気軽にクラシック35
石井楓子(ピアノ) 北欧の風&ブラームス
【日時】
2023年7月31日(月) 開演 14:00 (開場 13:30)
【会場】
滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 小ホール
【演奏】
ピアノ:石井楓子
【プログラム】
ラヴェル:古風なメヌエット
ブラームス:3つの間奏曲 op.117 より 第2番 変ロ短調
ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ op.24
グリーグ:抒情小曲集 より
民謡 op.12-5
アルバムリーフ op.12-7
スプリングダンス op.47-6
過ぎ去った日々 op.57-1
春に寄す op.43-6
トロルハウゲンの婚礼の日 op.65-6
※アンコール
グリーグ:抒情小曲集 より 家路 op.62-6
好きなピアニスト、石井楓子のコンサートを聴きに行った。
ラヴェル、ブラームス、グリーグから数曲ずつ選んだリサイタルである。
彼女の実演を聴くのは、コロナ禍前の2020年2月(その記事はこちら)以来、3年半ぶり。
小品が集められたプログラムだが、超有名曲や超絶技巧曲ではなく、渋めの選曲なのが彼女らしい。
冒頭のラヴェルからしてすでに、その演奏は大ピアニストの風格をみせる。
ブラームスの間奏曲op.117-2は、ラルス・フォークトのように遅いテンポでいかにも“深く”みせるのではなく(それはそれで好きだが)、あくまで作曲者指定の「アンダンテ・ノン・トロッポ」のテンポを採るが、それでもなおこの曲の味をしっかりと出せてしまう。
グリーグの「抒情小曲集」抜粋も、さすが2022年グリーグ国際ピアノコンクールの覇者だけあって、堂に入ったもの。
そして、今回唯一の大曲である、ブラームスのヘンデル変奏曲。
この曲で私の好きな録音は
●ペトリ(Pf) 1938年3月3日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube)
●ナット(Pf) 1955年セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube)
●エイマール(Pf) 1957年セッション盤(Apple Music/YouTube)
●ファレル(Pf) 1957年頃セッション盤(Apple Music/CD/YouTube)
●S=レオナルディ(Pf) 2004年7月12,13日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube)
●フルネル(Pf) 2021年5月15日エリザベートコンクールライヴ盤(NML/Apple Music/CD/YouTube/動画、その記事はこちら)
あたりである。
この曲は器用さよりも何よりも、とにかく端正な美音と歌が欲しい。
それがあるのがこの6つの盤で、かっちりしたドイツ系のペトリ/レオナルディと、優美なフランス系のナット/エイマール/フルネルとに大別される(なおファレルはニュージーランド人だが演奏は優美であり後者寄りか)。
そして、今回の石井楓子は、これらの名盤に匹敵する味わいを持ち、さらに完成度をも兼ね備えた、最高の名演だった。
演奏の系統としてはドイツ系で、冒頭の主題も優美というよりは決然と弾くのだが、うるさくなるようなことは決してなく、全てが美しい音と端正な歌に満ちている。
スタインウェイのピアノは、彼女が弾くと何ともまろやかなドイツの音が鳴って、まるでベヒシュタインかブリュートナーのよう。
また、例えば第14変奏など、これまで軽快なスタッカートのイメージだったのだが、彼女が弾くとリズムは重くならないまま、軽すぎずずっしりと充実した、引き締まったノンレガートになっていて、これぞブラームス、と言いたくなる。
当代一流のブラームス弾きである彼女の面目躍如。
この曲がこれ以上に“ブラームスらしく”美しく弾かれたことはなかったのではないか、とさえ感じた。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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