早川書房のオリエント急行の殺人レストランに行ってきました。
12月末の金曜日、クリスマス直前でリア充カッポーだらけだったらどうしよう!!とドキドキしながら店内を見たらそんなことはまったくなく、中の人らしきグループが盛り上がる横で静かにコラボ料理を堪能してきました。
料理はヒゲのパンケーキと

灰色の脳細胞のポークシチュー。美味しいです。
特にポークシチューの脳みそ(だっけかな)はポテトサラダを揚げてあるのが面白いです。
次のクリスティイベントはいつなんだろう読書メモ。
『薫大将と匂の宮』岡田鯱彦
有栖川有栖の『ミステリ国の人々』で興味を持ったのがこの作品。探すのに苦労しました。宇治十帖の登場人物が実際におり、連続殺人事件が起き、紫式部が謎解きをするというフィクション中のフィクションで、発想が面白い。さらに地の文も会話文もまさに古典の現代語訳といった感じでそこがまた良い。もちろんロジック物ではないけれど、ある意味古典なミステリを楽しめました。当時の紫式部には口に出せないトリックが良し悪しです。
『空飛ぶ馬』北村薫
日常系の謎解きですが、好きになれませんでした。登場人物たちにあまり現実味が感じられず、もやでできた人間のようでした。主人公は下半身をパジャマに着替えるだけでも乙女にあるまじきとか人には見せられない姿などと言っており、どこの幻想世界だよと思いました。衒学的で鼻につきますが、これは私が文学や落語に疎いからかもしれません。『赤頭巾』はなにがいけないのでしょう。何年か後、心のゆとりがありときに再読するのもいいかもしれないと思いました。
『狩人の悪夢』有栖川有栖
クローズドサークル、ガチガチのロジック、鬼のように追い詰めていく探偵、こういう小説を読みたい!を叶えてくれるのが有栖川有栖だと思います。本格と騙されてがっかりする本はもう嫌です。いい意味で抜けのある、軽いユーモアと読みやすい文章。クセはないのに文体でその人らしさが分かるのは、読書の楽しみのひとつでもあると思います。今回は火村の夢の話にアリスが結構突っ込んでて、私のほうが焦ってしまいました。
『涙香迷宮』竹本健治
このミステリーがすごい。作者はとんでもなく暇だったのだろうかと悲しくなったほどすごい。どんな謎を追っていてどういう推理をしてどういうラストだったのか覚えてないくらいにすごい。この作品のなにがすごいって(作者の駒である)探偵がすごくてみんなが最初から最後までさすが!天才!と探偵(=を動かす作者)をほめちぎりまくっているのがすごい。神の駒なるビブリア古書堂みたいなすごさ。殺人の謎解きなんてどうでもいいですみたいなすごさ。探偵の「調べたいことがあったら他人のスマホを借りる」という清々しいほどの図々しさがすごい。なんだそのこだわり。買えよ。そしてスマホを持っていないのにシャットダウンはできる点がさすが探偵、すごい。
『金雀枝荘の殺人』今邑彩
館物で童謡に絡んだ見立て殺人があり幻想もあり、合理的な謎解きがされていて、推理小説好きの好みが詰まった理想的な推理小説です。ただ少しおとなしいかなとは思いました。やはり見取り図や家系図がある作品はテンションが上がりますね。最後まで読んでから序章を読むと、ああ年月とは人を大人にさせるものなのだな、と妙な感心をしてしまいました。
『闇の喇叭』有栖川有栖
ソラシリーズ、初めて読みました。社会派とはまた違うものの、国際情勢や権力に物申す作品を書くとは意外。かなり攻撃的だと思いました。パラレルワールド内の法律や規則が文中で説明されていくので、なかなか慣れません。父と娘の探偵譚がメインになりすぎず、ターゲットにしたヤングアダルトにも入りやすいものになっていて読みやすかったです。でも最後がやや駆け足だったかな。
『厭魅の如き憑くもの』三津田信三
