今回は演奏会の感想でなく、別の話題を。
前回、前々回の記事で、好きなピアニストのエリック・ル・サージュの話題に触れた。
このついでに、彼の新しいアルバムを紹介したい。
新しいといっても、発売されたのは少し前だけれど。
チェリストのフランソワ・サルクとともに録音した、ベートーヴェンのチェロ・ソナタ全集である(Apple Music/CD)。
詳細は下記を参照されたい。
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ全集(2CD)
フランソワ・サルク、エリック・ル・サージュ
フランス音楽のオーソリティであるチェリスト、フランソワ・サルク。彼はシュタルケル、トゥルトリエに師事し、イェール大、パリ国立音楽院を卒業、数多くの国際コンクールに入賞歴があり、イザイ弦楽四重奏団で5年間活躍し、またピエール・ブーレーズをはじめとした現代音楽作曲家からも信頼が厚く、数多くの作品の初演を行っています。日本にもリサイタルで来日し、その素晴らしい演奏で聴衆を魅了しています。
サルクと度々共演や録音を行っているル・サージュとのコンビによるこのベートーヴェンのチェロ・ソナタ全集は、フォーレやプーランクとは違った「ドイツ的」な表現も存分に発揮、とても流麗かつユニークな演奏となっています。(輸入元情報)
【収録情報】
Disc1
ベートーヴェン:
● チェロ・ソナタ第1番ヘ長調 Op.5-1
● チェロ・ソナタ第2番ト短調 Op.5-2
Disc2
● チェロ・ソナタ第3番イ長調 Op.69
● チェロ・ソナタ第4番ハ長調 Op.102-1
● チェロ・ソナタ第5番ニ長調 Op.102-2
フランソワ・サルク(チェロ)
エリック・ル・サージュ(ピアノ)
録音時期:2014年3月
録音場所:ベルギー、リエージュ王立音楽院
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
なお、上記はHMVのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。
ベートーヴェンのチェロ・ソナタ全集というと、ジャン=ギアン・ケラスとアレクサンドル・メルニコフによる決定的な名盤がある(NML/Apple Music/CD)。
しかし、上記のサルク/ル・サージュ盤も、決してひけは取っていないと思う。
ピアノに関して言うと、肉厚なメルニコフの音に対して、ル・サージュは硬質でシャープな音であり、対照的だけれど、二人ともきわめて明瞭なタッチによる、細部まで洗練された演奏となっている。
ベートーヴェンらしい力感にも欠けていないし、細部に工夫がありながらもわざとらしくなることなく、作曲当時の古典派の様式にも無理なく合致して聴こえる自然な演奏となっている。
私としては、甲乙つけがたい。
チェロのほうは、ケラスほどの柔らかでスマートな洗練はサルクからは聴かれないにしても、十分にうまいと思うし、彼のややごつごつした分厚さはベートーヴェンに合っているともいえるかもしれない。
ル・サージュには、この調子でどんどん録音してほしい。
彼の室内楽への適性は、フォーレやシューマンの一連の録音ですでに十分すぎるほど実証されているし、今後の室内楽の録音も楽しみだけれど、彼はソロも素晴らしく、できればソロ曲もどんどん録音してもらいたいところである。
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