今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。
「もしもタイムマシンがあったなら行ってみたい演奏会」シリーズの続き。
今回は、フルトヴェングラーの指揮によるヴァーグナーの「タンホイザー」を取り上げたい。
フルトヴェングラーがその生涯で行った「タンホイザー」の公演は、以下の通りである。
①1916年10月1日、1917年2月18日、5月27日 マンハイム歌劇場での公演
②1935年10月13、15、18日、12月18日、1936年1月9日、6月15日 ウィーン国立歌劇場での公演
③1937年11月10、13、16、30日、12月3日、1938年3月20日、6月25日 ベルリン国立歌劇場での公演
昨日取り上げた「さまよえるオランダ人」よりは、数多く振っている。
このうちどれを選ぶか迷うところだが、②のうち最後の公演である
1936年6月15日、ウィーン国立歌劇場
指揮:ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
管弦楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団
プログラム
Wagner: Tannhäuser
(Max Lorenz, Ludwig Hofmann, Alexander Sved, Georg Maikl, Lotte Lehmann)
にしておきたい。
というのも、マックス・ローレンツ、ルートヴィヒ・ホフマンといった著名な歌手たちに加え、伝説の名ソプラノ、ロッテ・レーマンの(おそらく)エリーザベトが聴けるからである。
②のうちでも、この最後の公演以外のものでは、レーマンではなくマリア・ミュラーやその他の歌手が歌っている。
ミュラーも清澄な声で素晴らしいし、文句はないのだけれど、できればここはレーマンの伸びやかな声をぜひ聴いてみたいところ。
ただ、まだタイムマシンはないし、この演奏会のライヴ録音も残されていないので、代わりに下記の録音を聴いた。
●ヴァーグナー 「タンホイザー」(断片) フルトヴェングラー指揮ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1935年10月13日および1936年1月9日ウィーンライヴ盤(NML/Apple Music)
(1935年:バーシー(S)、スヴェド(Br)、ピストール(T)、ホフマン(Bs)、マイクル、マークホッフ、ウェルニック(T)、エットル(Bs)、ウィーン国立歌劇場合唱団)
(1936年:ローレンツ(T)、ミュラー(S))
上記②の、最初の公演と、最後から2番目の公演のライヴ録音(抜粋)である。
抜粋とはいえ、戦前のこんな録音が残っていようとは!
大変貴重である。
ただし、レーマンの出ていた公演の録音は残されていない。
そこで、下記の録音も聴いた(フルトヴェングラー指揮ではないが)。
●ヴァーグナー 「タンホイザー」より 第2幕「おごそかなこの広間よ」 第3幕「全能の乙女マリア様、私の願いを聞いて下さい」 ロッテ・レーマン 1914~1925年セッション盤(Apple Music)
こちらは、上記公演よりもさらに若い頃、レーマンの全盛期の声が聴ける。
素晴らしいことこの上ない。
そして、最後に、これ。
●ヴァーグナー 「タンホイザー」 序曲 フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィル 1952年12月2-3日セッション盤(NML/Apple Music)
フルトヴェングラー晩年の録音であり、上記の公演とはスタイルが異なるかもしれないが、オーケストラはウィーン・フィルで同じだし、何といっても音質が良いのが嬉しい。
巨大なスケール感と激烈な熱狂との共存を聴くことができる。
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