大阪音楽大学
第29回ザ・コンチェルト・コンサート
【日時】
2017年11月16日(木) 開演 18:00 (開場 17:30)
【会場】
ザ・カレッジ・オペラハウス (大阪)
【演奏・プログラム】
・ピアノ:林 瑛華 (大学4年)
ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲 第1番 ハ短調 作品35
・ヴァイオリン:井谷 珠綺 (大学 演奏家特別コース1年)
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
・打楽器:柳田 菜津美 (大学4年)
セジョルネ:マリンバと弦楽のための協奏曲(2006年版)
・ピアノ:立木 和也 (大学 演奏家特別コース3年)
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18
指揮:新通 英洋
管弦楽:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団
大阪音楽大学のザ・コンチェルト・コンサートを聴きに行った。
遅れて行ったので、最初の林さんのショスタコーヴィチは聴けなかった。
次は、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。
この曲で私の好きな演奏は
●五嶋みどり (Vn) アバド指揮ベルリン・フィル 1995年3月ベルリンライヴ盤(Apple Music)
●ユリア・フィッシャー (Vn) クライツベルク指揮ロシア・ナショナル管 2006年4月セッション盤(NML/Apple Music)
あたりである。
今回の井谷さんの演奏は、上記2盤のような細身のシャープな音に比べると、もう少しふくよかな音であり(ヒラリー・ハーンほど厚くはないが)、私の好みからは少し外れるものの、これはこれで味わいがあって良かった。
音程的には、甘い箇所もところどころあったものの、全体としては悪くないように思った。
終楽章はやや安全運転気味な遅めのテンポだったが、そのぶん丁寧に仕上がっていたし、ゆったりしたエピソード主題(途中に出てくる土臭いメロディ)が突如速くなるところでの表情の変化なども鮮やかで、なかなか飽きさせない演奏だった。
今回の各演奏の中では、最も感心した。
次は、セジョルネの「マリンバと弦楽のための協奏曲」。
この曲はおそらく初めて聴いたが、難解な「現代音楽」ではなく、映画音楽のようにロマンティックで聴きやすい曲だった。
知らない曲なので演奏の判断はしにくいが、今回の柳田さんの演奏は、比較的落ち着いた、丁寧な感じのものだったように思われる。
最後は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。
この曲で私の好きな演奏は
●ラフマニノフ (Pf) ストコフスキー指揮フィラデルフィア管 1929年4月10、13日セッション盤(NML/Apple Music)
●リヒテル (Pf) ヴィスロツキ指揮ワルシャワ・フィル 1959年4月セッション盤(NML/Apple Music)
●ルガンスキー (Pf) オラモ指揮バーミンガム市響 2005年セッション盤(NML/Apple Music)
あたりである。
この3人の演奏は、ただ単にロシア系の爆演というだけでなく、鋼のように強靭で、かつロシアの大地のように雄大で深々とした美しい音が聴かれる。
このような音が出せる人は、世界広しといえどもほとんどいない、と私は考えている。
しかし、このような音が出せなくても、例えばアンナ・ヴィニツカヤ(NML/Apple Music)やカティア・ブニアティシヴィリ(Apple Music)の同曲演奏などはキレがあって魅力的だし、他曲だがクレア・フアンチの弾く前奏曲(NML)や石井楓子の弾く協奏曲第3番(動画1/2/3/4)なども、雄弁な表現力があり味わい深い。
また、一昨年のこの演奏会(大阪音大のザ・コンチェルト・コンサート)で田代彩さんが弾いた「パガニーニ狂詩曲」も、音が目立って大きいわけではなかったけれど、端正な中にも堂に入った表現が聴かれ、聴きごたえがあった(有名な第18変奏の演奏の美しさも、特筆すべきものがあった)。
それに比べると、今回の立木さんの演奏は、やや生硬な印象があった。
第2楽章の連綿たるピアノの音型は、確かにフルートやクラリネットのメロディに対する伴奏音型ではあるのだけれど、それでもフルートやクラリネットにも負けないほどの美しい情感を出してほしいところ。
第1楽章第2主題の右手のオクターヴによるメロディや、第2楽章主部の両手のユニゾンによるメロディなど、ロマンティックな聴かせどころでも表現がのっぺりしてしまったのが惜しかった。
終楽章も、落ち着いたテンポで丁寧に仕上げてはいるのだが、もう少しドラマティックなうねりだとか、あるいはテクニックのキレだとか、もしくは抒情性だとか、何らかの強みや個性があれば良かった。
ただ、第1楽章展開部における右手オクターヴの急速な三連符など、明瞭に鋭く際立たせていて良いと思ったし、全体的にテンポが無闇にころころ変わらない点も好感を持った。
4人とも、今後のさらなる成長と活躍に期待したい。
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