(2020年ピティナ・ピアノコンペティション特級 松本和将の講評) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想でなく、別の話題を。

好きなピアニスト、松本和将が先日の2020年ピティナ・ピアノコンペティション特級(その記事はこちらなど)で審査員を務めていた。

彼の講評(あるいは感想)が昨日noteにアップされた。

講評はこちら。

 

 

https://note.com/kazmatsuki/n/nad1cf4415b8e

 

 

講評の内容を箇条書きにすると以下のようになる。

 

1. 今年のピティナ特級はレベルが高く、特に森本隼太と谷昴登がずば抜けていた。ただ、2人とも今はまだ国際コンクールで通用せず、“自分だけの世界に入り込み突っ走ってしまう点”を改善する必要がある。

 

2. 最も印象深い演奏は谷昴登のプロコフィエフ「サルカズム」。様々な音源を聴いても分からなかったこの曲の魅力が今回初めて分かった。また、森本隼太のデュポンやラフマニノフ協奏曲ラストも印象的。

 

3. ラフマニノフに比べショパンが不利ということはない。山縣美季がセミファイナルで弾いた「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」は名演で、これがなければファイナルに進んでいなかったかも。

 

4. セミファイナルではコンクールの定番曲でないドイツ物やショパンで直球勝負に出る人が多かったが、これは喜ばしい。コンクール受けを狙って難しい曲を選んでも、うまく弾けなければ自滅してしまう。

 

5. これまでコンクールの審査を避けてきたが、今年はピティナ特級の次に日本音コンも控えており、誠意をもって審査したい。

 

 

 

 

 

以上である。

曖昧なところのない、具体的で分かりやすい講評だと思う。

それに加え、私としては共感するところが多かった。

 

 

1について、私も(特に協奏曲において)この2人の存在感がとりわけ大きいと感じたし、2人ともまだ課題があって今後改善が期待されるという点も同様のことを感じた。

 

 

2について、確かに谷昴登の「サルカズム」は私にも印象的だった(これまでのどの音源よりも上とは言わないにしても)。

第1曲は抑制的なテンポや表現の割に六連符が不明瞭になるなどやや不満が残ったものの、終曲は力強い和音のパワフルな連打がしっかりとコントロールされ圧巻だった。

 

 

3と4については、大いに共感するところである。

3など、まさにこの通りだと思う。

4もそうで、山縣美季のショパンや村上智則のブラームス、岸本隆之介のベートーヴェンなどそれぞれの持ち味が出て大変良かった。

ただ、身の丈を超える難曲を選んで自滅してしまうケースは、2次や3次も含めると決して少なくなかったように私には思われる。

とはいえ若者たちにはそれはそれで良い経験かもしれない。

 

 

5について、コロナ禍のため海外から審査員を招聘できず、国内の大物をということで松本和将に白羽の矢が立ったのだろうか。

いつもは避けていたらしい彼も、事情が事情だけに今回は断らなかったのかもしれない。

おかげで、非常に面白いものを読むことができた。

彼と似たような印象を受けたことが分かり、何となく嬉しい。

 

 


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