東京で開催された、2020年ピティナピアノコンペティションが終わった(公式サイトはこちら)。
これまで、特級のネット配信を聴いて(こちら)、感想を書いてきた。
とりわけ印象深かったピアニストについて、改めて備忘録的に記載しておきたい。
ちなみに、2020年ピティナピアノコンペティション特級についてのこれまでの記事はこちら。
(2020年ピティナ・ピアノコンペティション特級 3次予選通過者発表)
山縣美季 (1次)(2次-1/2/3/4)(3次)(セミファイナル)(ファイナル)
今大会の入選(第4位)。
清廉で抒情的な音楽性を持ち、技巧よりも表現で勝負するピアニスト。
ショパンのノクターンop.37-2とエチュードop.10-2と「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」と協奏曲第2番、フランクの「プレリュード、コラールとフーガ」あたりが印象的。
特に「アンダンテ…」は私の好きなクレア・フアンチ(Claire Huangci)の同曲演奏にも迫る名演であり、私の中での個人的な今大会のMVPを選ぶとしたら彼女ということになるかもしれない。
岸本隆之介 (1次)(2次-1/2)(3次)(セミファイナル)
ベートーヴェンに合うような力強く自然な音を持つ。
ショパンのエチュードop.10-1とノクターンop.62-1、バッハのパルティータ第2番、ベートーヴェンの「告別」ソナタあたりが印象的。
森本隼太 (1次)(2次-1/2/3/4)(3次)(セミファイナル)(ファイナル)
今大会の銀賞(第2位)。
キレのある技巧と豊かな音楽表現を備えたピアニスト。
緻密だが、ときに羽目を外すような勢いも持ち元気が良い。
バッハの平均律第1巻第20番イ短調、ショパンのエチュードop.25-4とノクターンop.9-3、プロコフィエフのソナタ第7番、デュポンの「砂丘の家」第6番、ハイドンのソナタ第24番、ラフマニノフのソナタ第2番と協奏曲第3番あたりが印象的。
尾城杏奈 (1次)(2次-1/2/3)(3次)(セミファイナル)(ファイナル)
今大会の優勝者。
落ち着いた表現を持ち、技巧的にも安定感がある。
ファイナルで最も本番らしく曲を完成させてきたのは彼女であった。
スカルラッティのソナタヘ短調K.466、ショパンのエチュードop.25-6、プロコフィエフのソナタ第8番、ラフマニノフの協奏曲第3番あたりが印象的。
リストに合いそうな、力強く充実した音を持つ。
粗さはあるが、攻めの姿勢があって良い。
バッハの「イタリア風アリアと変奏曲」、ショパンのエチュードop.25-10、プロコフィエフのソナタ第7番あたりが印象的。
三原有紀 (1次)(2次)
独自の音楽的センス、ロマン的な表現力を持つ。
2次のバッハのトッカータハ短調BWV911、ショパンのエチュードop.25-5、スクリャービンのソナタ第10番が印象的だったが、現在2次の動画が観られなくなっており残念。
1次も良い演奏。
三上結衣 (1次)(2次-1/2/3/4/5)(3次)(セミファイナル)
くっきり明瞭なタッチと表現を持つ実力派ピアニスト。
音楽はやや小ぶりだが表現は成熟しており、技巧的にもなかなかのもの。
ソレールのソナタ第21と88番、ファリャの「恐怖の踊り」、ショパンのエチュードop.25-6、リストのスペイン狂詩曲、モーツァルトのソナタ第3番、メシアンの「火の鳥 第1」、ラフマニノフのコレッリ変奏曲、ゴドフスキーの「こうもりの主題による交響的変容」あたりが印象的(選曲が多彩なのも良い)。
村上智則 (1次)(2次-1/2/3)(3次)(セミファイナル)
ブラームスの小品を衒いなく自然に味わい深く弾けるピアニスト。
バッハの「半音階的幻想曲とフーガ」、ベートーヴェンのソナタ第27番、ブラームスの「8つのピアノ曲」op.76あたりが印象的。
谷昂登 (1次)(2次-1/2/3)(3次)(セミファイナル)(ファイナル)
今大会の銅賞(第3位)。
ロシア風の深い打鍵と幅の広いデュナーミク、そしてロマン性を持つ。
粗さもあるがキレもあり、個性が際立っている(協奏曲映えする)。
バッハの平均律第1巻第22番変ロ短調、ショパンのエチュードop.10-8、ストラヴィンスキーのペトルーシュカ、プロコフィエフのサルカズム、ラフマニノフの「楽興の時」と協奏曲第3番あたりが印象的(なおストラヴィンスキーは著作権の問題で動画削除されている)。
嘉屋翔太 (1次)(2次)
華やかな技巧とパワーを持つヴィルトゥオーゾタイプのピアニスト。
2次のヘンデルの組曲HWV434、リストの「ノルマの回想」、ショパンのエチュードop.10-10、スクリャービンのソナタ第4番が印象的だったが、現在2次の動画が観られなくなっており残念。
1次も良い演奏。
以上のようなピアニストが、印象に残った。
他にも良かったピアニストはいるが、きりがないのでここでは省きたい。
今大会は「この人こそ優勝」と最初から強く感じるようなカリスマ的な人はいなかったが、そのぶん個性豊かで自身の流儀をすでに確立している人が多く、多彩な音楽性を楽しむことができた。
なお、コロナ禍で大変な中でのコンテスタントや運営の方々の尽力はありがたい限りである。
↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。