京都市交響楽団 西本智実 ヴェルディ レクイエム ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

西本智実指揮 & 京都市交響楽団 ヴェルディ・レクイエム


【日時】

2016年7月17日(日) 開演時間 15:00


【会場】

ロームシアター京都 メインホール


【演奏】

ソプラノ:石橋栄実

メゾ・ソプラノ:福原寿美枝

テノール:小餅谷哲男

バス・バリトン:三原 剛

指揮:西本智実

管弦楽:京都市交響楽団

合唱:京都ミューズ・ヴェルディ・レクイエム合唱団2016

(合唱指導:大谷圭介)


【プログラム】

ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲

ヴェルディ:レクイエム






西本智実のヴェルレクを聴くのは、今回で2回目である。

しかし、前回は夜勤明けで途中爆睡してしまったので、今回が初めてといって良いかもしれない。


最初は、「運命の力」序曲。

先日、ルスティオーニ指揮、兵庫県立芸術文化センター管弦楽団の演奏で同じ曲を聴いたが、そのときはイタリアらしい快活なフォルテを堪能した。

今回は、西本智実らしく少し重さのある演奏で、ドイツ的とまではいわないまでも、重厚な響きになっていたのが面白かった。


メインプロは、ヴェルレクである。

全体的に、緊迫感のある箇所での迫力がすごかった。

有名な「ディエス・イレ」の大きな威力は、オーケストラのみならず合唱団からも強く感じられた。

それに続く「Tuba Mirum」では、観客席の両側に配置された金管もあり、縦の線がずれかけたが、西本智実はしっかりコントロールして再度まとめ上げていく。

その後も音楽は緊張感をもって続いていく。

発声という点においては、子音の扱いを大事にしており、特に弱音部でのくっきりとした子音の発声は、その前後の休符とともに、緊迫感みなぎるものとなっていた。

そして、最後の「リベラ・メ」。

レチタティーヴォ風の部分、合唱とソプラノ・ソロによって冒頭主題が回帰する部分、そしてフガートの部分、いずれも劇的ですばらしかった。

ソプラノ・ソロの石橋栄実の声も申し分なかった。


全体的にとても良い演奏会だった。

ただ、あまりに圧倒的だったモンテカルロ・フィルとのチャイコフスキー交響曲第5番に比べてしまうと、あそこまでの感激はなかった、と告白せざるを得ない。

演奏会後にアバド&ベルリン・フィルのCDで聴き直すと、オーケストラも合唱団もあまりにもうまかった。

アバドの指揮も、冒頭の弱音の繊細さからして、他の数々の演奏を寄せ付けないほどの表現力である。

ただ西本智実も、特に劇的な部分では、(オーケストラや合唱団の実力はともかく)表現力としてはひけを取っていなかったと思う。

それにしても、よく考えてみるとアバド&ベルリン・フィルと比較するなんて、なんとも贅沢な話である。

十分に素敵な演奏会だったということを、最後に付け加えておく。