佐々涼子さんの著書『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』

とても良かったので

ドラマ化されたものがBSで放送ということで

楽しみにして 観ていたのですが

ドラマ化あるあるというか

主演の人物ありきのようで やっぱり原作の方が良かったなと。。

 

で、昨年11月に出版されたという佐々さんの著書を

今年の6月から予約を入れているのですが

なかなか順番が来ず・・。

 

待っている内に まさかの佐々さんの訃報のニュースが・・・。

残念です。ご冥福をお祈り申し上げます。

 

読メをみてみると この本もおススメという声が多かったので

読んでみることに↓

 

東日本大震災時 日本製紙石巻工場も大打撃を受けたとのこと。

ここは 出版物を印刷するための紙を造っている工場で

石巻工場だけで日本で出版される本の紙の

かなりの量を製造しているんだそう。

 

最近は 電子書籍も増えたし 私もたま~に読むけれど

やっぱり紙の本には 敵わないな~と思ってます。

その理由として本書の中で

「紙の本に触れることで 得られる記憶、痕跡が

文章の理解や記憶に影響を与えるのだ」と佐々さんも仰っていて

私の気持ちを代弁して頂いたようで

あ~そうだ!それだ!と納得!

 

紙の色など白という認識しかなかったけど

製紙会社と出版社との信頼関係の上に

書籍によって 紙の質も変えているんだとか。

 

文庫本は「講談社が若干黄色、角川が赤く、新潮社がめっちゃ赤」というように

出版社は文庫の色にそれぞれ誇りを持っているということで

それぞれの「レシピ」があるし

色褪せ防止も施されているとか 知らないことばかり。

文庫本を触る時には 意識してみようと思います。

 

日本製紙の技術の素晴らしさもあって

外国にも輸出しているそうで

アメリカの「TIME」も石巻工場の製品とのこと。

 

本書の最初の方では 日本製紙工場が受けた打撃よりも

震災時の 悲惨な状況が詳細に書かれていて

読んでいるだけでも 辛くなって読む手が止まる時も。

あの地で被災された方々が その後に抱えた無念さ後悔の念は

私など 永遠に理解しきれない気がして

特に胸が苦しくなりました。

 

あの時 遠く離れた場所で観ていたテレビ報道では

やたら 美談ばかりが語られていたけど

現地では 人の心の汚い部分にも触れてしまったと仰る方も。

 

この未曾有の被災地において

果たして 本など役に立つのかという意見もある中

復興を望む被災者の言葉に勇気づけられた人など

様々な 感情があったんだなと。

 

「書店にワンコインを握りしめて

コロコロコミックを買いに来る子供達を忘れるな!」と部下へ鼓舞する方いて

コロコロコミックって 学童で働いている時にあったけど

柔らかい子供の手で捲っても 手が切れないような技術が施されているなど

初めて知りました。

 

そう言えば 今年の大河ドラマでも描かれているけれど

昔は 紙に書かれている文字を読むことが

どれだけ贅沢なことだったことか・・。

 

電子書籍は 嵩張らないという利点もあるけれど

紙の本には 触って記憶に残る思い出も作っているんだな~と

改めて感じました。

 

ちょうど図書館の本が途切れていたので

コミュニティハウスを覗いてみたら

以前なら 順番待ち人数が凄すぎて

読むのを諦めていたこの本を見つけました↓

 

 

タイトルからおじいさんの散歩で観た風景が

描かれていると思い込んでいましたが

主人公、新平89歳と妻英子88歳

そして、初老の三人の息子一家の日常でした。

 

戦後の好景気の波に乗って 

事業が成功 その後没落はしたものの

何とか のんびりとした老後を送れているようで

体も丈夫だし 健脚だしで 

気ままな散歩を楽しんでいる様子に羨ましささえ感じられました。

 

しかし、長男は何年間も引きこもり中だし

次男は同性愛者なのは良いとしても 仕事は何をしているのか?

三男はアイドルオタクで親に金の無心を続けていて

ここ数年問題になっている「8050問題」ならぬ

「9060問題」とでも表現した方がいいのか?という感じで・・。

 

 

更に妻の英子からは 年中浮気を疑われ――

まぁ、新平には若い頃から 数回の前科があるので 仕方ないんだけど・・・。

 

この状況だけでも 課題山積なのに

新平の楽観的な性格のお陰なのか?

のんびりとしているし 時にクスッと笑えてしまいます。

 

 

新平の性格をみていると

「悩んでも一生、悩まなくても一生」というポリシーを持っているかのようで

いや、多分、そこまでの確固たる気持ちなどなさそうかな笑い泣き

無理して楽しみを見つけているようでもなさそうなのに

新しい発見を楽しんでいる様子。

 

もしかしたら この性格は あの戦争を経験しているからこそなのか?

 

直ぐに悩んで落ち込む性格の私は

見習いたいような気もするけれど

なかなか難しそう・・ネガティブ

 

 

父親の吉宗が有名過ぎて

ちょっと陰に隠れた格好だった九代将軍、家重。

 

生まれつき障害があったけど

とても英明な将軍だったと歴史学者の方が口を揃えて仰るのを

歴史番組で観ていましたが

正直 それほどスポットが当たってなかったこともあって

注目したことはなかったけど

村木嵐さんの『まいまいつぶろ』を読んでから

かなり興味を持つことになりました。

 

そして、今回読んだのは 前回のアナザーストーリーという感じでした。

 

 

 

三代将軍を決める時 争いがあったこともあって

長子が継いでいくようにとの遺言を遺した家康。

 

そうは言っても 実際は なかなかそうもいかないこともあったりします。

その為に 家康は 御三家を創ったりもしたわけで・・。

 

吉宗の時代。

順調にいけば 九代を継ぐのは 吉宗の嫡男、家重になる訳ですが

彼には身体と言語に障害があった・・

一方、次男は身体も精神も備わっており

周囲も次男の方が相応しいのではと考えてしまうのも仕方ないこと。

 

 

しかし、運が良かったというべきか

家重には 彼の言葉を理解する大岡忠光という側近がいました。

そうは言っても 幕府は五代綱吉の時代に側用人制で

苦い経験があって その二の舞になる恐れも。

 

時は飢饉の影響もあって 吉宗は改革に苦心している処だし

次代の決定に迫られているしで 悩ましい・・。

 

結局、歴史は 家重が九代になったことを教えている訳ですが

そこには 周囲の声に惑わされずに 家族にも明かさず

家重を忠実に支えた忠光の姿があったんですね。

そして、父である家重を尊敬し 

十代を継いだ家治の聡明な姿にも

何度も心が震えました。

 

タイトル「まいまいつぶろ」とは 蝸牛のことで

排尿障害もあった家重が通った後には 尿の滴が残っていたことから

蝸牛が通った後のようだという「まいまいつぶろ」という揶揄表現に対して

吉宗が「汗や涙と思うたことはないのか」と哀し気にいう場面に

家重が味わっていた苦しさ、もどかしさを認めていたんだなと

胸がいっぱいになりました。