先日読んだ『貸本屋おせん』の中で

当時、曲亭馬琴の本を楽しみにしている人々のことに

何度か触れられていました。

 

それで西條奈加さんがこんな本を出していることを知って借りてきました↓

 

曲亭馬琴と言えば「南総里見八犬伝」ですが

何かの本で 彼は晩年目を患い それでも執筆意欲が衰えることなく

息子の嫁に口述筆記を頼んでいたことを知っていましたが

本書は その嫁であるお路の目から見た滝沢家のお話です。

 

西條さんの創作も入っているだろうけど

一般的に芸術家と言われる人物を支えるのって

こんなにも多くの人を巻き込んだ犠牲を払う必要があるのかと愕然としました。

 

お路という女性は 本来ポジティブで明るい性格だったようですが

嫁いだ夫は 偉大な父親の陰で 卑屈な劣等感の塊の人間で癇癪持ち

父親である馬琴と言えば

頑固で偏屈で他の戯作者を侮りプライドが高くて・・絶望

私だったら 即離縁させていただきますわ~真顔

(実際、お路もそんな風に一旦は決断はしたんですけどね)

 

 

幕府の政策により出版統制が敷かれていた当時

失意の内に 亡くなった戯作者、読本作家らがいたことを思うと

もしかしたら 曲亭馬琴は 幸運だったのかも知れないけど

本書で 夫を亡くし、子を亡くしたお路が

「八犬伝」を恨んでいたような描写もあって

家族にしたら そりゃそうだよね・・と思ってしまいました。

 

だけど、ある日、口述筆記にウンザリして

「八犬伝」を恨みながら町中を歩くお路が

物語を楽しみにしている人々の存在を知った時

一時でも物語の世界へと導いている義父の馬琴を誇りに想い

支える自分の使命へと心を動かされます。

 

『貸本屋おせん』に出てくる馬琴の本を楽しみにしていた人々に

重なりますね。

 

馬琴の死後 読みやすい「仮名読八犬伝」として出版され

協力者と共にお路らによって幕末まで続いたんだとか。

彼女の筆名は”曲亭琴童”

あ~、そうだったのね・・と

西條さんによる労いの気持ちがこもった本書を

お路が知ったら どう感じるだろうか・・とも感じました。

 

 

そう言えば 2019年9月にこんなツアーに参加した時

<滝沢馬琴硯の井戸跡>を訪れたことを思い出しました↓

あの時訪れた場所で 人々が楽しみにしていた「南総里見八犬伝」は

お路の助けと共に書かれていたのね・・・

と、感慨深い思いも沸き上がってきました。

 

外神田にも住居跡があるようで

お路のことを思い出しながら

いつかそちらも訪れてみたいと思いました。