パレルモ・マッシモ劇場 大阪公演 マルティネンギ ゲオルギュー プッチーニ 「トスカ」 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

パレルモ・マッシモ劇場

「トスカ」

 

【日時】
2017年6月25日(日) 開演 15:00


【会場】
フェスティバルホール (大阪)

 

【キャスト・スタッフ】

指揮:ジャンルカ・マルティネンギ

演出:マリオ・ポンティッジァ

舞台装置・衣装:フランチェスコ・ジート

照明:ブルーノ・チュッリ

 

フローリア・トスカ:アンジェラ・ゲオルギュー
マリオ・カヴァラドッシ:マルチェッロ・ジョルダーニ
スカルピア男爵:セバスティアン・カターナ

チェーザレ・アンジェロッティ:エマヌエーレ・コルダロ

堂守:パオロ・オレッキア

スポレッタ:ジョルジョ・トゥルッコ

シャッローネ:イタロ・プロフェリシェ

看守:コジモ・ディアノ


管弦楽・合唱:パレルモ・マッシモ劇場管弦楽団・合唱団

 

【プログラム】
プッチーニ:歌劇「トスカ」

 

 

 

 

 

パレルモ・マッシモ劇場の、プッチーニのオペラ「トスカ」大阪公演を観に行った。

というよりも、実のところ、私にとっては「アンジェラ・ゲオルギューを聴きに行った」と言っても差し支えない。

以前の記事にも少しだけ書いたことがあるが、私はイタリア・オペラのプリマ・ドンナの中では彼女がとりわけ好きである。

ヴェルディの「椿姫」も素晴らしいし、またプッチーニの「トスカ」で言うと、マリア・カラスがタイトルロールの有名なサバタ/ミラノ・スカラ座盤(NMLApple Music)と並んで、ゲオルギューがタイトルロールのパッパーノ/コヴェントガーデン王立歌劇場盤(DVD、音のみならNML)が私は好きである。

ここでのゲオルギューは、カラスにひけを取らないと思う(同様に、スカルピア役のライモンディはゴッビに、また指揮のパッパーノはサバタに、ひけを取っていないと思う。ただカヴァラドッシ役のアラーニャはディ・ステファノに少し劣るか)。

そんなゲオルギューだが、私は実演を聴いたことはなかった。

それが今回来日し、関西に来てくれ、それも「トスカ」を歌うというのだから、聴きに行かないわけにはいかなかったのだった。

 

いざ聴いてみると、予想以上に素晴らしかった。

彼女ももう50歳を超えており、声は多少の衰えを見せていたとしても仕方ないだろうな、と覚悟して行ったのだが、聴いてみると全く衰えを感じさせない声だった。

昔は、もしかしたらさらに輝かしい声だったのかもしれない。

しかし、現在の彼女の声でも私には十分だった。

カヴァラドッシ役のジョルダーニも、なかなか良い声を出していた。

しかし、彼の場合は強音の箇所でどうしても「叫ぶ」ような、若干余裕のない声になる。

彼だけではない。

これまで聴いてきた世界的なプリマ・ドンナやヴァーグナー・ソプラノたちだって、同じだった。

しかし、ゲオルギューは違った。

彼女は無理して声を出そうとする感じが全くなく、常に余裕を保っている。

だから、決して「ごつい」感じにならず、可憐なローマの一女性フローリア・トスカとして自然に受け入れられるのである。

それでいて、彼女の声は他の人の声やオーケストラに埋もれてしまうことがなく、きわめて美しく、ひときわよく通る声として聴こえてくる。

そんな彼女が、クライマックスである第2幕のスカルピアとの二重唱で絶叫すると、絶叫でありながら全く荒れることのない、最高のフォルテ(強音)が聴かれた。

そして、有名な「歌に生き、恋に生き」。

その美しさといったら、いったい何と表現すればいいのか、このアリアでこれほどの歌唱を聴くことは、もう今後一生ないだろうな、と確信するほどのものだった。

 

他の歌手について。

カヴァラドッシ役のジョルダーニについては、上述の通り。

スカルピア役のカターナは、いまいち存在感が感じられなかった(もっと、ノーブルな極悪人、といった迫力がほしいところ)。

でも、私はゲオルギューが聴けただけでもう十分だった。

マルティネンギ/パレルモ・マッシモ劇場管弦楽団の演奏も、上記パッパーノほどの劇的緊張感や美しい歌謡性を感じるところまではいかなかったものの、イタリアらしい明るい音色を生かした美しい演奏を聴かせてくれたし(特に弦楽器の音色が良かった)、全体的な完成度も決して低くなかった。

まぁ、私が、例えば一昨日のストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」ほどには、「トスカ」の演奏にこだわりを求めていないという面もあるかもしれないけれど。

 

それにしても、去年聴いた「蝶々夫人」といい(そのときの記事はこちら)、今回の「トスカ」といい、プッチーニのオペラはいやというほど筋が分かりきっていても、やはり涙なしには観ることができない。

プッチーニの音楽の不思議な力を、今回もまた実感することとなったのだった。

 

 


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