図書館システム更新の為 今日から来月14日まで休館となってます。

図書館が休みなのは ちょっと寂しい・・。

でも、休館明けには きっと使い勝手が良くなっていると期待したいです。

 

今回読了したこの本は 彰義隊に焦点を当てた作品で

幕末に起こった悲惨なこの出来事は 

小説として読んだことがなかったな~と予約していて

図書館の休館前に読めて良かったです。

 

 

こういうのって トップの人物の生きざまを描きがちですが

今回は 川越藩右筆の父を持ち 次男として生まれた小山勝美という

彰義隊の中でも 末端の人物が主人公。

 

偉丈夫で両親の期待が大きい兄に対して劣等感を持ち

歌川国芳の弟子である芳近を慕って絵に興じる日々でしたが

時代はそんな勝美にのんびりと絵を描くことを許してはくれませんでした。

 

徳川幕府が賊軍となり 薩長軍による新政府が江戸を攻撃せんとしようとする時で

勇敢な兄に連れられて 彰義隊に加わることになった勝美。

 

彰義隊と言えば 悲劇的な最期が印象的ですが

新政府軍の侵攻から 江戸の町を守ってくれる存在として

江戸の庶民から慕われていた姿がありました。

 

しかし、わずか半日ほどで終焉を迎えた上野戦争。

あまり戦いに積極的意思のなかった勝美。

戦いなど 所詮、単なる殺し合いでしかなく

無理やりにでも付けた身勝手とも言える大義の中で

人を殺すことに怖れを感じ、疑問を抱き続けていた勝美。

 

敵であるはずの薩摩の益満休之助との出会いは特に印象的で

彼は西郷隆盛と勝海舟の会談のお膳立てをした山岡鉄舟を案内した人物だそうで

そのお陰で江戸城は無血開城となり 

江戸の町は火の海にならなかったという

・・いわば功労者の一人とも言えるはずなのに

新政府軍からは 朝敵である徳川の使いをした者として蔑まれ

結果、上野戦争時に 味方から見捨てられたように

死んでしまったのは 切なかったです。

 

新政府軍だって 流れ弾にあった者は多いだろうし

例え、味方であろうと 撃たれたからと言って 

いちいち救助している場合ではなかったでしょうが

真実は分からないけれど 徳川を助けたと

味方からは まるで裏切者であるような視線はあったんでしょうね。

 

益満休之助のように 戦争など起こすべきではないという考えによる

表面的にはどっち付かずの半端者に見えてしまう行動が

時に平和へと導くこともあるんだろうな~と

今もどこかで続いている戦争のことを考えてしまいます。

 

江戸を戦場にしたくないと言っていた益満休之助の死を目の前にした勝美は

「誰がこんな戦いを起こした!」と怒りながら絶叫します。

 

徳川幕府、慶喜を守るために戦った彰義隊のお墓は

現在、上野の西郷隆盛像の後ろに 

歴史の哀しさを感じさせるように ひっそりと建っています。

 

本書、主人公の小山勝美という人物ですが

後に 東洲勝月という有名な絵師になった人物がモデルのようで

ネットで検索してみると

<上野公園地第三回内国博覧会之図>が出てきました。

上野戦争の舞台であったこの地で行われた博覧会の絵を

どんな気持ちで描いたのかと 時の流れを感じました。