「月に憑かれたピエロ」
【日時】
2023年10月12日(木) 開演 20:00
【会場】
カフェ・モンタージュ (京都)
【演奏】
シュプレヒシュティンメ:高田瑞希
京都市立芸術大学 現代音楽研究会 club MoCo
指揮:森脇涼
フルート / ピッコロ:俵啓乃
クラリネット / バスクラリネット:木津結子
ヴァイオリン / ヴィオラ:穴井智尋
チェロ:木村美香
ピアノ:藤本紗朗
【プログラム】
シェーンベルク:月に憑かれたピエロ op.21 (1912)
カフェ・モンタージュ主催のコンサートを聴きに行った。
作曲家の酒井健治が監修する学生音楽集団「京都市立芸術大学 現代音楽研究会 club MoCo」による、シェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」の演奏会である。
指揮は、1994年山梨県生まれの指揮者、森脇涼。
この曲を生で聴けるのは、かなり貴重な機会だろう。
シェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」。
この曲で私の好きな録音は
●シュティードリー=ヴァーグナー(Vo) ポセッラ(Fl) ブロッホ(Cl) コーリッシュ(Vn) オーバー(Vc) シュトイアーマン(Pf) シェーンベルク指揮 1940年9月24日セッション盤(Apple Music/CD/YouTube)
●ピラルツィク(Vo) カスタニエ(Fl) ドゥプリュ(Cl) モンテーニュ(B-Cl) ヨルダノフ(Vn) コロ(Va) ユショ(Vc) ベルクマン(Pf) ブーレーズ指揮 1961年セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube)
●ビアズリー(Vo) クラフト指揮 コロンビア室内アンサンブル 1962年3月14,15日セッション盤(Apple Music/CD/YouTube)
あたりである。
後期ロマン派の名残を感じさせるシェーンベルク自作自演盤、灰色の美しさを持つブーレーズ旧盤、明快で色彩豊かなクラフト旧盤。
三者三様の強い魅力がある。
そして何と言っても、シュプレヒシュティンメが3人ともしっかり“語って”いるのが良い。
これぞシュプレヒシュティンメ。
これらに比べると、ブーレーズ中盤のイヴォンヌ・ミントンも、ブーレーズ新盤のクリスティーネ・シェーファーも、ちょっと“歌い”すぎている。
今回の森脇涼&京芸現代音楽研究会の演奏は、上記名盤たちほどの完成度はないものの、十分に楽しめる内容だった。
森脇涼の指揮は、以前聴いたハイドンでも感じたように(その記事はこちら)、目立ったパフォーマンスがあるわけではないが、音楽は程よくまとめられ引き締まっていて、だれない。
華々しい奇才、というのとはタイプが異なるけれど、実力のある人なのだと思う。
ややゆったりめの演奏で、第12曲「絞首台の歌」から第14曲「十字架」にかけてのクライマックスはもう少し畳みかける感じが欲しかったし、第18曲「月のしみ」のカノンも上記クラフト盤の勢いと明晰さに比べると物足りないが、それでも全体的に好印象だった。
やっぱり、生演奏は良い(それも眼前)。
特に、バスクラリネットが不気味な存在感を醸し出す第8曲「夜」と、各楽器が咆哮する第11曲「赤いミサ」は、上記名盤たちをも超える生々しい迫力で、感銘を受けた。
シュプレヒシュティンメの高田瑞希は、ピエロ風の衣装やメイクで、役柄になりきっている様子だった。
上記名盤たちほど雄弁ではないにしても、しっかり“語って”くれていて、シュプレヒシュティンメらしさが出ていたように感じた(第7曲「病める月」や終曲「おお懐かしい香り」など“歌”寄りの箇所もあったが、それはそれで悪くない)。
5人の楽器奏者もしっかり弾けており、安心して聴けた(特にピアノ)。
こういう、フランスのアンサンブル・アンテルコンタンポランのような現代音楽団体が日本の若者の間で生まれているのは、喜ばしい。
来たる12月15日、彼らは京都コンサートホールで定期演奏会を開催し、シェーンベルクやヴェーベルン、ヒンデミット、ラッヘンマンを演奏予定とのことで、興味のある方はぜひ。
→ こちらのサイト
(画像はこちらのページよりお借りしました)
↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。