第86回日本音楽コンクール ヴァイオリン部門 本選 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

第86回 日本音楽コンクール ヴァイオリン部門 本選

 

【日時】 
2017年10月22日(日) 開演 16:00

 

【会場】 
東京オペラシティコンサートホール
 

【演奏・プログラム】 

(1) 岸本萌乃加(きしもと・ほのか)

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47

 

(2) 飯守朝子(いいもり・あさこ)

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47

 

(3) 外村理紗(ほかむら・りさ)

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35

 

(4) 大関万結(おおぜき・まゆ)

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47


指揮:田中祐子

管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

 

 

 

 

 

日本音楽コンクールのヴァイオリン部門の本選を聴いた。

音コンを聴くのは初めて。

さすが、国内最大のコンクールの本選だけあって、皆うまい。

中でも私が気に入ったのは、2番目に弾いた飯守朝子と、4番目に弾いた大関万結である。

 

 

飯守朝子は、私の好きな五嶋みどりやイブラギモヴァに近い、比較的細身のシャープな音だった。

特にシベリウスのコンチェルトには、こういった音がよく合っていると思う。

北欧の寒くてぴんと張り詰めた空気のような、凛とした音。

ただ、五嶋みどりやイブラギモヴァに特徴的な、こだわりぬいた求心的な演奏というところにまでは至っておらず、表現がやや直線的な印象はあった。

もう少し表現の「引き出し」が多ければなお良かったか。

第2楽章のG線の高音部の歌わせ方なども、もう少し繊細さがほしかった。

とはいえ、音程など演奏全体がよく安定していて、なかなかの完成度だった。

 

 

それに対し、大関万結のほうは、より重心の低い、ヴィオラにも似た音だった。

オイストラフのような(もちろん彼ほど分厚くはないけれど)しっかりとした分厚めの音で、北欧というよりもむしろロシアの雄大な大地を思わせる。

とても繊細というよりはややごついところのある音であり、私の好みど真ん中の音というわけではなかった。

しかし、そういった分厚い音に聴かれがちな、ヴィブラートの大きさや音程におけるムラはあまり聴かれず、比較的しっかりとコントロールされた引き締まった音になっていた。

そして、彼女は表現力がなかなかのものだった。

彼女が弾くと、音楽の流れが単調にならない。

第1楽章コーダの盛り上げ方など堂に入っていたし、第2楽章も抒情的であるとともに風格を感じる演奏だった。

 

 

音では飯守朝子、表現力では大関万結ということで、どちらを選ぶか悩んだが、結局後者の風格に敬意を表して、「聴衆賞」の票は大関万結に投じた。

私の中で勝手に順位をつけるとすると、

 

1. 大関万結

2. 飯守朝子

3. 岸本萌乃加

4. 外村理紗

 

となる(3と4は逆でも良い)。

ちなみに、観客の拍手が大きかったのは外村理紗と大関万結だった。

さて、順位はどうなるか。

 

 

実際の結果は以下のようになった。

 

【本選結果】

1位:大関万結

2位:外村理紗

3位:岸本萌乃加

入選:飯守朝子

 

聴衆賞:大関万結

 

まぁ、おおむね妥当な結果か。

飯守朝子はもう少し順位が上でもいいのではないかと個人的には思うけれど、完成度の高さよりも個性的な表現力や、コンチェルトらしい華やかさといったところが重視されたのかもしれない。

まぁこのあたりは好みの問題もあるし、それに入選でも十分すごいことである。

これからのさらなる成長と活躍に期待したい。

 

 


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