Phoenix OSAQA 2017 弦楽四重奏公開マスタークラス&レッスン 1日目 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

Phoenix OSAQA 2017
弦楽四重奏公開マスタークラス&レッスン (最終回)
1日目

 

【日時】
2017年3月18日(土) 11:00 開演

 

【会場】

ザ・フェニックスホール (大阪)

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【出演】

講師:

ジャパン・ストリング・クヮルテット(1st Vn 久保陽子、2nd Vn 久合田緑、Va 菅沼準二、Vc 岩崎洸)

 

受講生:

Vierklee Quartet(1st Vn 松田佳奈、2nd Vn 三浦裕梨香、Va 中川芙美、Vc 野村侑加)

Quartet STOVE(1st Vn 農頭奈緒、2nd Vn 久津那綾香、Va 宮崎真理子、Vc 佐藤陽一)

シャルクハフト弦楽四重奏団(1st Vn 向吉彩華、2nd Vn 森侑奈、Va 兼松里衣、Vc 中山夏希)

Sophia Quartet(1st Vn 柏山七海、2nd Vn 小川ソフィ絢子、Va 亀山晴代、Vc 宮田侑)

Aries Quartet(1st Vn 宮田晴奈、2nd Vn 板野有里、Va 佐本博子、Vc 竹中裕深)

 

【プログラム】

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲

第8番 ホ短調 作品59-2 「ラズモフスキー第2番」 (11:00~12:10 Vierklee Quartet)

第4番 ハ短調 作品18-4 (13:10~14:20 Quartet STOVE)

第16番 へ長調 作品135 (14:40~15:50 シャルクハフト弦楽四重奏団)

第7番 へ長調 作品59-1 「ラズモフスキー第1番」 (16:10~17:20 Sophia Quartet)

第3番 ニ長調 作品18-3 (17:40~18:50 Aries Quartet)

 

 

 

 

 

弦楽四重奏のマスタークラスをやっているというので、聴講しに行ってみた。

このような経験は初めてで、大変面白かった。

曲は、全てベートーヴェンの弦楽四重奏曲。

最初は、Vierklee Quartetによる、第8番。

講師は、久合田/岩崎先生。

私は途中から行ったので、第2楽章のレッスンの途中からしか聴けなかったが、今日聴いた中では一番好きな四重奏団だった。

皆の音程がしっかりしていて、レベルが高い。

特に、第1ヴァイオリンの松田さんの、細身でありながらも柔らかさもある音が印象的だった(第4楽章冒頭の主題など、鮮やかだった)。

素晴らしい四重奏団だと思う。

やや優等生的というか、おとなしいようなところもあったが、レッスンでは第3楽章の各小節の終わりにおける弓のアップ/ダウンや、第4楽章冒頭の第2ヴァイオリン/ヴィオラ/チェロの音の刻み方などを指摘され、ベートーヴェンらしい躍動感がよく出るようになった。

 

2曲目は、Quartet STOVEによる、第4番。

講師は、久保/菅沼先生。

先ほどのVierklee Quartetに比べると、ベートーヴェンらしい情熱がよく出ていた反面、音程などの安定性はやや劣るかな、という印象。

第2ヴァイオリンの久津那さんは、そんな中でも技術的にとても安定していたが、それでも和音を鳴らすにあたって、久保先生が彼女の右手を持って一緒に弾くと、全く異なる充実した大きな音量の和音が出るのには、驚いた。

弓を「下から入って上へ行くように」とか、右腕の脇を閉めてとか、色々言われていたが、そのコツ、秘訣は私にはよく分からなかった。

ヴァイオリンの弓使いも奥が深い、と感じた。

その他、ピアノとピアニッシモ、フォルテとフォルティッシモを弾き分けるとか、スフォルツァンドはその音のみを大きくするとか、弓のアップ/ダウンとかいったことを指摘されていた。

 

