今回は演奏会の感想でなく、別の話題を。
下記のリブログ元の記事に書いた、クラシック音楽の無料ライヴ配信のうちの一つ、アンドラーシュ・シフのものを聴いた。
J.S.Bach: The Well-Tempered Clavier Book 1 No.1 in C major, BWV846 (20:53-)
Bartók: Rondo No.1 from Three rondos on Slovak Folk Tunes, Sz84 (37:56-)
Brahms: Intermezzo in A major, Op.118-2 (49:17-)
Beethoven: Piano Sonata No.26 in E flat major, Op.81a (1:09:26-)
シフのトーク付きである。
今回、新型コロナウイルス感染対策のため来日公演が一部中止となり、日本のファンのためにネット配信で音楽を届けたいこと。
音楽には、単なる快楽や娯楽という以上の深い力があると信じていること。
バッハは、シフの最も敬愛する作曲家で、毎朝必ず弾いていること。
バルトークは、子供のための小品で、これを弾くと故郷ハンガリーを強く思い出すこと。
ブラームスは、歳を取った作曲家が若かりし頃を懐古する音楽で、殊更に悲しい曲調ではないけれど、美しい時を止めることができないという点で、やっぱり音楽は悲しいということ。
ベートーヴェンは、苦難の中にも希望を捨てなかった人で、このソナタでも「告別」「不在」のみならず「再会」を描いたように、現在のパンデミックも必ず終息し私たちはまた再会できると信じていること。
こういったことが話された。
シフは、いま66歳。
上記の4人の作曲家たちの、いずれの没年をも越えている。
そんな彼の話す内容は、例えば昨年聞いた20歳の藤田真央の元気一杯のトーク(その記事はこちら)と比べ、なんと異なることだろう。
そんな彼の演奏。
指回りはさすがにやや衰えが見られるようになってきたけれど、それでも音の美しさ、濁りのなさ、そして歌心(特に左手がいかによく歌うことか!)、こういったことはいささかも変わらない。
朝に弾く、というのがこの上なくしっくりくる、あまりにもさわやかなバッハ。
さらりとしているのに味わい深い、ブラームスやベートーヴェン。
そして、バルトーク。
シフが現在のハンガリーの政治に納得できず、ここ10年間ハンガリーに帰国していない、というのは知らなかった。
バルトークのこのロンドを弾くとホームシックになるが、それでも未だ帰れぬ故郷ハンガリーを思ってこの曲を弾くのだという。
まるで、カザルスの弾く「鳥の歌」である。
とても小さな曲なのだが、聴くと胸が詰まってしまう。
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