反田恭平 務川慧悟 東京公演 ラフマニノフ 組曲第2番 ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

第2回 「オンデマンド・コンサート Hand in hand」

※無観客公演、ライブストリーミング配信

 

【日時】

2020年6月28日(土) 開演 14:00

 

【会場】

浜離宮朝日ホール (東京)

 

【演奏】

ピアノ:反田恭平、務川慧悟

 

【プログラム】

ラモー:ガヴォットと6つのドゥーブル (務川慧悟)

ラヴェル:スペイン狂詩曲 (Primo 務川慧悟、Secondo 反田恭平)

モーツァルト:2台ピアノのためのソナタ ニ長調 K.448 (Primo 務川慧悟、Secondo 反田恭平)

ラフマニノフ:2台ピアノのための組曲 第2番 Op.17 (Primo 反田恭平、Secondo 務川慧悟)

 

※アンコール

モーツァルト/グリーグ:ピアノ・ソナタ 第15(16)番 ハ長調 K.545 より 第1楽章 (2台ピアノ版)

 

 

 

 

 

下記のリブログ元の記事に書いた、反田恭平と務川慧悟によるライヴ配信コンサートを聴いた。

反田恭平のオンラインコンサートシリーズ「Hand in hand」の第2回である。

 

 

最初の曲は、ラモーの「ガヴォットと6つのドゥーブル」。

務川慧悟のソロ演奏である。

この曲のピアノ版で私の好きな録音は

 

●タロー(Pf) 2001年5月セッション盤(NMLApple MusicCD

●務川慧悟(Pf) 2018年11月9日浜コンライヴ盤(CD)

●タロー(Pf) 2019年1月19-22日、2月19-21日&3月16日セッション盤(NMLApple MusicCD

 

あたりである。

今回の務川慧悟の演奏も相変わらずうまい。

バロックらしさを保つタローに比べ務川慧悟は相当にロマン的で(前回よりもさらにロマン的)、ルバートを多用し心ゆくまで歌わせる。

全体的なテンポ設定も、きわめて遅いところからどんどん加速していくという、変奏曲としては異例の解釈。

しかし、それが様式的違和感につながるかというとそうではなく、もともとこういう曲なのではと思わせるような説得力を持つ。

生粋のフランス人であるタローにも勝るほどの、滴るようなエスプリがある。

反田恭平は、浜コンで務川慧悟が弾くこの曲の演奏をネット配信で聴いて感銘を受け、ファイナル直後に共演を申し込んだのだという。

 

 

次の曲は、ラヴェルのスペイン狂詩曲(2台ピアノ版)。

プリモが務川慧悟、セコンドが反田恭平である。

この曲のピアノ版で私の好きな録音は

 

●ロルティ、メルシエ(Pf) 1990年6月26-29日セッション盤(NMLApple MusicCD

●デュオ・ヴィラルソー(Pf) 2005年頃セッション盤(NMLApple Music

●ジェノヴァ&ディミトロフ・ピアノ・デュオ(Pf) 2006年12月19-21日セッション盤(NMLApple MusicCD

●ググニン、ホロデンコ(Pf) 2010年頃セッション盤(NMLApple MusicCD

●デュオ・ヤーテーコク(Pf) 2013年8月27-30日セッション盤(NMLApple MusicCD

 

あたりである。

今回の務川慧悟&反田恭平の演奏は、これらにも勝る最高の名演だった。

務川慧悟の美しく研ぎ澄まされたラヴェルの世界に、ときおり反田恭平が情熱的に呼応し奥行きを作っていく。

まさに彼らの言の通り、フランスの洗練とバスクの血の熱さの融合を感じる演奏だった。

 

 

次の曲は、モーツァルトの2台ピアノのためのソナタ K.448。

プリモが務川慧悟、セコンドが反田恭平である。

この曲で私の好きな録音は

 

●ロルティ、メルシエ(Pf) 1993年頃セッション盤(NMLApple MusicCD

●シフ、P.ゼルキン(Pf) 1997年11月セッション盤(NMLApple MusicCD

●Y.タール、A.グロートホイゼン(Pf) 2006年頃セッション盤(Apple MusicCD

●G.アンダーソン、E.J.ロウ(Pf) 2013年7月15-19日セッション盤(NMLApple MusicCD

 

あたりである。

また、山本貴志&佐藤卓史の実演も忘れがたい(その記事はこちら)。

今回の務川慧悟&反田恭平の演奏は、これらに並ぶ出来栄え。

この曲は、似たようなパッセージをプリモとセコンドが掛け合う箇所が多いため、二人の個性の違いが分かりやすい。

務川慧悟の細身でシャープな音と、反田恭平の分厚く温かみのある音がよく対比されていた。

また、山本貴志&佐藤卓史のときは、前者のカラフルな色合いと後者の墨絵のような味わい、という違いが面白かったが、今回は務川慧悟が墨絵、反田恭平がカラフル。

カラフルというのは、とどのつまり“ショパン弾き”ということだろう。

反田恭平は、例えば3回繰り返す音階やアルペッジョを、3回目だけ繊細な最弱音で弾くといったことをするが、実にロマン的で美しい(こういうことを良しとするかどうかについては色々な立場があるにせよ)。

 

 

最後の曲は、ラフマニノフの組曲第2番。

プリモが反田恭平、セコンドが務川慧悟である。

この曲はまだこれといった録音に出会っていないが、比較的好きなのはアルゲリッチ&フレイレ盤(NMLApple MusicCD)やルガンスキー&ルデンコ盤(NMLApple MusicCD)あたり。

先週の角野隼斗&亀井聖矢の演奏も良かった(その記事はこちら)。

今回の反田恭平&務川慧悟の演奏は、これらに劣らぬ出来。

特に第1楽章、それから第2楽章のトリオ(中間部)は、これまで聴いたどの演奏よりも良かった。

反田恭平の分厚いラフマニノフの世界に、務川慧悟がはっとするようなソリッドな音で情熱的に呼応し、その勢いに煽られた反田恭平がさらに情熱を重ねていく、といった高め合いが見事だった。

それに比べると、終楽章はやや落ち着いた、音楽を盛り上げるというよりは掛け合いの妙を楽しむような演奏。

これはこれで良いのだが、山本貴志&佐藤卓史の演奏や(その記事はこちら)、角野隼斗&亀井聖矢のクライマックス部分のように、直球で情熱を燃やすような解釈が私としては好みである。

今回の反田恭平&務川慧悟 vs 角野隼斗&亀井聖矢のラフマニノフ組曲第2番対決は、総合的にはどちらも退かぬ互角の勝負か。

 

 

アンコールの、プリモとセコンドを適宜入れ替えながら奏されるモーツァルトも美しかった。

今後も、この2人の共演はぜひ続けてほしいものである。

それから、務川慧悟のほうは、ロン=ティボー入賞ペアである三浦謙司とのデュオも見逃せない。

反田恭平のほうは、MLMオーケストラとの共演が予定されている第3回の「Hand in hand」コンサートも楽しみである。

 

 

 

 


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