今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。
好きなカルテット、キアロスクーロ四重奏団の新譜が発売された。
曲目はシューベルトの弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」と、第9番である(NML/Apple Music/CD)。
詳細は以下の通り。
以上、HMVのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。
キアロスクーロ四重奏団というと、ハーゲン四重奏団やアルカント四重奏団と並んで、世界最高の弦楽四重奏団だと思う。
彼らの演奏するシューベルトの「死と乙女」は、私は2年半ほど前に実演を聴いた。
2016年4月 西宮 キアロスクーロ四重奏団 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第4番、シューベルト:同第14番、他 (記録のみ)
これが大変な名演で、特に第1ヴァイオリンを担当するアリーナ・イブラギモヴァのあまりの洗練ぶりに、耳がくぎ付けになった。
といっても、従来型のいわゆる「第1ヴァイオリン主導型」、つまり第1ヴァイオリンばかりが目立つようなタイプの団体ではない。
第1ヴァイオリンが全体の音楽性を牽引しているけれど、第1ヴァイオリンが前に出すぎることはなく、アンサンブルは緊密でゆるぎない。
今回のCDを聴いて、このときの実演を思い出すことができた。
これまで、「死と乙女」の録音としてはハーゲン四重奏団のものが好きだったが、今回のキアロスクーロ四重奏団盤はこれを超えるほどの出来である。
ハーゲン四重奏団盤も温かみがあって良いけれど、キアロスクーロ四重奏団盤はよりシャープで繊細の極み、かつ曲の隅々まで緊張感が漲り、聴く者に息もつかせない。
それにしても、ハーゲン四重奏団盤が出て間もない頃はすっきりしたシャープな演奏だと思ったものだが、今聴くととても温かくまろやかな演奏に聴こえる。
時代の変化をしみじみと感じる。
1990年録音であり、私などまだ最近のような気がしてしまうが、考えてみれば30年近く前である。
短いようで、長い年月。
弦楽四重奏の演奏様式も、この間にかなり変わってきた。
キアロスクーロ四重奏団は、現代最先鋭の団体の一つだろう。
とはいえ、ベートーヴェンなどではやはり温かみや分厚さ、重心の低さ、芯のしっかりした安定感といったものが欲しく、これらと現代的洗練との絶妙なバランスという点において、未だにハーゲン四重奏団の右に出る者はいない。
ハーゲンとキアロスクーロ、どちらもかけがえのない四重奏団である。
ハーゲン四重奏団はシューベルトの弦楽四重奏曲第13、14、15番を録音しているけれど、キアロスクーロ四重奏団はこれまで第13番のみであった(なお、この第13番も最高の名演)。
それが、今回ついに第14番の名演が録音された。
次は、シューベルト最後にして最高の弦楽四重奏曲である第15番、これをぜひ録音してくれないものだろうか。
ハーゲン四重奏団盤ももちろん良いし、その他クス四重奏団盤なども悪くないのだが、キアロスクーロ四重奏団ならこれらを超える名盤になりうる、と私は考えている。
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