ヒラリー・ハーン ヴァイオリン・リサイタル | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

ヒラリー・ハーン ヴァイオリン・リサイタル


【日時】
2016年6月12日(日) 14:00


【会場】

横浜みなとみらいホール 大ホール


【出演】

ヒラリー・ハーン (ヴァイオリン)
コリー・スマイス (ピアノ)


【曲目】

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ト長調 K.379

J. S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ長調 BWV1005

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アントン・ガルシア・アブリル:「6つのパルティータ」より

 第2曲「無限の広がり」

 第3曲「愛」

アーロン・コープランド:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ

ティナ ・デヴィッドソン:地上の青い曲線(27のアンコールピースより)


アンコール

佐藤聰明:微風

マーク・アントニー・ターネジ:ヒラリーのホーダウン

マックス・リヒター:慰撫






ヒラリー・ハーンの演奏会を聴いた。

生演奏を聴くのはこれが初めて。

演奏は、とても良かった。

私の好きな五嶋みどりやイブラギモヴァに比べて分厚い音で、充実感があり、それでいて音の分厚さで音程の不安定さをごまかすといったことも全くなく、完璧といって良い。

バッハなど、五嶋みどりもイブラギモヴァも、ピリオド奏法に影響を受けた弾き方をしているが、ハーンの場合はあくまで従来通りの伝統的な奏法である。

このような奏法は最近ではむしろ珍しいかもしれないくらいで、悪く言うと時代遅れということもできるが、この演奏を前にするとそのような感想は吹き飛んでしまう。

ホール中に響き渡る充実した美しい音で、適度な情感にも欠けることなく、モダン奏法(従来通りの奏法)としては最高レベルのものだと感じた。まさに王道の演奏である。


また、今回コープランドのヴァイオリン・ソナタを初めて聴いたが、独特な響き、ただし決して晦渋ではない、耳に心地よい響きが印象的だった。

他の現代曲も、それぞれそれなりに特徴があってなかなか楽しめた。


ピアノのスマイスも、なかなかの実力者という感じがした。

モーツァルトの第1楽章、序奏の繰り返しの部分で、単に装飾をつけるというにとどまらない個性的な変奏が印象的だった。

装飾音が付加されるだけでなく、左手の和声すら変わってしまっており、モーツァルトの当時は決してしなかった類の変奏であろう。

むしろ、この遊び心はジャズの精神というべきか?

ただ、これ以降、特に主部以降は装飾も変奏もほとんどなく、おとなしくしており、ギャップが面白かった。


さすがはヒラリー・ハーン、私は彼女のCDをそれほど多く聴いてこなかったけれども、やはり現代最高のヴァイオリニストの一人と言わねばならないだろう。