(アンスネスの新譜 モーツァルト ピアノ協奏曲第20~22番) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

好きなピアニスト、レイフ・オヴェ・アンスネスの新譜が発売された(Apple MusicCD)。

曲目は、モーツァルトのピアノ協奏曲第20、21、22番、ピアノ四重奏曲第1番、幻想曲ハ短調、フリーメイソン葬送音楽である。

詳細は以下の通り。

 

 

 

 

 

 

 

名ピアニスト、コロナ禍を超えて、モーツァルトの深奥へ。

世界的な評価を受け、全世界で9万枚のセールスを記録したレイフ・オヴェ・アンスネスとマーラー・チェンバー・オーケストラによる、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏と録音を核にした「ベートーヴェン・ジャーニー」の待望の続編となる「モーツァルト・モメンタム」。モーツァルトのウィーン時代の頂点である1785年と86年の2年間に書かれたピアノ協奏曲第20番~第24番の5曲を軸にした傑作群をCD4枚分に収録し、2枚組セットで1785年編と1786年編の2回に分けてリリースします(1786年編は2021年秋発売予定)。
先に発売される1785年編には文字通りウィーン時代の傑作が勢ぞろい。個性豊かなピアノ協奏曲第20、21、22番の3曲に加え、ト短調のピアノ四重奏曲第1番、ハ短調の幻想曲と『フリーメイソンのための葬送音楽』という陰影の濃い3曲を収録。特に協奏曲では独奏とオーケストラとの対話や意思疎通の在り方が大きく発展させられた形で構想され、モーツァルトの多彩な音楽語法の創出の過程が手に取るようにわかります。アンスネスにとってはノルウェー室内管弦楽団と録音があった協奏曲第20番以外は初録音となります。
このプロジェクトも2020年の世界的な新型コロナ・ウィルスの影響を受け、予定された演奏会のキャンセルを余儀なくされましたが、幸いなことにピアノ協奏曲3曲はコロナ下にもかかわらずベルリンのフィルハーモニーでセッション録音されました。アンスネス自身、インタビューでそのことを「小さな奇跡と言えるものでしょう。マーラー・チェンバー・オーケストラのような優秀な音楽家との共同作業からは大きな示唆を受けました」と語っています。

「1780年代を通じてモーツァルトは作曲家として信じられないくらいのスピードで成熟していきました。どうしてそうなったんでしょうか。何が起こったんでしょうか。これは当時のモーツァルトの創造性が極点に達していたことを示しています。作曲家・ピアニスト・即興演奏の名手としての能力を誇らしげに示すことのできるような作品を次から次へと衝動のように生み出していったのです。」~レイフ・オヴェ・アンスネス(輸入元情報)

【収録情報】
Disc1
モーツァルト:
1. ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466
2. ピアノ協奏曲第21番ハ長調 K.467

Disc2
3. 幻想曲 ハ短調 K.475(ピアノ・ソロ)
4. ピアノ四重奏曲第1番ト短調 K.478
5. フリーメイソンのための葬送音楽 ハ短調 K.477 (K.479a)(オーケストラ)
6. ピアノ協奏曲第22番変ホ長調 K.482


レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ、指揮)
マーラー・チェンバー・オーケストラ(1,2,5,6)
マシュー・トラスコット(ヴァイオリン:4)
ジョエル・ハンター(ヴィオラ:4)
フランク=ミヒャエル・グートマン(チェロ:4)

録音時期:2020年11月8-10日(1,2,5,6) 2020年2月21-25日(3,4)
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー(1,2,5,6) ブレーメン、ゼンデザール(3,4)
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)

レコーディング・プロデューサー:ジョン・フレイザー
レコーディング・エンジニア:セバスティアン・ナットケンパー(1,2,5,6)、アーン・アクセルバーグ(3,4)
アシスタント・エンジニア:ヤーコブ・ベッチャー、クレメンス・ファブレ(1,2,5,6)
エディティング:ユリア・トーマス

