読了したこの本、徳川九代将軍家重を題材にしていると知って

もうかなり待ちました!

しかし、待った甲斐がありました!

 

 

徳川九代将軍の家重は 生まれつきの障害、脳性麻痺のせいで

言語不明瞭な将軍だったのは有名な話。

果たして 家重は将軍として相応しいのか?と

父親の吉宗さえ不安に思っていて廃嫡の噂さえ飛び交うことに。

 

一方で聡明な将軍ということも聞いたことがありましたけど

そうだとしても その彼の聡明さを証明する言葉を

どうやって家臣たちは理解していたのだろうか?という疑問は

以前から持っていました。

 

家重の言葉を理解し伝える役目

・・つまり通詞を担うことになった人物がいたんですね。

その驚くべき聞き取り能力をもっていたのが

もう一人の主人公、大岡忠光。

 

 

だけど、この立場にいれば 家重の言葉など

自分の出世に都合の良いように変えてしまうかも・・なんですが・・。

 

それじゃ、幕府を蔑ろにする政に繋がった

以前の側用人みたいでは?という危惧もあったようですが

何しろ、家重の言葉を理解出来る人が この忠光しかおらず・・という状況。

 

しかし、忠光は欲を持たず

家重が言ったとおりの通詞に実直に徹することを自分に課します。

 

それまでの家重は自分の言いたい事、やりたい事を誰にも理解されず

陰では姿を揶揄される「まいまいつぶろ(カタツムリ)」と

蔑まれていることも知っていたけれど

忠光を通して周囲の人達と繋がれた喜びを感じる姿がありました。

 

しかし、何と言っても 将軍の一番の使命は 世継ぎを作ること。

宮家から嫁いできた御台所も 家重の姿に最初は驚き恐れますが

次第に彼の優しさに触れ 心がほぐれていく様子は 涙を誘います。

 

自分の障害にコンプレックスを持っていた家重に

最期が近づいた時 その障害のおかげで忠光と出会えたと感謝する姿があり

胸がジーンと熱くなりました。