(行ってみたい演奏会 その5 フルトヴェングラーのベートーヴェン「フィデリオ」) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

「もしもタイムマシンがあったなら行ってみたい演奏会」のシリーズ。

フルトヴェングラーのベートーヴェン交響曲第5、9、3、7番ときたので、次は歌劇「フィデリオ」にしたい。

これまでは、フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルの演奏による、ベルリンでの演奏会で、かつ1929~1934年頃に行われたもの(できれば1929年のもの)から探してきた(その理由はこちら)。

しかし、オペラとなると、そもそもベルリン・フィルという条件からして無理である(当時のベルリン・フィルはオペラを演奏していなかった)。

というわけで、ベルリン・フィルにこだわらずに探してみる。

 

 

フルトヴェングラーによる「フィデリオ」の公演は、大きく分けると以下のようになる。

 

①1915年3月23日 リューベック市立劇場での公演

②1915~1921年 マンハイム歌劇場での一連の公演

③1921年5月13日 ヴィ―スバーデン・ヘッセン州立劇場での公演

④1930年6月13、17日 ベルリン市立歌劇場での公演

⑤1938年6月12、14日 チューリヒ歌劇場での公演

⑥1942年 ウィーン国立歌劇場での一連の公演

⑦1948~1950年 ザルツブルク音楽祭での一連の公演(ウィーン・フィル)

⑧1953年10月12、15、18日 ウィーン国立歌劇場での公演

 

このうちどれを選ぶか迷うところだが、フルトヴェングラーが最も精力的に活動していた、脂の乗り切った時期の公演といえる、④の

 

1930年6月13、17日、ベルリン市立歌劇場

指揮:フルトヴェングラー

管弦楽:ベルリン市立歌劇場管弦楽団

プログラム

Beethoven: Fidelio

(Gotthold Ditter, Ludwig Hofmann, Karl Erb, Gertrud Bindernagel, Alexander Kipnis)

 

が最も良いかもしれない。

往年の名テノール、カール・エルプのフロレスタンが聴けるのも魅力。

レオノーレ役と思われるGertrud Bindernagelという人はよく知らないけれど、当時活躍した人であるらしい。

キルステン・フラグスタートのレオノーレが聴きたいということになると、⑦を選ぶことになるだろうけれど、まぁ私は④にしておくことにする。

 

 

ただ、まだタイムマシンはないし、この演奏会のライヴ録音も残されていないので、代わりに下記の録音を聴いた。

 

●ベートーヴェン 「フィデリオ」 フルトヴェングラー/ウィーン・フィル 1953年10月13~17日セッション盤(NMLCD

(レオノーレ:マルタ・メードル、フロレスタン:ヴォルフガング・ヴィントガッセン、ロッコ:ゴットロープ・フリック、ドン・フェルナンド:アルフレート・ペル、ドン・ピツァロ:オットー・エーデルマン、ヤキーノ:ルドルフ・ショック、マルツェリーネ:セーナ・ユリナッチ、ウィーン国立歌劇場合唱団)

 

これは、1952年から始まり、年1回のペースで続けられることとなった、フルトヴェングラーのオペラ全曲セッション録音プロジェクトの第2弾である。

1952年に第1弾「トリスタンとイゾルデ」、1953年に第2弾「フィデリオ」、1954年に第3弾「ヴァルキューレ」と、フルトヴェングラーの得意とするオペラが次々と録音されていったが、1954年にフルトヴェングラーが亡くなったため、第3弾までで打ち切りになってしまった。

この3つは、いずれもオペラ演奏史に名を残す大変重要な録音となっている。

ただ、「フィデリオ」は台詞が省略されたのが残念といえば残念。

そして、さらに贅沢を言ってしまうと、もしも叶うことならば、「フィデリオ」の代わりに「神々の黄昏」をぜひとも録音してほしかった…。

この「フィデリオ」で起用された歌手たちを中心に、フルトヴェングラー指揮で「神々の黄昏」をセッション録音していたならば、他の演奏の及びもつかない記念碑的なものとなっていたことだろう。

 

つい愚痴をつらつら書いてしまったが、やっぱりこの「フィデリオ」、フルトヴェングラーが心から愛した作品だけあって、素晴らしい演奏である。

特に、第2幕の「牢獄の場」、ドン・ピツァロがフロレスタンを殺そうとして、レオノーレが「殺すならまず彼の妻を!」と叫びながら立ちはだかってかばい、ちょうどここで大臣が到着し間一髪で助かる、そして夫婦2人の歓喜の二重唱、壮大なレオノーレ序曲第3番を挟んで、フィナーレへと向かう一連の流れ。

ここは本当に、涙が出るほど感動的である。

特に、ここでのレオノーレ序曲第3番は、前年に録音された「エロイカ」にも似た大変壮大な演奏で、他の追随を全く許さない。

歌手も、メードルとヴィントガッセンを筆頭として、みな粒ぞろいである。

 

上記のような贅沢を言うのは、罰当たりなことと言わねばなるまい。

 

 


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