大阪フィルハーモニー交響楽団
第536回定期演奏会
※無観客公演、ライブストリーミング配信
【日時】 2020年3月19日(木) 開演 19:00
【会場】 フェスティバルホール (大阪)
【演奏】
指揮:井上道義
ヴァイオリン:アイレン・プリッチン *
管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団
(コンサートマスター:山口裕之)
【プログラム】
ハイドン:交響曲 第2番 ハ長調 Hob.Ⅰ:2
モーツァルト:交響曲 第5番 変ロ長調 K.22
ストラヴィンスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 *
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
下記のリブログ元の記事に書いた、クラシック音楽の無料ライヴ配信の一つ、大フィルの定期演奏会を聴いた。
指揮は、大フィルの前音楽監督、井上道義。
古典派の作曲家ハイドン、モーツァルトと、新古典派の作曲家ストラヴィンスキーとを並べた、粋なプログラムである。
最初の曲は、ハイドンの交響曲第2番。
この曲で私の好きな録音は
●ガロワ指揮 シンフォニア・フィンランディア 2004年5月26-28日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
あたりである。
パトリック・ガロワ&シンフォニア・フィンランディアによるハイドン交響曲選集は、これ以上何を望もうかという決定的な名盤である。
彼らが録音したのは、交響曲第1~5、9~12、25、42、65番のみ。
アバド&ベルリン・フィルによるモーツァルト交響曲選集と同じく、全集でなく選集であることが大変惜しまれる、洗練の極みともいうべき完璧な美しさを誇る名演。
これと比べてしまうと、今回の井上道義&大フィルの演奏は、完成度の点でも音の美しさの点でも、さすがに及ばない。
とはいえ、大フィルも弦の美しさはなかなかのもの。
井上道義も、終楽章の経過句でポルタメントを使用するなど、独特の色気というか、個性を出していた。
2つ目の曲は、モーツァルトの交響曲第5番。
この曲で私の好きな録音は
●テイト指揮 イギリス室内管 1984-93年セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ボニ指揮 コンセルトヘボウ室内管 2001年頃?セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●飯森範親 指揮 山形響 2008年2月9日山形ライヴ盤(NML/Apple Music/CD)
あたりである。
いずれも良い演奏だが、先ほどのハイドンにおけるガロワ盤のような圧倒的な名盤というほどではない。
今回の井上道義&大フィルの演奏も、これら3盤に迫るくらいの出来ではあったように思う。
やはり、大フィルの弦の質の高さが印象的。
3つ目の曲は、ストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲。
ソリストを務めるのは、昨年のチャイコフスキー国際コンクールのヴァイオリン部門(その記事はこちら)で金川真弓と同率の第4位を受賞したアイレン・プリッチン。
この曲で私の好きな録音は
●H.ハーン(Vn) マリナー指揮アカデミー室内管 2001年2月セッション盤(Apple Music/CD)
あたりである。
当時弱冠21歳のヒラリー・ハーンによる、これを聴くと他のどの演奏にも満足できなくなってしまうような名盤。
第1楽章も終楽章も、他のヴァイオリニストたちより一回りも二回りも速いテンポにもかかわらず、音の正確さは誰よりも上である。
これと比べてしまうと、今回のプリッチンの演奏はさすがに敵わない。
和音やフラジオレット奏法など、あらゆる箇所が安定し盤石なハーンのようにはなかなかいかないし、ある音が急に飛び出て聴こえるなど、フレーズの滑らかさもところどころいま一歩。
ただ、音の性質としては線が細めで明るく軽やかであり、私としては音色の点ではハーンよりもむしろ好みだし、ストラヴィンスキーのこの曲にも合っているように思う。
最後の曲は、ストラヴィンスキーの「春の祭典」。
この曲で私の好きな録音は
●ナガノ指揮 ロンドン・フィル 1990年12月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●カンブルラン指揮 SWR響 2006年11月セッション盤(Apple Music/CD)
●ネゼ=セガン指揮 フィラデルフィア管 2013年3月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●クルレンツィス指揮 ムジカエテルナ 2013年10月7~9日セッション盤(Apple Music/CD)
あたりである。
これらの洗練された名盤に比べ、今回の井上道義&大フィルの演奏はより武骨な、この曲の原初的な性質を出したものであった。
冒頭のファゴットのメロディをやたらゆっくりと濃く歌わせたり、曲中ところどころ出てくるパーカッションの打撃音をここぞとばかりに強調したり。
都会的洗練からは遠いのだけれど、これはこれでこの曲の一面を表現した解釈ではあった。
それに、垢抜けないながらもコテコテというところまではいかない、一種独特のバランス感覚も感じられる(井上節とでも言おうか)。
なお、せっかくのネット配信だからということで、休憩時間にフェスティバルホールの楽屋を紹介したり、大阪芸大のカズ・オオモリを呼んで「春の祭典」を聴きながら絵を描いてもらう企画をしたりと、井上道義のアイディアと配慮は大変ありがたかった。
彼は喋りも独特で、通り一遍でなく面白い。
彼は若い頃カラヤンのリハーサルを見学したが、カラヤンの練習のうまさは別格で、団員の心理をつかみながら練習を進めていたこと。
また、彼はチェリビダッケから教えを受けたが、チェリビダッケは大変頭の良い人で、全く頭が上がらなかったこと。
こういった貴重なエピソードの数々が語られた。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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