(音楽界の存亡と反田恭平の挑戦) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

最近、新型コロナウイルスの影響で、コンサートの無料ライヴ配信が盛んになっている(その記事はこちら)。

私たち音楽ファンにとっては大変ありがたいことだし、ひょっとすると音楽家にとっても良い宣伝になりうるかもしれない。

 

 

しかし、それは現在のコンサート自粛要請が短期間で済んだ場合の話である。

現在の感染拡大スピードを見ると、これがあと1-2か月で終わるとはとても思えず、おそらく年単位の規模になりそう。

そうなると、音楽界にとって大変厳しいこととなる。

もちろん、飲食業者だって宿泊業者だって売上は減って大変だろうけれど、仕事を禁じられてはいないのに対し、音楽家は仕事自体を禁じられ、売上はほぼゼロとなってしまっている。

由々しき事態である。

 

 

自粛要請によって仕事が禁じられている以上、音楽家には支援が必要だが、音楽業界の支援要求に対する世間の目は相当厳しい(その記事はこちら)。

そうした世論を反映してか、首相や都知事や文化庁長官の言からも、行政の支援についての具体的な話はなかなか出てこない(こちらのページ参照)。

国民の健康保全のために、音楽家たちが犠牲になってくれているにもかかわらず、である。

このままでは、音楽家たちは仕事を失い、楽器を売り払って食いつなぎながら音楽以外の転職先を探すしかなくなってしまう。

 

 

これが単なる一時的な危機に過ぎないと考えるのは、あまりに楽観的ではないだろうか。

コロナ騒動が終わった暁に、ようやく生演奏が聴けると思っても、オーケストラも音楽事務所もみな倒産し、プロの演奏家もいなくなっているか、もしくは著しくレベル低下するかして、もう元には戻らないかもしれない。

1920年代のベルリンの歌劇場の中でも最も進歩的で充実した公演で名高かったクロル歌劇場は、あれほど隆盛を誇ったにもかかわらず、世界恐慌をきっかけに閉鎖された後、二度と再開されなかった。

 

 

そんな中、ピアニストの反田恭平が新しい取り組みを始めるという。

有料ライヴ配信である。

2020年4月1日の19時からで、価格は一人1000円。

これがうまくいけば、第2回、第3回とつなげていきたいとのこと。

無料配信では、東響では10万アクセス、大フィルやびわ湖リングでは20万近いアクセスがあったとのことだが、有料だといったいどのくらいの人が視聴するだろうか。

もし一定数の売上が得られれば、新たな音楽ビジネスモデルとして定着するかもしれない。

 

 

反田恭平は、これまでにも若手音楽家を集めてオーケストラを作るなど幅広い活動をしており、若手音楽家のムードメーカー的な存在であるように思われる。

そんな彼の、今回の挑戦。

もしかしたら、これが音楽界の危機の突破口になるかもしれない。

これを機に、あらゆる演奏家やオーケストラが有料配信コンサートを始め、それらが軌道に乗れば、音楽界は存亡の危機から脱しうる。

それに、コロナ騒動終結後も完売公演や遠方の公演をオンラインで視聴できる環境が整うきっかけにもなる。

藤田真央や古海行子のリサイタル、クルレンツィスのシュトゥットガルト公演、カンブルランのハンブルク公演などが家に居ながらにして聴けるとしたら、夢のような話である。

 

 

世間の風当たりは強く、政府もあてにならないとなると、私たち音楽ファンがどうにかするより他にない。

今回、価格設定も無茶なものではないと思う。

コロナ騒動終結後、「コロナ前の演奏家はもっとレベルが高かった」などとしたり顔で批判していれば満足という人は別だが、心から良い音楽を求める人は、今こそ急務である新たな音楽ビジネスモデルの確立に一役買ってみてはいかがだろうか。

これまで私たちにたくさんの恩恵を与えてくれた音楽家たちをこのまま見殺しにするのは、あまりに可哀想である。

 

 

なお、今回の有料ライヴ配信の詳細は以下の通り。

 

 

 

 

開演:19:00~ STREAMING PLUS

出演
ピアノ:指揮:反田恭平
サクソフォン:上野耕平
クラリネット:アレッサンドロ・ベヴェラリ
ヴァイオリン:大江馨(コンサートマスター)、周防亮介、荒井里桜、外村理紗、桐原宗生、城戸かれん、東條太河、北川千紗
ヴィオラ:安達真理、中恵菜、田原綾子
チェロ:伊東裕
コントラバス:大槻健
フルート:清水伶、山本英
ファゴット:皆神陽太 、大内秀介
ホルン:庄司雄大 豊田万紀    
オーボエ:荒川文吉
ハープ:田中渚
曲目・演目
ショパン:ノクターン 第17番 ロ長調 Op.62-1
ピアノ:反田恭平

プーランク:オーボエ、ファゴットとピアノのための三重奏曲
オーボエ:荒川文吉、ファゴット:皆神陽太、ピアノ:反田恭平

デザンクロ:プレリュード、カデンツァとフィナーレ
サクソフォン:上野耕平、ピアノ:反田恭平

バザン:バザンのロマンス~歌劇《パトラン先生》
サクソフォン:上野耕平、ピアノ:反田恭平

モーツァルト:クラリネット協奏曲イ長調 K.622
クラリネット:アレッサンドロ・ベヴェラリ
指揮:反田恭平
Vn1:大江馨(コンサートマスター)、周防亮介、荒井里桜、外村理紗
Vn2:桐原宗生、城戸かれん、東條太河、北川千紗
Va:安達真理、中恵菜、田原綾子
Vc:伊東裕
Cb:大槻健
Fl1:清水伶 Fl2:山本英
Fg1:皆神陽太 Fg2:大内秀介
Hr1:庄司雄大 Hr2:豊田万紀

 

 

また、チケット情報・購入はこちらから。

 

 

“第1回「オンデマンド・コンサートHand in hand」のチケット情報(STREAMING PLUS)”

 

 


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