フォードvsフェラーリ | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

映画「フォードvsフェラーリ」

 

【劇場公開日】

2020年1月10日

 

【解説】

マット・デイモンとクリスチャン・ベールが初共演でダブル主演を務め、1966年のル・マン24時間耐久レースで絶対王者フェラーリに挑んだフォードの男たちを描いたドラマ。ル・マンでの勝利を目指すフォード・モーター社から依頼を受けた、元レーサーのカーデザイナー、キャロル・シェルビーは、常勝チームのフェラーリ社に勝つため、フェラーリを超える新しい車の開発と優秀なドライバーの獲得を必要としていた。シェルビーは、破天荒なイギリス人レーサーのケン・マイルズに目をつけ、一部上層部からの反発を受けながらもマイルズをチームに引き入れる。限られた資金と時間の中、シェルビーとマイルズは力を合わせて数々の困難を乗り越えていくが……。シェルビーをデイモン、マイルズをベールがそれぞれ演じる。監督は「LOGAN ローガン」「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」のジェームズ・マンゴールド。

 

【スタッフ】

監督:ジェームズ・マンゴールド

製作:ピーター・チャーニン、ジェンノ・トッピング、ジェームズ・マンゴールド

製作総指揮:ケビン・ハローラン、デーニ・バーンフェルド、マイケル・マン

脚本:ジェズ・バターワース、ジョン=ヘンリー・バターワース、ジェイソン・ケラー

撮影:フェドン・パパマイケル

美術:フランソワ・オデュイ

衣装:ダニエル・オーランディ

編集:マイケル・マカスカー、アンドリュー・バックランド

音楽:マルコ・ベルトラミ、バック・サンダース

 

【キャスト】
キャロル・シェルビー:マット・デイモン

ケン・マイルズ:クリスチャン・ベール

リー・アイアコッカ:ジョン・バーンサル

モリー・マイルズ:カトリーナ・バルフ

ヘンリー・フォード2世:トレイシー・レッツ

レオ・ビーブ:ジョシュ・ルーカス

ピーター・マイルズ:ノア・ジュプ

エンツォ・フェラーリ:レモ・ジローネ

レイ・マッキノン

J・J・フィールド

ジャック・マクマレン

 

【作品データ】

製作年:2019年

製作国:アメリカ

配給:ディズニー

上映時間:153分

映倫区分:G

 

 

 

 

 

以上、映画.comのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。

 

 

車やレースに興味があるわけではないのだが、何となく観に行ったこの映画。

観てみると、先日観た音楽映画「蜜蜂と遠雷」(その記事はこちら)と似た、“天才”をテーマとした映画だった。

そして、音楽好きの私にとっては驚くべきことだが、「蜜蜂と遠雷」よりも強い感銘を受けた。

私には映画の“良し悪し”はよく分からず、“好き嫌い”の話になるけれど、「フォードvsフェラーリ」のほうが好きである理由を以下に書いてみたい。

なお、ネタバレはあまりないが、気になる方はご注意いただきたい。

 

 

1. ノンフィクションである

 

私の好きな言葉の一つに、“事実は小説より奇なり”がある。

本当にその通りだし、たとえ“奇”でなかったとしても、ノンフィクションにはフィクションにない生身の人間の血が通っているように思う。

「タイタニック」(主人公はフィクションだが)や「アポロ13」を観て泣くのは、ノンフィクションだからこそ。

「のだめカンタービレ」で千秋真一がプラティニ国際指揮者コンクールで優勝してもそれほど感動しなかった私だが、24歳で単身渡仏しブザンソン国際指揮者コンクールで突然優勝した若き小澤征爾が優勝後まもなく書いた「ボクの音楽武者修行」は、ドキドキワクワクしっぱなしで読んだ。

「蜜蜂と遠雷」で“生活者の音楽”を奏でる高島明石のエピソードももちろん良いのだが、私にはそれよりも、フォローさせていただいている音楽家の方々のブログ(例えば福井の伊藤先生や大阪の倉内先生のブログ)を読むほうが、“生活者の音楽”のすさまじさに何倍もずしんと腹にこたえるのだった。

「フォードvsフェラーリ」にも、実話だからこその強み、リアリティがあるように思う。

 

 

2. 一人の“天才”に焦点が当てられている

 

映画「蜜蜂と遠雷」では、原作と異なり、“天才”であることの強調は弱められ、主題がやや分散しがちな印象があった。

それに対し、「フォードvsフェラーリ」では、ケン・マイルズという一人の天才レーサーに焦点が当てられる。

そんな彼のかっこよさが、この映画の主題といってもいいだろう。

他の映画レビューなどを読んでいると、どうやら実際には彼の才能のみを強調するのは間違いで、色々な人たちの努力や技術の結集があったはずであるらしい。

本であれば、それらを全て含めるべきだったろう。

しかし、時間の限られた映画においては、ケン・マイルズの才能に的を絞るやり方は正解であるように私には感じられた。

上の紹介文にあるように、破天荒で協調性のない性格だが、とびぬけたレースの才能を持つケン・マイルズ。

ル・マン24時間耐久レースという、華々しくかつ過酷なレースがこの映画のメインイベントだが、それを終えた彼がチームリーダーのシェルビーに対して発する言葉。

ネタバレになるので詳しくは書かないが、彼のその言葉に、私は感銘を受けずにいられなかった。

真の天才は、周囲の雑事など何一つ気にしない。

ただひたすら純粋に、一つのものを追い求め続ける。

そういう人に、どうやら私は憧れを抱くらしい。

自分にないものだからだろう。

私が、バッハやモーツァルトやベートーヴェンが好きなのも、フルトヴェングラーやトスカニーニやワルターが好きなのも、坂本龍馬や高杉晋作や吉田松陰が好きなのも、西郷隆盛や大久保利通や木戸孝允が好きなのも、彼らが際立ったキャラクターとずば抜けた才能を持ち、ただひたすら一途に純粋に人生を駆け抜けた人であったためなのだと思う。

ケン・マイルズも、ジャンルは違えど明らかに同じタイプの人。

ブルース・マクラーレンという、車について無知な私でも聞いたことがあるほどの名高いレーサーがいるが、ケン・マイルズはマクラーレンよりももっとずっとすごい才能を持つ人であったことが、この映画から分かる。

そんなケンは、今では忘れられ、ウィキペディアにも日本語版が存在しない(と思ったらなんと一昨日にページ作成されたよう)。

でもそんなことは、天国の彼は気にも留めていないかもしれない。

 

 

なお、フォローさせていただいているブロガーの方が、ネタバレありの詳しい感想を書いておられる。

映画視聴済の方は、そちらも一読されたい(こちら)。

 

 

 

 


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