大阪フィルハーモニー交響楽団 第542回定期 小林研一郎 チャイコフスキー マンフレッド交響曲他 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

大阪フィルハーモニー交響楽団

第542回定期演奏会

 

【日時】

2020年10月16日(金) 開演 19:00 (開場 18:00)

 

【会場】

フェスティバルホール (大阪)

 

【演奏】

指揮:小林研一郎 ※ロバート・トレヴィーノ来日不可のため変更

管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団

(コンサートマスター:崔文洙)

 

【プログラム】

ベートーヴェン:交響曲 第2番 ニ長調 作品36

チャイコフスキー:交響曲「マンフレッド」 作品58

 

 

 

 

 

大フィルの定期演奏会を聴きに行った。

指揮は、コロナ禍のため来日できなくなったロバート・トレヴィーノの代役として、小林研一郎が担当。

今回のプログラムがチャイコフスキーのマンフレッド交響曲であることを考えると、彼ほど適した代役はいなかっただろう。

 

 

前半の曲はベートーヴェンの交響曲第2番。

この曲で私の好きな録音は

 

●フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィル 1948年10月3日ロンドンライヴ盤(NMLApple MusicCD

●トスカニーニ指揮 NBC響 1949年11月7,9日、1951年10月5日ニューヨーク放送ライヴ盤(Apple Music

●カラヤン指揮 ベルリン・フィル 1961年12月30日、1962年1月22日セッション盤(NMLApple MusicCD

●カラヤン指揮 ベルリン・フィル 1975年1月24日、1976年10月21,22日、1977年1月29,31日、3月8日セッション盤(NMLApple MusicCD

●カラヤン指揮 ベルリン・フィル 1984年2月20,21日セッション盤(NMLApple MusicCD

●ラトル指揮 ウィーン・フィル 2002年4月29日~5月17日ウィーンライヴ盤(NMLApple MusicCD

 

あたりである(また、今では冒頭部分しか聴けないがクルレンツィス&ムジカエテルナの名演も忘れがたい→その記事はこちら)。

この曲の2年後に書かれた交響曲第3番「英雄」を予感させるような、快速な中にもずっしりとした量感のある力強い演奏が好み。

 

 

今回の小林研一郎&大フィルは、上記の各名盤よりも少し遅めの、まさに「英雄」交響曲そのもののテンポによる演奏。

編成は14型で、力強く充実したフォルテ(強音)が聴かれた。

これらの特徴は、ベートーヴェンの音楽に全くふさわしい。

もっとも、小林研一郎のやり方は、洗練やスマートさからは遠いところにある。

例えば第1楽章の第2主題での弱音と強音の交代で、弱音のフレーズの終わり頃から早くも勢い余って(?)クレッシェンドしてしまうし、その後のコデッタ(小結尾)では第2ヴァイオリンの「タカタカタッ」の動機の最後の「タッ」のスタッカートに思わず(?)アクセントをつけてしまう。

このように、感情に任せて気合いを入れすぎてしまうような(悪く言うと泥臭い)表現は、私は苦手である(いかに情熱的になろうとも曲のフォルムを損なわないバランス感覚を持った演奏が好き)。

しかしそれでも、彼の「英雄」的なテンポと力強いフォルテは、現代の多くの軽快な演奏からは聴くことのできない、上記の各名盤に通じるようなベートーヴェンらしいパワーを感じさせてくれた。

 

 

休憩をはさんで、後半の曲はチャイコフスキーのマンフレッド交響曲。

この曲で私の好きな録音は

 

●プレトニョフ指揮 ロシア・ナショナル管 1993年11月23日セッション盤(NMLApple MusicCD

 

あたりである。

今回の小林研一郎&大フィルは、やはり熱い演奏だった。

前半のベートーヴェンは曲自体が引き締まっているのに対し、それよりも格段に大編成(今回16型)で、ハープにトライアングル、タムタム、オルガンまであるこの曲は、19世紀末らしい肥大拡散した音楽。

こういう曲は、私は上記プレトニョフ盤のように大きなエネルギーをうまく制御し、洗練された技巧でコーティングしたような演奏で聴きたいのが常だが、小林研一郎はそんなことには頓着せず、曲の大きな熱量をそのまま受け止める。

第1楽章の弦の重々しい強奏にタムタム(いわゆる銅鑼)の轟音、第3楽章のオーボエや弦のたっぷりとした歌。

終楽章半ばのヴィオラで始まるフガート部分など、もはや全ての音にアクセントがつけられ、思いっきり奏されていた。

こってりした料理を立て続けに食べてお腹いっぱいになるような演奏だが、これもまた生演奏の醍醐味の一つだろう。

 

 

なお、オーケストラメンバーも好調であった。

ベートーヴェンでは、フルートの野津臣貴博やオーボエの浅川和宏の肉厚な音が、小林研一郎の解釈によく合っていた。

そして何より、チャイコフスキーの第2楽章スケルツォで披露された、フルートの田中玲奈のあまりにも鮮やかな超絶技巧が忘れがたい。

 

 


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