第15回ルービンシュタイン国際ピアノコンクール 1次予選 第3日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

いま、イスラエルでは、第15回ルービンシュタイン国際ピアノコンクールが開催されている。

4月29日は、1次予選の第3日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

 

 

GIGANI Irma (Georgia Age: 20)


Haydn:Sonata in C Minor, Hob. XVI: 20
 - Moderato
 - Andante con moto
 - Allegro
Chopin:Barcarolle Op.60
Rachmaninov:Prelude No.4 in D major, Op.23

 

ハイドンは音の粒立ちがとても良い。

ショパンは、センスの良い佳演だが、さらっと弾き過ぎゆく感じであり、ややぶっきらぼうな箇所もあり。

ラフマニノフは、こちらもセンスがあって良いのだが、盛り上がったところでのフォルテがやや硬め。

 

 

KONG Qi (China Age: 23)

 

Mozart:Fantasia in D Minor, K. 397
Chopin:Polonaise-Fantaisie Op. 61
Ravel:Gaspard de la Nuit
 - Ondine
 - Le gibet
 - Scarbo

 

これは素晴らしい。

モーツァルトは、細部まで繊細に表現した誠実な演奏で、幻想曲らしい味わいもあり、好感が持てる。

ショパンも、じっくりと情感を出すタイプの演奏。

決して荒ぶることのない落ち着いた演奏で、最後のクライマックスでも叫び過ぎない、しかししっかりと充実した和音が聴かれる。

ラヴェルも、なかなか良い。

「オンディーヌ」は、弱音のコントロールが細やかになされた佳演である。

メロディがきれいに際立たされている。

イン・テンポにこだわっているのか、ややカクカクした感じになってしまっているけれども(2015年浜コンの天川真奈ほど自然な呼吸とはなっていない)。

「絞首台」はじっくりと緩徐なテンポで、雰囲気をよく出している。

「スカルボ」は特に出来が良く、かなりのテンポで攻めており、かつ技巧的にも余裕があり(連打もきれいに決まっている)、ダイナミックで音楽的で、大変に鮮やかな名演である。

 

 

GEWIRTZMAN Tomer (Israel Age: 27)

F. Couperin:Passacaglia in B Minor from Pièces de Clavecín, Ordre VIII
Liszt:Sonata in B Minor, S. 178

 

クープランは聴き慣れない曲だが、センスの良い感じの演奏。

リストは、充実した迫力のある打鍵が魅力。

テクニックも冴えている。

ただ、ところどころやや荒っぽい音になってしまっているところもないではないか。

第2主題の歌わせ方も、繊細で良いのだが、音色自体はやや詰まったようなところがあるか。

そうはいっても、この迫力には大いに圧倒される。

 

 

YANG Xiaohui (China Age: 25)


Mozart:Sonata in F Major, K. 280
 - Allegro assai
 - Adagio
 - Presto)
Bartók:Improvisations on Hungarian Peasant Songs, Op.20
 I. Molto moderato
 II. Molto capriccioso
 III. Lento, rubato
 IV. Allegretto scherzando
 V. Allegro molto
 VI. Allegro moderato, molto capriccioso
 VII. Sostenuto, rubato
 VIII. Allegro
Ravel:Sonatine
 - Modéré
 - Mouvement de menuet
 - Animé
Chopin:Barcarolle in F-sharp Major, Op. 60

 

これも素晴らしい。

モーツァルトは伸びやかで美しい演奏。

表情付けも細かい。

バルトークも、ダイナミックさと緻密なコントロールとのバランスが良い。

ラヴェルも明晰な好演。

線がやや細めで硬質だが、繊細な音。

ショパンも、本日一人目のGiganiの同曲演奏に聴かれたようなぶっきらぼうな感じは全くなく、丁寧な演奏である。

歌心にも欠けていない。

 

 

WEI Yun (China Age: 22)

 

Bach:Italian Concerto, BWV 971
 - (Allegro)
 - Andante
 - Presto
Schumann:Carnaval, Op. 9

 

バッハは、流麗かつ自然な演奏。

ただし、フォルテが少し硬めか。

シューマンも、無理のない端正な演奏で、それでいて音楽的な味わいも随所に感じられる。

際立って華麗な技巧を持つ、というわけではないかもしれないが、急速なパッセージは滑らかだし、和音は輝かしい(フォルテはやはりときにやや硬めだが)。

この曲は、2009年浜コンのキム・ヒョンジョンの演奏が好きだが、それに匹敵するかもしれない。

 

