つづきから
*
そこには、ものすごくリアルなタッチで描かれた―謎の生物がいた。
謎、としか言えないその生物は、まるでペンギンのオバケ。
もう少し詳しく言うなら、ペンギンの体にアヒルの顔を持った、
アバンギャルドきわまりない外見の生物である。
「知っているだろ?俺のペット、エリザベスだ」と桂くん。
「知ってるけど・・・・・・」
知ってるけど、コメント不能だ。なぜ今、それをノートに描く?
しかも、なぜそんなにリアルなタッチで描く?
あ、今、桂くんちょっとだけ笑った。なぜ笑う?
新八はぎこちなく笑みを返し、桂くんから視線を外した。
桂くんが向かう先は、どんなゴールが待っているのかわからない。
深追いは危険だ。
で、そんな桂くんの席から、一列置いた左の席では、
長谷川泰三くんが真剣な表情でアルバイト情報誌をめくっていた。
サングラスをかけ、顎に髭を残した長谷川くん。
おっさんっぽい外見なのは、事実長谷川くんがおっさんだからだ。
「やっぱ深夜以外で時給千円以上のバイトってのはねーもんだな」
なんて呟きがきこえてくる。いやいや長谷川くん。
朝から流血沙汰も困るけど、そのブルーなノリもどうかと思いますよ。
でもって、その長谷川くんのいる列の一番後ろの席では、
一人の男子生徒が黙々と編み物に没頭していた。
わあ、朝からほのぼのね、なんて言ってる場合ではない。
この生徒、名前をヘドロというのだが、
端的に言わせてもらうと顔がメッチャ恐い。
鎌倉時代の仏教彫刻を思わせる雄々しき顔貌―と言うと格調高そうだが、
有り体に言うなら鬼みたいでおっかない。
ライオンのようなたてがみが後頭部から首の周りを覆い、
側頭部からは水牛のように湾曲した角が一対生えている。
そんな御仁がせっせと編み物に精を出しているのだから、
本年度ベストミスマッチ大賞はこの人に決定、てなものである。
ただ、ヘドロくん本人の名誉のために書いておくと、
この人、すごく優しい方である。
花や動物を愛し、争いごとは好まない。あ、今、目が合った。
えーと、すいません。やっぱり恐いです・・・・・・。
と、まあ、こんな具合にZ組というところはキャラの宝庫みたいな場所でもある。
今紹介した以外にも強烈な輩がわんさといるし、
ほんともう、ここまで来ると学び舎っていうよりアミューズメントパークだよね、
という感じすらする。
今日も一日。なにごともなく過ごせればいいけど・・・・・・と新八が
そっと眼鏡を押し上げたときだ。
神楽ちゃんの大音声が教室に響いた。―
つづく
では~