(ヴィニツカヤの新譜 ショパン バラード&即興曲全集) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

好きなピアニスト、アンナ・ヴィニツカヤの新譜が先日発売された。

曲目は、ショパンのバラードと即興曲全集である(NMLApple MusicCD)。

詳細は以下の通り。

 

 

 

 

 

 

 

ヴィニツカヤ、待望のショパン!

ロシア出身で2007年のエリザベート王妃国際音楽コンクールのほか数々のコンクールを制し、2009年のデビュー盤以来、リリースするアルバムも常に話題となってきたヴィニツカヤ。これまで祖国ロシアの作品を中心に、ラヴェルなどでもダイナミックさと繊細さを両立させた素晴らしいアプローチを聴かせてきた彼女が、久しぶりにリリースするソロ・アルバムは待望のショパンです。
 即興曲第1番の軽やかさの中に含みを待たせた独特の表情など実に見事。細やかで優しいフレーズを大きなクライマックスへ運んでゆく思い切った音作りや、一音一音を美しく響かせながら決して甘さに浸らない情感コントロールなど、期待通りの素晴らしいショパン像を作り上げています。(輸入元情報)

【収録情報】
ショパン:
1. バラード 第1番ト短調 Op.23
2. バラード 第2番ヘ長調 Op.38
3. バラード 第3番変イ長調 Op.47
4. バラード 第4番ヘ短調 Op.52
5. 即興曲 第1番変イ長調 Op.29
6. 即興曲 第2番嬰ヘ長調 Op.36
7. 即興曲 第3番変ト長調 Op.51
8. 幻想即興曲(即興曲 第4番)嬰ハ短調 Op.66


 アンナ・ヴィニツカヤ(ピアノ)

 録音時期:2020年5月、6月
 録音場所:ハンブルク、フリードリヒ・エーベルト・ハレ
 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)

 

 

 

 

 

以上、HMVのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。

 

 

プロコフィエフやショスタコーヴィチを弾かせては右に出る者のない彼女は、2007年エリザベートコンクールでもプロコフィエフの協奏曲第2番を弾いて優勝した。

そんな彼女が弾くショパンは、甘さ控えめ。

ショパンにしてはフォルテがガツンと強すぎる気がしないでもないが、これぞ「ポーランドのショパン」とも「フランスのショパン」とも違う「ロシアのショパン」なのだ、と言われればそうなのかもしれない。

 

 

バラード4曲の中では、激しい曲調の第1番や第4番が彼女に合うかと思いきや、確かにパワフルなのだが細かなテンポの揺れ・タメが多く、大きな流れでの一気呵成の迫力にはやや欠ける。

また、メランコリックな主要主題の弾き方が、やはりテンポの揺れが多いのだが、何となくサマになっていない。

本来直線的な音楽づくりを得意とする彼女は、こういう甘いメロディが少し苦手そう(辛党の聴き手にはちょうどいいかもしれないが)。

 

 

それよりも、素朴な主要主題と激烈な副主題とをこれでもかと強烈に対比させた第2番のほうが、私にはしっくりくる。

テンポも無理に揺らすことなく、自然体に聴こえる。

この曲では、私はクレア・フアンチ2010年ショパンコンクールライヴやチョ・ソンジン2015年ショパンコンクールライヴあたりの均整美が好きだったのだが、均整より対比に重きをおいたヴィニツカヤのほうが、よりこの曲らしいと言えるかもしれない。

 

 

即興曲のほうは、もちろん甘口になるわけではないのだが、総じてバラードよりもやや印象が良かった。

ロマン的情感の表現からソナタ的構成の表出まで、幅広い音楽性を要するバラードに対して、より気楽なサロン風の小品である即興曲では、少し肩の力が抜けている。

パリの洒脱はないが、彼女らしい直線的なアプローチが曲の良さを自然に引き出しているように思う。

あるいは、単にバラードと即興曲に対する私のこだわりの差か。

 

 

 

 

 

(8) Ballade No. 1 in G Minor, Op. 23 - YouTube

 

※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。

https://www.youtube.com/watch?v=TC4mTThgF2c&list=OLAK5uy_ki9Iky3UAphpzDaCCITgewjntahOMo2qI

 

 

 

 

 

なお、ヴィニツカヤのこれまでのCDについての記事はこちら。

 

ヴィニツカヤの新譜 ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番

※この後バッハのピアノ協奏曲集の新譜を出しているが記事は書いていない

 

 


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