 

YONTOV Yevgeny (Israel Age: 28)


Haydn:Sonata in A-flat Major, Hob. XVI:46
 - Allegro moderato
 - Adagio 
 - Finale. Presto
Debussy:Etudes, Book 1
 I. Pour les cinq doigts 
 II. Pour les tierces
 III. Pour les quartes
 IV. Pour les sixtes
 V. Pour les octaves
 VI. Pour les huit doigts

 

こちらも端正なタイプの素晴らしいピアニスト。

ハイドンは第1日のPoonと同じソナタで、Poonもうまかったが、こちらも劣らずうまい。

そして、ドビュッシー。

大変に鮮やかである。

情感を込めすぎず、淡々としており、されど美しい。

ドビュッシー(の特に後期の作品)によく合っている。

ときにドビュッシーにしてはやや力強すぎるような気もするが、まぁ許容範囲だろう。

連続する各種和音も、「八本の指のための」も、大変滑らか。

緻密な演奏である。

アンコールあり(ショパンのエチュード op.10-8)。

これも余裕の感じられる名演。

 

 

SKORKA Rafael (Israel Age: 28)

 

Liszt:Ballade No. 2 in B Minor, S. 171
Schubert/Liszt:Three Songs:
 - Aufenthalt, S. 560/3
 - Gretchen am Spinnrade, S. 558/8
 - Ständchen von Shakespeare, S. 558/9
K. Leighton:Fantasia Contrappuntistica (Homage to Bach), Op. 24

 

リストは、ロマン性の感じられる演奏で、力強さも十分にあり、なかなか良い。

シューベルト/リストも、歌心と明晰性が両立していて、なかなか良い。

フォルテでは若干音が硬めのことがあるけれども。

ケネス・レイトンは、おそらく初めて聴いた曲であり、あまりどうこう言うことはできないけれども、これまた雰囲気のある演奏だと思った。

 

 

ZHDANOV Denis (Ukraine Age: 28)

 

W. Byrd:Have with Yow to Walsingame
 (My Lady Nevells Booke & Fitzwilliam Virginal Book)
Beethoven:Sonata No. 5 in C Minor, Op. 10, No. 1
 - Allegro molto e con brio
 - Adagio molto
 - Finale: Prestissimo
Ligeti:Étude No. 4 "Fanfares" (Book II)
Ligeti:Étude No. 16 "Pour Irina" (Book III)

 

素晴らしい!

バードは、粒立ちの良いタッチといい、バロックらしい控えめな味付けといい、大変良い。

ベートーヴェンも美しい情熱が古典派らしい節度をもって表現されており、ベートーヴェンらしい力感もあり、素晴らしい。

第3楽章など、かなりの高速テンポなのに、全く破綻のない演奏となっている。

リゲティもきわめて精密な演奏。

余裕のあるタッチコントロール、クライマックスでも決して荒れない充実した打鍵。

 

 

そんなわけで、第3日はKong、Yang、Yontov、Zhdanovと、特に気に入ったピアニストの多い日だった。

その他、Gewirtzman、Weiあたりも良かった。

 

 

そんなこんなで、1次予選は第3日まで終わった。

残すは最終日、あと6人のみ。

2次予選へ進めるのは30人中16人、約半分のようである。

第1~3日の出場者のうち、ちょうど半分が2次に進むと仮定すると、24人中12人が進めることになる。

1次予選第3日までの時点で、私がとりわけ素晴らしい演奏と感じたピアニストは、

 

第1日

POON Tiffany (China Age: 20)

CHEN Han (Taiwan Age: 25)

HUANG Ruoyu (China Age: 28)

第2日

なし

第3日

KONG Qi (China Age: 23)

YANG Xiaohui (China Age: 25)

YONTOV Yevgeny (Israel Age: 28)

ZHDANOV Denis (Ukraine Age: 28)

 

であり、彼らにはぜひとも2次予選に進んでほしいものである(この7人はみな優勝候補だと思う)。

となると、上記の仮定に従えばあと5人が2次に進めるということになり、

 

第1日

なし

第2日

PARK Jaehong (South Korea Age: 18)

LIU Xiaoyu (Canada Age: 19)

TREVELYAN Julian (United Kingdom Age: 18)

第3日

GEWIRTZMAN Tomer (Israel Age: 27)

WEI Yun (China Age: 22)

 

あたりのピアニストにできれば進んでほしいと思う。

明日の残り6人の演奏と結果発表が楽しみである。

 

 


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