2023年ブゾーニ国際ピアノコンクール ソロファイナル 第1日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

イタリアのボルツァーノで開催されている、2023年ブゾーニ国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。

8月26日は、ソロファイナルの第1日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、2023年ブゾーニ国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

2021年ブゾーニ国際ピアノコンクールが終わって

2022/2023年ブゾーニ国際ピアノコンクール 予選通過者一覧

セミファイナル 第1日

セミファイナル 第2日

セミファイナル 第3日

 

 

 

 

 

以下、使用されたピアノはいずれもスタインウェイ/Passadoriである。

 

 

 

 

 

17. Song Hyeon KIM (birth: 2002, Incheon)

 

T. Hosokawa: Etude I – 2 Lines for piano (ed. 2016)

L.v. Beethoven: Sonate n. 31, op. 110

J.S. Bach / F. Busoni: Choralvorspiel Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ, BWV 639 – BV B 27 n. 5

B. Bartók / G. Sandör / S.H. Kim: Concerto per orchestra, Sz. 116

 

彼の持ち味がよく活かされた選曲。

特に、バルトークのオケコンのピアノ編曲版は、ロマン派ロマン派した演奏でなく淡白な様式をもつ彼に合った近代曲であり、ピアニスティックな効果よりも複雑に入り組んだ交響的作品をすっきりとまとめ上げる彼の確かな技量が遺憾なく発揮されている。

 

 

20. Philipp LYNOV (birth: 1999, Moscow)

 

J.S. Bach / F. Busoni: Choralvorspiel Nun komm, der Heiden Heiland, BWV 659 – BV B 27 n. 3

L.v. Beethoven: Sonate n. 28, op. 101

T. Adès: Mazurkas for piano, op. 27

S. Barber: Piano Sonata, op. 26

 

こちらも持ち味を活かした選曲。

ロマン的な要素をもつが決して甘くはなく、どちらかというと辛口の風味であり、力強く質実剛健な演奏をする彼には、バッハやベートーヴェン、バーバーがよく合っている。

技巧面でも、これらの曲に十分見合っている。

 

 

22. Anthony RATINOV (birth: 1997, South Bend)

 

E. Benzecry: Toccata Newén

J. Haydn: Sonate in h-Moll, Hob. XVI: 32

J.S. Bach / F. Busoni: Choralvorspiel Nun freut euch, lieben Christen, BWV 734 – BV B 27 n. 4

J.S. Bach / F. Busoni: Choralvorspiel Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ, BWV 639 – BV B 27 n. 5

S. Prokof’ev: Sonata n. 8, op. 84

 

古典作品に合った軽いタッチを持ち、ハイドンなど文句ない出来。

「今ぞ喜べ」も、完璧なタッチコントロールとは言わないが、薄めのペダリングでこれだけ粒が揃えられたら大したもの。

プロコフィエフも、華々しさには欠けるが堅実によくまとめている(後期ロマン派というより新古典派としての扱いか)。

 

 

23. Hanna SCHWALBE (birth: 2001, Hamburg)

 

T. Adès: Mazurkas for piano, op. 27

J.S. Bach / F. Busoni: Choralvorspiel Nun komm, der Heiden Heiland, BWV 659 – BV B 27 n. 3

L.v. Beethoven: Sonate n. 2, op. 2 n. 2

J. Brahms: Drei Intermezzi, op. 117

 

かっちりした音楽づくりが特徴だが、柔軟性はあまりない。

ベートーヴェン、第1楽章コデッタの急速な三連符でテンポが落ちるなど、技術的安全性のために疾走感を損なう箇所がある。

ブラームスも、小品で勝負するならもう少し詩情が欲しいか。

 

 

26. Mikhail TROSHKIN (birth: 2003, Moscow)

 

J.S. Bach / F. Busoni: Chaconne, BWV 1004

W.A. Mozart: Sonate n. 18, K 576

T. Adès: Mazurkas for piano, op. 27

S. Rachmaninov: Sonata n. 2, op. 36 (Ed. 1931)

 

彼にしては大人しく、もう少し攻めたほうが良かった気がする。

ラフマニノフ、終楽章コーダなど部分的にはキレがあるのだが、全体的にはテンポがやや遅めで、こういう思わせぶりなやり方よりも直情的に攻めるほうがは彼には合っていそう。

 

 

27. Zitong WANG (birth: 1999, Honhot)

 

J.S. Bach / F. Busoni: Choralvorspiel Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ, BWV 639 – BV B 27 n. 5

L. Janáček: In the Mists

A. Ho: Aeon

W.A. Mozart: Sonate n. 4, KV 282

S. Rachmaninov: Sonata n. 2, op. 36 (Ed. 1931)

 

ヤナーチェクにモーツァルト、大変に幻想的で美しく、それぞれの曲のベストの演奏と言ってもいいかも。

ラフマニノフは、彼女向きの曲ではないかもしれないが、パワーはないものの彼女のスクリャービン風の演奏もそれはそれで悪くないし、技巧面の確かさもアピールできたように思う。

 

 

 

 

 

そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私が室内楽ファイナルに進んでほしいと思うのは

 

17. Song Hyeon KIM (birth: 2002, Incheon)

20. Philipp LYNOV (birth: 1999, Moscow)

22. Anthony RATINOV (birth: 1997, South Bend)

27. Zitong WANG (birth: 1999, Honhot)

 

あたりである。

Zitong WANG、期待通り名演を聴かせてくれたが、他の人もうまいので安泰とは言えない。

 

 

次回(8月27日)はソロファイナルの第2日。

ソロファイナルの最終日である。

 

 


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