大阪音楽大学 2016年度 ピアノ演奏家特別コース修了演奏会 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

大阪音楽大学 2016年度 ピアノ演奏家特別コース修了演奏会

 

【日時】

2017年2月3日(金) 開演 16:00

 

【会場】

ザ・カレッジ・オペラハウス (大阪)

 

【演奏】

ピアノ:

青山 理紗子 (1)

筌場 美結 (2)

越智 由稀 (3)

造座 千晴 (4)

藤原 麻里菜 (5)

水谷 知夏 (6)

 

【プログラム】

ラフマニノフ:10の前奏曲 Op.23 より 第2, 4, 5, 9, 10番 (1)

ショパン:舟歌 嬰へ長調 Op.60 (1)

 

シューマン:幻想曲 ハ長調 Op.17 (2)

 

ドビュッシー:前奏曲集 第2巻 より 第4~12番 (3)

 

ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」 (4)

 

リスト:巡礼の年 第1年「スイス」 より 第6曲 オーベルマンの谷 (5)

リスト:コンソレーション 第3番 変ニ長調 (5)

リスト:ハンガリー狂詩曲 第12番 嬰ハ短調 (5)

 

メンデルスゾーン:幻想曲 嬰へ短調 Op.28(スコットランド風ソナタ) (6)

メンデルスゾーン:舟歌 イ長調 (6)

メンデルスゾーン:厳格な変奏曲 ニ短調 Op.54 (6)

 

 

 

 

 

今日は、大阪音大のピアノ演奏家特別コースの修了演奏会に行ってみた。

遅れていったので、最後の2人(藤原麻里菜、水谷知夏)しか聴くことができなかったけれども。

 

オール・リスト・プログラムの藤原さんは、なかなかに味のある選曲で、こだわりを感じた。

オーベルマンの谷は思索的な曲、コンソレーションはノクターンのような耽美的な曲、そしてハンガリー狂詩曲は華やかでアクロバティックな曲。

それぞれ全く違った性格を持った曲だが、いずれもリストの曲に特有の性質であり、リストの多様性のよく分かるプログラミングだった。

演奏も、よく作り込んである印象。

それぞれの曲の特質がよく表現されており、またタッチもくっきりしていて、響きも明瞭だった。

音色も、フォルテ(強音)で硬くなることはあったが、全体的には概ね輝きのある良い音が鳴っていた。

真面目な取り組みがよく分かる好演だったが、さらに「遊び」というか、余裕のようなものが感じられる演奏になったらより良いかもしれない。

例えばコンソレーションでは、もっとテンポを揺らすなどして夢見るような憧れの表現を強調してもいいかもしれないし、ハンガリー狂詩曲では大見得を切って盛り上げてもいいのかもしれない。

ただ、そうしないところに彼女の持ち味があるともいえるだろう。

 

オール・メンデルスゾーン・プログラムの水谷さんは、対照的に、解釈云々よりも感性を感じさせる演奏だった。

音にも余裕があって、がんばって真面目に考えて解釈した、というよりは、センス重視で弾いているような印象。

もちろん、実際には彼女だって同じように真面目に解釈しているのだろうけれども(プログラムの彼女自身による記述によると、書かれた年代順に並べて、メンデルスゾーンの25歳~32歳の書法の変遷を表現したかったとのことであり、なかなかのこだわりである)。

スコットランド風ソナタは、クレア・フアンチのあまりにもうまい演奏(クライバーンコンクールの予選)に慣れてしまっているため、やや分が悪いが、それでも第1楽章など曲の雰囲気がよく出ており、色気のようなものさえ感じさせる。

そのぶん、パッセージの細部がやや不明瞭というか、弾き飛ばすような感じになることがみられたけれども(第2楽章のターン風の五連の装飾音型や、第3楽章の無窮動風の急速なパッセージなど)。

「厳格な変奏曲」は、その名の通り、やや硬い、角ばったような形式・曲調で書かれているけれども、彼女が弾くと、先ほどの藤原さんの弾いたリストのハンガリー狂詩曲よりも、よっぽどラプソディックで情熱的な曲に聴こえてくるのが、面白い。

第10変奏のフガートなど、各声部もう少し歌ってほしいところだが、次の第11変奏など、なかなかに美しい歌を聴かせてくれた。

また、第17変奏からコーダにかけての畳みかけるような盛り上がりは、情熱的で聴きごたえがあった。

 

それにしても、リストとメンデルスゾーン、同じような年代の生まれで、ライプツィヒとワイマール、それぞれの指揮者をしていたという点についても似ており、同じような境遇であるにもかかわらず、その音楽はなんと違うことだろう!

あくまで「型」ならではの美しさを表現するメンデルスゾーンと、「型」を破ろう、壊そうと模索するリスト。

全く性質の違う2人だが、ともに音楽史において、なくてはならない存在である。

このように、一作曲家にこだわったプログラムを組む、というのは、通常のリサイタルやコンクールではなかなか聴くことのできない、修了演奏会のような機会ならではの面白い試みだと思った。

 

 


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