(桑原志織の演奏動画 メンデルスゾーン ピアノ三重奏曲第1番) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想でなく、別の話題を。

好きなピアニスト、桑原志織の新しい演奏動画がアップされた。

動画はこちら。

 

 

 

 

 

2020年12月19日(土) イイノホール (東京)

桑原志織(ピアノ)、辻彩奈(ヴァイオリン)、上野通明(チェロ)

メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 作品49

 第1楽章 (03:05-)

 第2楽章 (13:12-)

 第3楽章 (20:20-)

 第4楽章 (24:08-)

 

 

 

 

 

下記リブログ元の記事に書いていた、「リクルートスカラシップコンサート」という若手演奏家たちによるコンサートの録画映像である。

 

 

メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番の録音では、私は

 

●J.フィッシャー(Vn) ミュラー=ショット(Vc) ギラード(Pf) 2006年2月14-16日セッション盤(NMLApple MusicCD

 

が別格で好きなのだが、その他にも良い演奏はいくつかある。

今回の桑原志織らによる演奏も大変素晴らしく、先日紹介した江尻南美らによる演奏(その記事はこちら)、および松本和将らによる演奏(https://youtu.be/bChrPBoT2v8)と並んで、日本人ピアニストによる三大演奏とでも名付けたい。

 

 

桑原志織の演奏は、江尻南美や松本和将と同様にきわめて力強い。

ただ、江尻南美のような、リヒテル風ともいうべき深々とした音や大きなロマンとは違った、もっと抑制的で辛口のテイスト。

それでは松本和将のような、武骨さの中にドイツの風味を包み込んだバックハウス風のスタイルかというと、それとも違う。

もう少しヴィルトゥオーゾ的、それも派手な演奏効果を求めるというよりは、もっと別の何かを求めて自己を律しているかのような、控えめで思索的な演奏。

 

 

もしかしたら桑原志織は、彼女が現在留学中のベルリンにおいてかつて活躍し、また彼女が見事第2位を受賞したコンクール(その記事はこちらなど)がその名を冠する巨匠ピアニスト、フェルッチョ・ブゾーニにたとえるのが最も相応しいかもしれない。

ブゾーニ自身の録音は晩年のものが少数残されるのみであり、あまり検証できないのだが、それでも桑原志織の弾く低音部の、きわめて豪快でありながらもあくまで緻密なコントロールぶりを聴いていると、全盛期のブゾーニはこんな演奏をしたかもしれない、という気がしてくる。

 

 

堂々とした、また技巧的にも大変優れた完全無欠の演奏をする桑原志織に対し、他の2人も負けじとがんばっている。

ヴァイオリンの辻彩奈は、細部の音程やフレーズなどの正確さを突き詰めるタイプの人ではないけれど、協奏曲に比べ室内楽ではそういったムラがあまり目立たないし、また彼女の音は「立って」いるというか、独自の存在感がある。

チェロの上野通明はその逆に、音量的にも音色的にも地味目だけれど、そのぶん音が丁寧でムラがない。

 

 

大好きなこの曲の名演がまた一つ増えたのは嬉しい限り。

 

 

 

 


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