 

 

 

 

 

以上、HMVのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。

 

 

アンスネスの弾く、モーツァルトのピアノ協奏曲。

だいぶ前にEMIに録音した第9番「ジュノム」が大変素晴らしかったのだが、EMIのモーツァルトシリーズは2枚で終わってしまっていた。

何年も続きを待ち望んでいたところ、今回SONYからモーツァルトシリーズが始まることとなった。

嬉しい限りである。

 

 

モーツァルトのピアノ協奏曲第20番で私の好きな録音は

 

●ピリス(Pf) A.ジョルダン指揮 ローザンヌ室内管 1977年6月セッション盤(NMLApple MusicCD

●シフ(Pf) ヴェーグ指揮 ザルツブルク・モーツァルテウム・カメラータ・アカデミカ 1989年12月セッション盤(NMLApple MusicCD

●レイチェル・チャン(Pf) マギーガン指揮 フォートワース響 2017年6月5日クライバーンコンクールライヴ(動画

●藤田真央(Pf) G.ペトロシアン指揮 マリインスキー劇場管 2020年2月5日サンクトペテルブルクライヴ(動画) ※動画の1:09:00~

 

あたりである。

上の解説文の通り、アンスネスにも旧録音があるが、それは音質がいまいちパッとしなかった。

今回の新録音は、アプローチとしては旧録音と大きく変わらないが、音質が鮮明というアドバンテージがあり、上の各名盤に並ぶ出来となっているように思う。

 

 

モーツァルトのピアノ協奏曲第21番で私の好きな録音は

 

●古海行子(Pf) K.ブーマン指揮 カペラ・ビドゴスティエンシス 2019年11月19日パデレフスキコンクールライヴ(動画) ※動画の4:35~

 

あたりである。

今回のアンスネス盤は、これに匹敵するもの。

以前の記事にも書いた通り(その記事はこちら)、アンスネスのひんやりと清涼で混じり気のない美音、歌いすぎずさっぱりとした禁欲的なピアニズムは、古海行子のそれによく似ているように思う。

爽やかな疾走感がこの曲に大変よく合っており、私にとって理想的な演奏に近い。

 

 

モーツァルトのピアノ協奏曲第22番では、私はE.フィッシャー盤(ウィーン・フィル)、アシュケナージ盤(フィルハーモニア管)、ペライア盤(イギリス室内管)、シフ盤(ヴェーグ指揮カメラータ・ザルツブルク)、ベズイデンホウト盤(フライブルク・バロック・オーケストラ)、リシャール=アムラン盤(J.コーエン指揮レ・ヴィオロン・デュ・ロワ)あたりが比較的好きなのだが、これぞといった録音はまだ見つけていなかった。

今回のアンスネス盤は、これらを凌ぐ決定的なものだと思う。

タッチの安定感と、歌と、様式感との、絶妙なバランス。

これほど高い次元に達した演奏を他に知らない。

この曲の個人的に好きなポイント、第1楽章再現部直前で2つ目の第2主題を基にしたメロディがピアノソロによって自由に歌い紡がれる部分、この箇所のそこはかとない哀愁の表現も見事。

 

 

きわめて贅沢なことを言うならば、アンスネスは“モーツァルト弾き”というよりは“ベートーヴェン弾き”寄りなところがあり、もう少しタッチが軽ければと思う瞬間もないわけではない。

それでも、これら3つの世紀の傑作、特に曲が好きすぎて満足のいく演奏になかなか出会えなかった第21、22番において、これほどの演奏をしてくれたなら、もう文句はない。

第23、24番も楽しみである。

 

 

 

 

 

MOZART MOMENTUM 1785/1786 - YouTube

 

 

 

 

 

なお、アンスネスのこれまでのCDについての記事はこちら。

 

アンスネスの新譜 ショパン バラード全集

 

 


音楽(クラシック) ブログランキングへ

↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。