藤森亮一 多川響子 京都公演 ストラヴィンスキー イタリア組曲 ラフマニノフ チェロ・ソナタ | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

「S.ラフマニノフ」

 

【日時】

2018年2月11日(日) 開演 20:00 (開場 19:30)

 

【会場】

カフェ・モンタージュ (京都)

 

【演奏】

チェロ:藤森亮一
ピアノ:多川響子

 

【プログラム】

ストラヴィンスキー/ピアティゴルスキー:イタリア組曲 (1934) より

 1. Introduzione

 2. Srenata

 4. Tarantella

 5. Minuetto - Finale
ラフマニノフ:チェロ・ソナタ ト短調 作品19 (1901)

 

 

 

 

 

カフェ・モンタージュのコンサートを聴きに行った。

今回は、チェロの藤森亮一とピアノの多川響子によるアンサンブル。

N響の首席チェリストである彼がここで弾いているということは、昨日聴いたN響定期(本日もやっているはず)には代役を立てたということなのだろうか。

 

 

前半は、ストラヴィンスキーのイタリア組曲。

カフェ・モンタージュのマスターの説明によると、往年の名チェリストであるピアティゴルスキーが、ストラヴィンスキーの「プルチネッラ」をチェロ用に編曲してほしいと思い、ストラヴィンスキーに依頼したところ、「自分でやれ」といわれ、どうにか編曲して持っていったところ合格点が出た。

それがこの「イタリア組曲」である、とのことである。

この曲は、おそらく大変難しいのではないだろうか。

編曲者のピアティゴルスキー自身のものも含め、うまく弾けている録音がなかなかない。

私が聴いた中では唯一、

 

●タチアナ・ヴァシリエヴァ(Vc) 占部由美子(Pf) 2000年9月25~28日セッション盤(NMLApple MusicCD

 

だけが、技巧的な難しさに引きずられることなく、ストラヴィンスキーに欠かせない「乾いたテンポ」を表現できている。

(なお、彼女はこの3年後に同曲を再録しているが、おそらくピアニストの問題により旧盤の出来にわずかながら達していない)

今回の藤森亮一の演奏は、中・低音域の音は素晴らしかったものの、高音域や重音、急速なパッセージなどについては、どうしても難があった。

まぁ、編曲者本人でさえ苦労しているのだから、仕方がない。

実際、演奏を見るとやはりいかにも難しそうだった。

 

 

後半は、ラフマニノフのチェロ・ソナタ。

カフェ・モンタージュのマスターの説明によると、この曲はト短調で書かれていることからも分かる通り、ショパンのチェロ・ソナタから影響を受けており、また同時にボロディンのチェロ・ソナタからも影響を受けている。

そして、ショパンはベートーヴェンのチェロ・ソナタ第2番ト短調から影響を受け、ボロディンはバッハの無伴奏チェロ組曲の主題をもとに上記チェロ・ソナタを書いた(ただしウィキペディアによると無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番の主題とのこと)。

こうして書かれたラフマニノフのチェロ・ソナタは、今度はフォーレのチェロ・ソナタ第1番の第2楽章に影響を与え、こうして伝統は脈々と受け継がれていった、とのことである。

この曲で私の好きな録音は

 

●ロストロポーヴィチ(Vc) デデューヒン(Pf) 1958年セッション盤(Apple Music

●イッサーリス(Vc) ハフ(Pf) 2002年8月23~25日セッション盤(CD

●クニャーゼフ(Vc) ルガンスキー(Pf) 2006年セッション盤(NMLApple MusicCD

●ガベッタ(Vc) カーン(Pf) 2011年セッション盤(Apple MusicCD

 

あたりである。

今回の演奏会の予習として、藤森亮一自身による2009年の同曲録音を聴いてみると(NMLApple Music)、思いがけず(というと大変失礼なのだが)上記の4種の盤にも負けない出来だった。

上記4盤に比べると若干地味だが、そのぶん朴訥とした味わいがあるし、完成度も決して低くない。

それで今回楽しみに聴いたのだが、9年前の上記録音に比べると、音程などやや頼りなくなってはいた。

だが、ストラヴィンスキーのときと同様、中・低音域の音程はかなり確かで、彼ほど弾ける人はおそらくそれほど多くないだろう。

また、音色も9年前の録音よりはややかすれ気味だったが、それはそれで「枯れた味わい」が増したとも言えるかもしれない。

全体に、彼の演奏にはゴージャス過ぎない渋いロマン性が底流していて、それがこのラフマニノフ特有の憂愁をもつソナタに合っているように感じる。

この「渋いロマン性」は、ピアノの多川響子とも統一が取れており、先ほどのストラヴィンスキーから一転、俄然しっくりくる演奏となった。

 

 

彼も、今後カフェ・モンタージュの「常連さん」になってくれるようである(多川響子はもうすでになっている)。

カフェ・モンタージュのコンサートにおける演奏家のラインナップがどんどん豊潤になっていくのは、大変嬉しい。

 

 


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