(ケイト・リウの演奏動画 ヘンデル 組曲ホ長調 ショパン マズルカ作品59 シューマン 幻想曲) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想でなく、別の話題を。

好きなピアニスト、ケイト・リウ(Kate Liu)の演奏動画がYouTubeにアップされた。

曲目は、ヘンデルの組曲 ホ長調 HWV430 「調子のよい鍛冶屋」、ショパンの「3つのマズルカ」 op.59、シューマンのアラベスク、シューマンの幻想曲である。

動画はこちら。

 

 

 

 

 

 

Before the Grand Competition - Master Recitals

18 October 2020

Royal Castle Concert Hall, Warsaw

Kate Liu piano

 

Georg Friedrich Händel: Suite in E major, HWV 430

     I. Preludium (8:29-)

     II. Allemande (11:08-)

     III. Courante (15:52-)

     IV. Air and Variations ("The Harmonious Blacksmith") (17:23-)

Fryderyk Chopin: Mazurka in A minor Op. 59 No. 1 (21:49-)

Fryderyk Chopin: Mazurka in A flat major Op. 59 No. 2 (28:00-)

Fryderyk Chopin: Mazurka in F sharp minor Op. 59 No. 3 (31:07-)

Robert Schumann: Arabesque in C major, Op. 18 (40:50-)

Robert Schumann: Fantasie in C major, Op. 17

     1st mov. (50:29-)

     2nd mov. (1:08:24-)

     3rd mov. (1:17:03-)

 

Encore

Franz Schubert: Hungarian Melody in B minor D.817 (1:34:50-)

 

 

 

 

 

先日のチョ・ソンジンと同じく(その記事はこちら)、ポーランドのワルシャワで行われた、ショパンコンクール開催へ向けて過去の受賞ピアニストたちが行うリサイタルシリーズ「Before the Great Competition」の一環である。

 

 

18世紀初頭に書かれたヘンデルの組曲ホ長調HWV430は、ケイト・リウが弾くとまるでその百年後、19世紀初頭にショパンか誰かの手によって書かれた初期ロマン派の曲のように響く。

これほど夢幻的でロマンティックなヘンデルは聴いたことがない。

プレリュードにアルマンドにクーラント、いずれもバロックの様式からかけ離れた演奏だが、もともとこういう曲だったのではと錯覚してしまうような説得力がある。

有名な終楽章「調子のよい鍛冶屋」も美しいが、この楽章だけは変奏が進むにつれテンポが異様に速くなり、ところどころ指が転んでしまっているのが惜しい。

ここまで速くしなくても良かったように思うが、各変奏のテンポを一定にせず最後までどんどん加速していく、というロマン派的な発想がまた彼女らしいとも言えるかもしれない。

 

 

その後のショパンとシューマンでは、一転して極端に遅いテンポを採り、瞑想の限りを尽くす。

19世紀初頭に書かれたこれらの曲は、ケイト・リウが弾くとまるでその百年後、20世紀初頭にスクリャービンか誰かの手によって書かれた末期ロマン派の曲のように響く。

ショパンのマズルカop.59で私の好きな録音である、

 

●アルゲリッチ(Pf) 1967年10月31日放送録音盤(NMLApple MusicCD

●山本貴志(Pf) 2005年ショパンコンクールライヴ盤(CD

 

あたりや(また鯛中卓也の名演も忘れがたい→その記事はこちらこちら)、シューマンの幻想曲で私の好きな録音である、

 

●リヒテル(Pf) 1961年セッション盤(NMLApple MusicCD

●アンデルジェフスキ(Pf) 2013年4-5月セッション盤(NMLApple MusicCD

●プーン(Pf) 2018年私家音源(Patreon登録者限定公開)

●ソン・ヨルム(Pf) 2020年頃セッション盤(Apple MusicCD

 

あたりと比べると、違う曲であるかのよう。

私としてはもう少し自然なテンポが好みだが、それでも彼女の表現力がこの遅いテンポに耐えうる見事なものであるのも確か。

自身のワールドを作れるのは、すでに成熟した強い個性を持っている証拠だろう。

 

 

なお、私は10年前にこの旧王宮のホールで、アンスネスのピアノリサイタルを聴いた。

このホールは雰囲気が大変良いものの、音自体は残響過多のいわゆる風呂場サウンドであった。

今回、こうしてオンマイクで録音されたことで、直接音と残響とのバランスの良い、生音以上に鑑賞にふさわしい音質となっているように思う。

 

 


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