今回は演奏会の感想でなく、別の話題を。
ツイッターでフォローさせていただいている方の情報で知ったのだが、好きなピアニスト、平間今日志郎の演奏動画が期間限定でアップされた。
曲目は、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「悲愴」および「熱情」である。
動画はこちら。
https://chanelnexushall.jp/featured/digital_concert/
平間今日志郎は、ベートーヴェンを得意な作曲家の一人としている。
2019年仙台コンクール(その記事はこちらなど)で第5位を受賞した際に弾いた協奏曲第3番も素晴らしかった。
今回の曲目で私の好きな録音は、「悲愴」ソナタは
●E.フィッシャー(Pf) 1938年11月7,8日セッション盤(NML/CD)
●ゴルラッチ(Pf) 2013年7月4-6日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
「熱情」ソナタは
●リヒテル(Pf) 1960年11月29,30日セッション盤(Apple Music/CD)
●チョ・ソンジン(Pf) 2009年11月10日浜コンライヴ盤(CD) ※第1楽章のみ
あたりだが、平間今日志郎はこれらとは異なるタイプの演奏。
「悲愴」では疾走感を、「熱情」では悲劇性を表現したドラマティックな演奏が本来私は好みなのだが、平間今日志郎はむしろそうした要素を抑え、冷静で明快な表現をする。
その結果、「悲愴」「熱情」といった標題にとらわれない、ソナタとしての書法の充実ぶりが浮き彫りになっている。
それでいて、ベートーヴェンらしい力感にも決して欠けていない。
これは、かなりの名演だと思う。
ベートーヴェンの「運命」交響曲ならフルトヴェングラーよりもクレンペラーのほうが好き、という向きには特にお勧めしたい。
ただ、一つだけ気になるのが、「熱情」ソナタの第1楽章のリズム。
この曲は「タータター」という3つの音のリズムパターンがひたすら繰り返されるのだが、この2つ目の音は16分音符という短い音符である。
つまり、「タータター」というよりは「ターータター」とでも書くべき鋭いリズムになっているのだが、平間今日志郎はこれが「タータター」と8分音符くらいの鈍いリズムになりがち。
冒頭の第1主題は良いのだが、第2主題になるともう鈍くなってしまう。
展開部でも再現部でも同じ音型が何度も出てくるが、それらも同様。
細かいかもしれないが、この曲において非常に重要な音型であり(「運命」交響曲における「ジャジャジャジャーン」と同じくらい重要)、ぜひ押さえてほしいポイントである。
上記の演奏動画は10月22日(木)23:59までの限定公開であるため注意されたい。
なお、この動画はシャネル・ピグマリオン・デイズ2020という企画の一環のようなのだが、この企画の今後の配信スケジュールはこちら。
■配信スケジュール(全5回)■
第2回: 10月23日(金) – 10月29日(木) 前田 妃奈(ヴァイオリン)
第3回: 10月30日(金) – 11月5日(木) 水野 優也(チェロ)
第4回: 11月6日(金) – 11月12日(木) 八木 大輔(ピアノ)
第5回: 11月13日(金)-11月19日(木) 鈴木 玲奈(ソプラノ)
↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。