜き、ついに天竺のナーランダー僧院へ辿り着き、仏教の研究に勤めました。

 

 

 

法相宗大本山 大和の国・興福寺

※法相宗の始祖は玄奘三蔵。総本山は、薬師寺と興福寺です。

 

 

その過酷な求法の旅は、往復3万キロ以上、かけた年月は17年という壮大なものです。そして天竺での修業を終えた玄奘三蔵は、数多くの経典・仏像などを携え再びシルクロードを通って唐へと帰ります。帰国後は持ち帰った経典類の翻訳に従事し、20年の歳月をかけて、大般若経600巻をはじめ75部1335巻の翻訳事業を成し遂げたのです。

 

帰国した玄奘三蔵は持ち帰った経巻の訳業を皇帝に願い出ましたが、許可にあたり西域の状況を記すよう命じられます。

その時の玄奘三蔵の口述をもとに編纂されたのが『大唐西域記』(だいとう さいいきき)です。

 

 

 

              キキョウの花       ※花言葉は『永遠の愛』

 

 

時代は下り、西暦1976年(昭和51年)。

当時の薬師寺管主 高田好胤和上は、玄奘三蔵の遺徳を顕彰する壁画制作を平山郁夫画伯に依頼します。

『仏教伝来』を作品制作の原点にしてきた画伯にとっても、玄奘三蔵は特別な思い入れのある人物です。

和上の依頼を画伯は快諾します。

 

以来、平山郁夫画伯は、玄奘三蔵の苦難の旅を追体験して描くため、シルクロードへの現地取材を重ね、制作期間は20年以上に及びました。

 

 

砂漠を旅する   アラビア半島 リワ砂漠にて (2018年4月撮影)

 

 

 

2000年(平成12)の大晦日に薬師寺玄奘三蔵院において開眼供養が行われた壁画は全長約49メートル。壁面13枚に中国・長安からインド・ナーランダ寺院へ至る7場面が描かれ、場面の時間は朝から夜へと推移してゆきます。

 

玄奘三蔵が記した『大唐西域記』にちなみ、「大唐西域壁画」と名づけらた大壁画は、薬師寺玄奘三蔵院の「大唐西域壁画殿(だいとうさいいきへきがでん)」に安置されています。

 

壁面中央の「西方浄土 須弥山(しゅみせん)」は、遠くにみえる雪の積もった峻厳な山々の姿が、空の深い青に浮かびあがっています。

 

 


平山郁夫画伯 『大唐西域壁画 西方浄土 須弥山』

※画像はポストカードよりお借りしました

 


果てしなく続く青い空を見上げると、瞼に浮かぶ想い人

あの人のまなざしが、アルバムでやさしく微笑んでいます
 『 「青」は、悲しみの色 憧れの色 私たちの魂の色 』

青い空は心を優しくを包み込んでくれます

 

 

段菊            奈良・万葉植物園にて

            ※花言葉は、『幸せが来る』

 

 

 

良いお年をお迎えください!!