びわ湖ホールプロデュースオペラ
ワーグナー作曲 《ニーベルングの指輪》 第3日 『神々の黄昏』(ドイツ語上演・日本語字幕付) <新制作>
2日目
※無観客公演、ライブストリーミング配信
【日時】
2020年3月8日(日) 開演 13:00
【会場】
びわ湖ホール 大ホール (滋賀)
【スタッフ&キャスト】
指揮:沼尻竜典 (びわ湖ホール芸術監督)
演出:ミヒャエル・ハンペ
美術・衣裳:ヘニング・フォン・ギールケ
照明:齋藤茂男
音響:小野隆浩 (びわ湖ホール)
演出補:伊香修吾
舞台監督:幸泉浩司
ジークフリート:エリン・ケイヴス
ブリュンヒルデ:池田香織
アルベリヒ:大山大輔
グンター:髙田智宏
ハーゲン:斉木健詞
グートルーネ:森谷真理
ワルトラウテ:中島郁子
ヴォークリンデ:砂川涼子
ヴェルグンデ:向野由美子
フロスヒルデ:松浦麗
第一のノルン:八木寿子
第二のノルン:齊藤純子
第三のノルン:田崎尚美
管弦楽:京都市交響楽団
合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル、新国立劇場合唱団
【プログラム】
ヴァーグナー:「神々の黄昏」
昨日の記事に書いた、びわ湖ホールでのヴァーグナー「神々の黄昏」無観客公演のストリーミング配信(その記事はこちら、もしくは下記のリブログ元の記事)。
昨日は1日目だったが、本日は2日目公演を聴いた。
1日目同様、やはり2日目も何より沼尻竜典の指揮が素晴らしい。
様々なパートのフレーズや相互のハーモニーが明瞭に聴こえ、知的な演奏という印象。
知的でありながら、葬送行進曲や自己犠牲といった聴かせどころではしっかりと劇的に盛り上げる。
劇的でありながら、音楽はわざとらしくならず滔々と自然に流れ、音は濁ることなく澄んでいる。
自己犠牲の終盤、「ヴァルハラの動機」の金管や、「救済の動機」の弦の響きの、透明で美しいこと!
弱音のみならず、強音になってもその透明感は失われない。
そして、その動機の裏で刻まれる弦の細かなトレモロ風伴奏パッセージさえ、まるで勢いを増していくライン川の水しぶきや波を一つ一つ描写していくかのように、くっきりと明瞭に聴こえるのだった。
最後に、再び穏やかになったライン川の水のしずくのように奏でられるハープの繊細さも忘れがたい。
オーケストラ(京都市交響楽団)も良かった。
特に木管のレベルが高く、クラリネットなど(小谷口直子だろうか)、昨日の記事で当公演に似ている旨書いたブーレーズ盤でのバイロイト祝祭管のクラリネットよりもうまい。
弦や金管については、さすがにバイロイト祝祭管のほうがうまいようだが、それでも十分なレベルであった。
合唱(びわ湖ホール声楽アンサンブル、新国立劇場合唱団)も良かった。
歌手は、1日目と2日目とで総入れ替えとなっている。
ジークフリート役のエリン・ケイヴス、ブリュンヒルデ役の池田香織は、昨日の同役担当歌手に比べ声質はやや暗めで地味であり、輝かしさには乏しいが、そのぶん声の荒れが少なく安定感があった。
総合的には、昨日よりも本日のこの2役のほうが、少しうわてであったように思う。
池田香織、堂々たる歌いっぷりで、ブリュンヒルデがこれだけ歌える日本人はそう多くあるまい。
また、ギービヒ家の3人は、昨日(石野繁生、妻屋秀和、安藤赴美子)もなかなか良かったが、本日(髙田智宏、斉木健詞、森谷真理)も劣らず良かった。
演出は、ミヒャエル・ハンペならではの、プロジェクションマッピングを駆使した写実的なものだった。
ブーレーズ盤におけるパトリス・シェローのように何か新しい意味を含ませるような演出ではないが、オーソドックスな美しさがある。
ライン川の波の揺らめきや、ジークフリートの葬送の場面の月夜の描写などが印象的。
そして、最後の自己犠牲の場面。
ここは、ヴァーグナーがとてつもなく壮大なストーリーと音楽を書いたため、演出は困難を極め、うまくいった例をなかなか見ない。
今回のハンペの演出は、燃え盛る炎の描写をいったんやめ、ラインの乙女たちが指環を黄金に戻した後に、その黄金の輝きに照らされて燃えるヴァルハラ城が見えてくる、といったやり方になっていた。
炎がいったん消えることでその威力のインパクトは減弱するけれど、川底の黄金に照らされる天上の炎の城、という構図はこれはこれで美しかった。
なお、今回の公演は高画質でDVD化される予定とのこと。
今回のようにクオリティの高い「神々の黄昏」の公演は、たとえヴァーグナーの聖地バイロイトであってもめったにない(むしろバイロイトは指揮・演出ともにいまいちのことが少なくない)。
せっかくの良公演を見逃すことなく活かしてくれる大変な好企画であり、当然購入するつもりである。
ただ、1日目か2日目か、どちらの公演がDVD化されるのかはまだ不明。
私としては、どちらかというと2日目のほうが好みだったが、とはいえ各歌手はどちらかにしか出演していないわけで、1日目も捨てがたい。
両方収録するわけにはいかないだろうか(さすがに無理か…)。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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