エンヴェロープ弦楽四重奏団 第9回公演
※ライブストリーミング配信
【日時】
2020年11月5日(木) 開演 20:00
※配信期間:2021年1月25日(月)20:00 ~ 27日(水)24:00
【会場】
カフェ・モンタージュ (京都)
【演奏】
ヴァイオリン:室屋光一郎 (1st for Elgar)
ヴァイオリン:上里はな子 (1st for Beethoven)
ヴィオラ:馬渕昌子
チェロ:丸山泰雄
【プログラム】
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第6番 変ロ長調 op.18-6
エルガー:弦楽四重奏曲 op.83
下記リブログ元の記事に書いた前回公演に引き続き、カフェ・モンタージュのオンラインコンサート配信を聴いた。
上里はな子らによる弦楽四重奏曲の夕べである。
前半のプログラムは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第6番。
この曲で私の好きな録音は
●クリーヴランド四重奏団 1991年7月セッション盤(Apple Music/CD)
●ミロ四重奏団 2004年10月7-22日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●アイブラー四重奏団 2016年10月10-13日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
あたりである。
いずれも、ベートーヴェン初期作品らしい軽快な演奏(特にアイブラー四重奏団盤は史上最速ではなかろうか)。
今回の上里はな子らの演奏は、これらとは打って変わって重厚な力強いもの。
第1楽章に頻出する「タカタカタッ」の音型など、上記の3盤だと小さな軽い車輪をくるくる回す感じなのに対し、上里はな子だと重い大車輪をぐわっ、ぐわっと回すかのような馬力がある。
これぞベートーヴェン。
初期作品なのだから軽快に、という先入観を一気に払拭し、B=ミケランジェリの弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第3番や第11番のように(これらの曲も同じく「タカタカタッ」の音型が頻出する)、「やはりベートーヴェンは初期でもこうでなくては!」と聴き手を唸らせる“重み”がある。
第3楽章なども実に力強く、活気にあふれている。
力強く重厚な演奏が聴きたければ、往年のメロス四重奏団やアルバン・ベルク四重奏団を聴けばよいと言われるかもしれないが、上里はな子には往年の団体にはない技術的完成度の高さがある。
なお、他のメンバーはみな前回と違う人だが、上里はな子の音楽性に合うがっしりした音楽を奏でるという点で共通しているのが良い。
この曲を聴いているうち、私はあのハーゲン四重奏団がこの曲同様まだ録音していない名曲「ラズモフスキー3番」を、上里はな子率いるカルテットの演奏でぜひ聴いてみたい、との思いを新たにした。
後半のプログラムは、エルガーの弦楽四重奏曲。
この曲で私の好きな録音は
●ブリテン四重奏団 1991年セッション盤(NML/Apple Music)
●パヴァオ四重奏団 2007年頃セッション盤(Apple Music)
あたりである。
いずれも、ロマン的な中にも落ち着きのある演奏。
イギリス風の節度や穏やかさを保っている。
今回の上里はな子らの演奏は、これらよりもずっと重厚かつ濃厚。
その印象は、エルガーで第1ヴァイオリンを担当した室屋光一郎によるところも大きいだろう。
同じ重厚でも、端正でドイツ風な上里はな子に対し、室屋光一郎はヴィブラートやグリッサンドなど表現が濃厚でいわば「ロシア風」。
エルガーとは思えないどーんとした演奏だが、これはこれで聴きごたえがあった。
元来私はヴァイオリン演奏の濃い味付けがやや苦手だが、室屋光一郎の場合は上里はな子にも劣らぬ(というと言い過ぎかもしれないが)技術的安定があり、盛り上がる箇所でも荒れが少なく、なかなかの出来栄え。
ところで、前々回の上里はな子らによる感動的なブラームスの公演(その記事はこちら)で、コロナ禍で人との接点が減る中いかにして豪華なカルテットメンバーが決まっていったのか、興味深い記事が読める。
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