本日読了したのは久々のタイムスリップもので

飛びこんだのは「源氏物語」の世界。

 

恥ずかしながら 高校の古文の時間は睡眠時間だった私は

次々に現れる光源氏の相手を覚えられず

またその人間関係が複雑すぎて敬遠していたんですね。

だけど、最近になって 面白さがすこ~しだけ分かってきたような?キョロキョロ

・・そんな感じです。

 

そんなうっすらとした知識しかなかった「源氏物語」ですが

今日読了したこの本で こんな私でも夢中になって

主人公が戻った最後の方では 少し涙さえ出ました。

 

 

容姿も性格も頭も優秀過ぎる弟を持つ就活中の伊藤雷は

表立っては弟を褒めないようにと 両親にさえ気を使われています。

 

コンプレックスの塊の雷はある日

バイトで製薬会社主催の「源氏物語と疾患展」という

イベントの設営をすることになり

登場人物たちが病んでいたと想定される病状に合わせたサンプルとあらすじ本を

与えられてたんですね。

 

 

そして、雷がある日飛び込んだのは源氏物語の世界!

そこには自分と同じようにコンプレックスを抱えた桐壺帝の後継者の一宮と

その母の皇妃・弘徽殿女御がいた・・・っていう訳です。

この一宮の弟二宮は言わずと知れたスーパースター光源氏。

これってまるで自分達兄弟じゃないか?!と感じる雷です。

 

ほとんど「源氏物語」の知識など持っていない雷ですが

バイトの際に与えられていた「薬のサンプルとあらすじ本」を元に

未来を予想出来る力や体の調子を良くしてくれるということで

陰陽師としてもてはやされ重宝されます。

 

最初は現代に戻りたい一心だった雷が

不便さもありながらも切なさや心地よさも感じるようになり

現代では持てなかった自信と幸せな家庭でこの世界で生き抜く覚悟を持つようになります。

 

時に幸せそうな雷の様子に笑みが浮かんだり

切ない別れに涙が込み上げてきたりと

もうこのまま現代に戻らない方がいいとさえ私も思いましたもの。。

 

 

紫式部さえ注目してなかった弘徽殿女御に女性としての力強さや先鋭的な思考を与え

段々と雷にも応援みたいな感情が湧いてくるのですが

光源氏さえも彼女のことを陰で慕うようになり

真の愛情を教えてくれた女性として描かれています。

 

大抵のタイムスリップものでは 現代に戻ってきますし

この小説でも結局はそうなってしまいます。

だけど26年もいたあの世界に戻りたくてしょうがない雷は

弘徽殿女御をテーマに研究者を目指そうとするんですね。

 

 

著者の内館牧子さんは<あとがき>で

学生時代の古文の時間にで桐壺更衣や藤壺を持ち上げるために

弘徽殿女御を底意地の悪いキャラクターとして書かれていることに

不快感を抱いていて この小説を書こうと思ったとのこと。

 

こんな風に元の物語をほとんど知らない私のような者に向けて

スポットの当たらない人物を通して分かりやすく物語にしてくれる。。

作家さんって 目の付け所がスゴイっ!拍手