大阪フィルハーモニー交響楽団
第534回定期演奏会
【日時】
2020年1月16日(木) 開演 19:00 (開場 18:00)
【会場】
フェスティバルホール (大阪)
【演奏】
指揮:尾高忠明
チェロ:スティーヴン・イッサーリス *
管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団
(コンサートマスター:崔文洙)
【プログラム】
エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調 作品85 *
ブルックナー:交響曲 第3番 ニ短調 「ワーグナー」 (第3稿)
※アンコール(ソリスト) *
「鳥の歌」(カタルーニャ民謡、無伴奏チェロ版)
大フィルの定期演奏会を聴きに行った。
指揮は、音楽監督の尾高忠明。
最初の曲は、エルガーのチェロ協奏曲。
この曲の録音といえばジャクリーヌ・デュプレのものが有名だが、私が好きな録音は
●カザルス(Vc) ボールト指揮 BBC響 1945年10月14日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ロストロポーヴィチ(Vc) ラフリン指揮 モスクワ・フィル 1958年セッション盤(Apple Music)
●フルニエ(Vc) ウォーレンスタイン指揮 ベルリン・フィル 1966年セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●イッサーリス(Vc) ヒコックス指揮 ロンドン響 1988年7月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ケラス(Vc) ビエロフラーヴェク指揮 BBC響 2012年5月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●イッサーリス(Vc) P.ヤルヴィ指揮 フィルハーモニア管 2014年11月14日、2015年4月10日セッション盤(CD)
あたりである。
そして、今回の演奏会でのチェリストは、まさにこのイッサーリス。
生で聴く彼の演奏は、期待通り素晴らしかった。
いつの間にか60歳を超えた彼だが、腕の衰えはほとんど感じられず、音程は安定しヴィブラートは無理なく整っている。
渋いロマンと静かな情熱を湛えた彼の演奏は、上記巨匠たちの中でもこの曲に最もふさわしいといえるかもしれない。
また、尾高忠明&大フィルの伴奏も、派手すぎず重厚すぎず節度ある演奏となっており、この曲に合っているように感じた。
ソリストのアンコールは、有名な「鳥の歌」。
情念の塊のようなカザルスの演奏とは違い、静かでうら寂しい演奏。
こういう「鳥の歌」も良い。
休憩をはさんで、次の曲はブルックナーの交響曲第3番。
この曲で私の好きな録音は
●ナガノ指揮 ベルリン・ドイツ響 2003年3月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ヤング指揮 ハンブルク・フィル 2006年10月15,16日ハンブルクライヴ盤(NML/Apple Music/CD)
あたりである。
ともに初稿による演奏だが、初稿にこだわりがあるわけではなく、好きな演奏がたまたま初稿だというだけである(第3稿ならスクロヴァチェフスキの演奏が割と好き)。
クリアで透明感あふれるナガノ、ずっしりと重みのあるヤングといった違いはあれど、ともに現代風の精緻きわまる名演となっている。
今回の尾高忠明&大フィルの演奏(第3稿)は、これら2盤ほどの洗練はないにしても、この曲らしい若々しさがよく表れていた。
第1楽章冒頭、高弦の下行アルペッジョはスタッカートでなくノンレガートないしはレガートで奏され、その点では上記ヤング盤に近い。
しかし、ヤング盤のような粘り気は感じず、むしろサクサクした印象を受けたのは、おそらくテンポがかなり速く軽快だったからだろう。
強奏部でも、いつものブルックナーらしいどっしりと悠揚迫らぬ構えというよりは、ベートーヴェンの「悲愴」ソナタのような若者特有の激しいダイナミズム、感傷的なヒロイズムが前面に出ていた。
こうした解釈は、より後年のブルックナーの交響曲には物足りないだろうけれども、比較的初期の作であるこの交響曲第3番には合っているように感じた(初期とはいっても、ブルックナーはこのときもう50歳近かったのだが)。
第2楽章もかなり速めのテンポだが、これまた悪くない。
主要主題のヴァイオリンに副主題のヴィオラ、いずれもさわやかな味わいのよく出た演奏。
終楽章の第2主題のヴァイオリンといい、全体的に弦の美しさが際立っていた。
今回は、尾高忠明&大フィルのコンビによるこれまでの演奏会の中でも、曲との相性の良い、とりわけ満足度の高いものだったように思う。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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