今年の大河ドラマに寄せた本が多数出版されていますが

今回読了したこの本は 2006年に発表された本だそうで

残念ながら 著者は翌年亡くなられているとのことで

まさか18年後に 紫式部を主人公にした大河ドラマが

放送されるとは思ってなかったのでは?

 

そう思うと感慨深くもあります。

 

タイトルに”小説”という文言がありますが

紫式部が書いた「源氏物語」はあまりにも有名でありながら

著者の紫式部については 史料が少なくて・・。 

 

史料が少ないからこそ その人物を題材にする時に考える必要があるのが

本書最後の解説にもある「史実」と「虚構」の距離感とあり

作家の興味、想像が膨らむ人物でしょうが

読者を引っ張っていく作家の技量に委ねられている要素も多く

難しい題材とも考えられそう。

 

当時としては かなり晩婚だった紫式部は

男性嫌いになったきっかけにより

学問好きもあって 結婚よりも生涯物語に携わっていきたいという意識が

本書では強かった傾向にあったようです。

 

道長のことも 横暴さに怒りを抱き 嫌悪感さえ抱いている様子だし

本書とドラマの紫式部は 多少・・いや・・かなり違う印象となっていて

その違いを楽しむことが出来ました。

 

男女とも 昔の価値観、道徳観は 現代感覚では理解しがたい面もあるけれど

それはそれで面白くもありますね。

 

女性は結婚してこそ価値があるというあの時代にあって

紫式部の才能に惹かれて 寄ってくる男たちがいたことは

同じ女性として 誇らしくもありました。

 

紫式部本人は 和泉式部の才能に憧れているようだったけど

周囲の者たちに「源氏物語」が受け入れられていることを感じると

清少納言はもちろんのこと 和泉式部のことも

見下すようになるというのは

彼女のプライドの高さも感じさせた小説でした。