大阪フィルハーモニー交響楽団 第517回定期 尾高忠明 ブルックナー 交響曲第8番 ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

大阪フィルハーモニー交響楽団

第517回定期演奏会 

【日時】

2018年4月7日(土) 開演 15:00 (開場 14:00)

 

【会場】

フェスティバルホール (大阪)

 

【演奏】
指揮:尾高忠明

管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団

(コンサートマスター:田野倉雅秋)

 

【プログラム】

三善晃:オーケストラのための「ノエシス」
ブルックナー:交響曲 第8番 ハ短調 (ハース版)

 

 

 

 

 

大フィルの定期演奏会を聴きに行った。

今シーズンより大フィルの音楽監督となった尾高忠明の就任披露演奏会である。

就任披露演奏会がブルックナーというのも、何とも大フィルらしい(朝比奈隆からの伝統?)。

なお、前プロの三好晃の「ノエシス」は、私は遅れて行ったので聴けなかった。

 

 

ブルックナーの交響曲第8番(第2稿)の録音では、私は

 

●ケント・ナガノ指揮 ベルリン・ドイツ交響楽団 2005年ベルリンライヴ盤(DVD

 

が特に好きだけれど、名曲だけあってこれ以外にも名盤は多い。

ブルックナーの演奏には、一口に名演と言っても様々タイプがあって、

①曲をあたかも壮大な叙事詩のように扱い、一貫した流れと大きな視野で全体を捉える「フルトヴェングラー」タイプ

②音楽を禁欲的に捉えて明晰性を重視し、曲の和声進行や対位法的書法をクリアに浮かび上がらせる「クレンペラー」タイプ

③曲の持つ独墺風の素朴な味わいや自然な雄大さを自由に表現する「クナッパーツブッシュ」タイプ

④過度な重厚さを排し、さらりとした即物的な解釈で曲そのものに語らせる「シューリヒト」タイプ

などがあるように思われる。

全てがこのように明確に区分できるわけではないし、現代ではいずれのタイプもよりスマートなスタイルにはなっているけれど、便宜上このやり方で分類してみると、上記ナガノ盤は②のタイプの演奏と言っていいだろう。

基本的に私が好きなブルックナー演奏は、①と②のタイプのものであることが多い。

ただ、一般的に「ブルックナー指揮者」としてコアなファンから愛されやすいのは、③や④のタイプかもしれない。

 

 

今回の、尾高忠明&大フィルによる演奏は、どうだったか。

私には、上記①と③の間くらいのタイプの解釈であるように感じられた。

全体的にテンポは中庸やや遅めで、聴きやすい。

クナッパーツブッシュのようにときに極端に遅いテンポを採ったり、低音をぶわーっと膨らませて雄大さを表現したりするようなことはない。

その意味では、③というよりは①に近いことになる。

しかし、①に特徴的な、緊張感みなぎる最弱音から爆発的な最強音まで聴き手をグイッと引っ張るようなドラマ性はあまりなくて、もっとのどかな感じである。

また、これまた①に特徴的なテンポの一貫性(イン・テンポという意味ではなく、曲の冒頭からクライマックスへ、そして終結へと流れていく大きな視野での一貫したテンポ設定)はあまりなくて、フレーズごとに自由に、即興的にテンポが変わるケースが多かった。

壮大な物語を目の当たりにするというよりは、どちらかというと質朴な田舎料理をまったりと味わうような印象であり、その意味では①よりも③に近いといえる。

総合的には、①と③のちょうど間あたり、ということになるか。

 

 

私としては、もう少し厳しさのある演奏が好みであり、例えば第1楽章の第2主題部の半ばだとか、あるいは展開部やコーダなど、盛り上がる箇所でのテンポの設定がやや「だれる」のが気にはなった。

私が①のタイプだと思っているカラヤンは、同じような箇所で雄大なテンポを採っても決して「だれる」ことがなく、雄大さと推進力との一貫した絶妙なバランスが見事である。

ただ、今回のようにブルックナーの素朴な側面を味わうのもまた一興である。

下手にエキセントリックさを追求した演奏でないのが良い。

ブルックナーの交響曲第8番を生で聴くのは私にとっておそらく初めてということもあり、各楽器の配分など視覚的にも色々と分かって楽しめる演奏会だった。

 

 


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