3曲目は、シャルクハフト弦楽四重奏団による、第16番。

講師は、久合田/岩崎先生。

これは、私は第1、2楽章の演奏のみ聴き、指導は聞かなかった。

よく安定した演奏だった。

ヴァイオリンは少し詰まったような音色がやや気になったが、ヴィオラとチェロはとても良かった。

特にヴィオラの兼松さんは温かみのある美しい音色で、音程も安定しており、とても良いと感じた。

それにしてもこの第16番、前半の2楽章だけでもやはり名曲である。

生で聴けて嬉しかった。

第2楽章のトリオの最後の部分、第1ヴァイオリンの大きく跳躍する高らかなメロディは聴き手にとっては聴きどころだが、弾く方にしてみればやはり難しそうだと感じた。

 

4曲目は、Sophia Quartetによる、第7番。

講師は、久保/菅沼先生。

ただし、私はこの間、大阪フィルの定期演奏会に行っていたため、聴くことができなかった。

 

5曲目は、Aries Quartetによる、第3番。

講師は、久合田/岩崎先生。

第1ヴァイオリンの宮田さんは、私の好きな細身の音で、なかなか良かった(音程がやや不安定なのが惜しかったが)。

チェロの竹中さんも良いと感じた。

第1楽章の冒頭、第1ヴァイオリンの2つの音で曲は始まるのだが、これをクレッシェンドして膨らませるか、それともさらっとまっすぐ弾くかで、早くも最初から講師の2人の先生の間で意見が違った(前者が岩崎先生、後者が久合田先生)。

また、チェロの刻みの部分でも、タメを作って膨らませるか、それともさらっとイン・テンポで弾くかで、また2人の先生の間で意見が異なった(前者が久合田先生、後者が岩崎先生)。

先生によって意見が異なるというのは、なかなか面白い。

それも、あるところでさらっと弾くよう言っていた先生が、別のところでは膨らませるよう言っており、常にさらっと弾くよう言っているわけではない(また常に膨らませるよう言っているわけでもない)のが、また面白い。

楽譜には、こういったことまでは書いていないのである。

教わった後には、どちらの弾き方にするか、奏者たちは「自分たちの趣味」で考えなければならない。

「楽譜に忠実に」とよく言うが、忠実に演奏していても何種類もの演奏ができあがるのは、このためである。

他には、第1楽章の第2主題に入る部分で、しっかり4人の息を合わせることや、焦って弾かずにしっかりリズムを数えて弾くこと、第2楽章の主題(最初は第2ヴァイオリンが、次は第1ヴァイオリンが弾く)はあまり大きくクレッシェンドせずにベートーヴェンらしく内省的に弾くこと、第3楽章ではフェルマータの後の主題繰り返しをできるだけピアニッシモにしてその前の部分と対比を出すこと、短調のトリオに入るところでも4人の息をぴったり合わせること、などを指摘されていた。

無窮動的な第4楽章では、つい走ってしまいやすいため、機械的にイン・テンポになるようにメトロノームでしっかり練習するよう指摘されていた。

主題のタララ、タララという3つの音のフレーズがよく分かるようにしっかり分けて弾くよう言う久合田先生と、それでは無窮動感が出なくなってしまうのであまり分けなくていいと言う岩崎先生とでまたもや意見が分かれていて、最後まで面白かった。

日本人がよくやるように一方の意見に合わせるのではなく、自分の考えをしっかり述べるというのは、好ましいことだと感じた。

奏者の皆さんも、今日教わったことをそのまま受け入れるのではなく、批判的に吟味した上で消化吸収し、自分たちの解釈を作り上げていってほしいものである(私が勝手にこのようなところでこのような希望を述べなくても、彼らは自然にそうすると思うけれども)。

 

弦楽四重奏のマスタークラス、大変面白く、とても勉強になったが、残念ながら今年で最終回のようである。

同様のマスタークラスが今後開かれないものだろうか。

 

最後に、ザ・フェニックスホールのサイトに掲載されている、今回の参加団体(2日目の団体も含めて)の紹介文を、以下に引用させていただく(引用元はこちらこちら)。

 

Vierklee Quartet(フィアクレー カルテット)
1stVn/松田佳奈 2ndVn/三浦裕梨香 Va/中川芙美 Vc/野村侑加
2016年5月に結成。松田は大阪音楽大学大学院修了。三浦は大阪音楽大学大学院2回生。中川は洗足学園音楽大学アンサンブルアカデミー修了。野村は徳島文理大学専攻科修了、瀬戸フィルハーモニー交響楽団所属。

 

Quartet STOVE(カルテット ストーブ)
1stVn/農頭奈緒 2ndVn/久津那綾香 Va/宮崎真理子 Vc/佐藤陽一
2011年にしまなみ音楽祭で出会い、共に室内楽の研鑽を積んできた久津那、宮崎、佐藤の3人に農頭が加わり、2015年にPhoenix OSAQA 参加を目指し結成。Phoenix OSAQA2016修了。2016年夏には、それぞれの活動拠点である兵庫、岡山、広島でツアー公演を行う。

 

シャルクハフト弦楽四重奏団
1stVn/向吉彩華 2ndVn/森 侑奈 Va/兼松里衣 Vc/中山夏希
1st violin向吉彩華、愛知県立芸術大学大学院博士前期課程1年。2nd violin森侑奈、同大学大学院博士前期課程1年。viola 兼松里衣、同大学研究科ヴァイオリン専攻1年。cello 中山夏希、同大学3年の4人によるメンバーで2016年7月結成。
 
Sophia Quartet(ソフィア カルテット)
1stVn/柏山七海 2ndVn/小川ソフィ絢子 Va/亀山晴代 Vc/宮田 侑
2015年結成。メンバーはそれぞれブリュッセル王立音楽院、京都市立芸術大学、相愛大学を卒業。
phoenix OSAQA 2016受講。第3回宗次ホール弦楽四重奏コンクールにおいてマスタークラス受講。同コンクール宗次賞受賞。

 

Aries Quartet(アリエス クヮルテット)
1stVn/宮田晴奈 2ndVn/板野有里 Va/佐本博子 Vc/竹中裕深
2016年4月結成。トート音楽院で久合田緑、林俊昭両氏による弦楽アンサンブルセミナー2016受講をきっかけに東京、兵庫、滋賀、福岡から集まった4人で、Phoenix OSAQA 2017受講に向け更に勉強中。

 

イラーレ弦楽四重奏団
1stVn/米井遥香 2ndVn/小阪真理奈 Va/坪之内裕太 Vc/西村まなみ
2015年4月に結成。同年6月に支援学校で演奏会を行う。その後メンバーそれぞれに活動してきたが、PhoenixOSAQA2017の受講を目的に再結成した。メンバー全員が京都市立芸術大学在学生。これまでに上森祥平氏に師事。

 

Quartet Gloriosa(カルテット グロリオーサ)
1stVn/長谷部りさ 2ndVn/三浦可菜 Va/野口真由 Vc/髙野真穂
愛知県立芸術大学音楽学部の2年生と研究生によって2016年春に結成。古典の曲を中心に学んでいる。カルテット名のQuartet Gloriosaとは、花言葉で「栄光に輝く未来」という意味があり命名した。これまでに百武由紀、桐山建志の各氏に師事。

 

Charlotte弦楽四重奏団(シャルロッテ)
1stVn/山森温菜 2ndVn/下宮早葵 Va/木田奏帆 Vc/塚本ひらき
幼少より京都市ジュニアオーケストラ、さきらジュニアオーケストラをはじめとしたオーケストラで学んでいた4人が、室内楽を勉強したいという強い意志のもと2016年6月結成。メンバー全員が京都市立芸術大学1回生で、今後コンクールやコンサート、セミナーなどに意欲的に参加し研鑽を積んでいく予定である。
 
Quartetto Albicocca(カルテット アルビコッカ)
1stVn/ 三上さくら 2ndVn/前山 杏 Va/髙麗みなみ Vc/鷲見 敏
PhoenixOSAQA2017の受講を目的に2016年秋に結成。メンバーは4人とも京都市立芸術大学音楽学部に在学中。前山は1年、三上は2年、髙麗は3年、鷲見は4年。それぞれ関西を中心にソロ演奏や室内楽、オーケストラで活動を行っている。

 

 


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