横溝世界のようなというにはあまりに非現実的なのでパラレルワールドとして読むのがいいのかもしれない。理屈、合理性では語れないなにかがその場を支配していて、そこに入れないと面白く感じられない。憑き物、憑き物筋という概念に疎かったのが一因だと思うのですが、カカシ様はこわいものであるという理屈がなかなかなじめませんでした。私の実家の裏にも禁忌の場所があり、でも奉って必要以上に恐れるものではないと言われてきていたので、そこまで無条件に人に憑いて呪うものがいるのだろうかと悩んでしまいました。前半民俗学の話題が多く出てきて、もう少し読みやすいと世界に入りやすかったかなと思いました。
『美濃牛』殊能将之
文庫700ページ超え。たしかに面白い。人にもおすすめしたい。でもなんとなく冗長。原作汚しのような本歌取りやインスパイアがある中で、この横溝オマージュはとても素晴らしい。「岡山県に獄門島が存在しないように、岐阜県に暮枝村は存在しない」という巻頭の文章が心わしづかみです。でもわらべ歌が残る僻村で連続殺人が起きるのならもっとおどろおどろしくあってもいい。もっと戦慄的で美しい見立て殺人をしてほしい。その点では読みやすいとも言えます。この作品を読んで、『獄門島』の「鶯の身をさかさまに初音かな」はとても美しいのだと改めて感じました。俳句は俳句だけどいきなり出てくるのはどうかと思う。でも面白い。正統派なだけあって『ハサミ男』よりも好きです。石動は「そこじゃない」というところを長々しゃべるところやくすくす笑いが妙に同僚にそっくりでどうも気に食わない。
『黒い仏』殊能将之
裏表紙の解説にある通りまさに賛否両論、本格推理至上主義者が読んだら引きちぎりそうな作品でした。『美濃牛』のときもいい意味で若干崩れていると感じましたが、これはこれで好きです。「悪ノリしてるの分かってね」と作者に言われているような気がします。本格ミステリとしてちゃんと謎解きをしている上で失笑されるかわいそうな探偵、役得な気がします。『ハサミ男』が自分には合わなかったので敬遠していましたが、この作者をまた読んでみてよかったです。
『密室キングダム』柄刀一
文章が個人ブログかと思うほどに読みづらいです。擬音語や形容詞の使い方がこの作品にはそぐわない(よりバカミスぽいものなら似合いそうだ)し、二度三度と同じ内容が出てきて読み疲れてしまいます。内容は、古今東西推理小説家がひねくりだしてきた密室トリックが5つもと驚かされます。解明するためにほかの案をこれでもかとつぶしていくさまはすさまじいものがあります。また、密室が推理を誘導させるというアイディアとその説明はとても素晴らしいと思いました。伏線回収も綺麗で分かりやすいです。祖母が認知症を患っていたため、後半のあるトリックは予想できましたが、本格推理小説を標榜するならぎりぎりアンフェアではないだろうかと思いました。冒頭に登場人物一覧がないと、後半で突然の人物出現があるに違いないと穿った見方をするようになってきました。
『長い廊下がある家』有栖川有栖
やばい、ぜんっぜん分からない。数学苦手とはいえ確率は勉強した気もするのに(はるか過去の彼方)、ん?んん~(・ω・;)?えっ?です。
『鏡の中は日曜日』殊能将之
文章がうまい。この著者は普通の推理小説を書く気はないらしい。これを踏まえてもう一度『ハサミ男』を読むのもいいかもしれないと思いました。作中、推理小説の館といえば建物全体が斜めになっているとか水車がついているというような表記があって、ふふってなりました。1章からこれは明らかにトリックだろうなと思いつつ読み進めていましたが、アレと被っているのは少し残念。
同時収録の『樒 / 榁』は後日譚、もしくはファンサービスというくらいでそんなによいトリックでもないような気がします。むしろタイトルのほうがうまいと思います。登場人物の綾子が怖すぎて、私なら離婚するレベルで怖い。こういう女性って多いのでしょうね。私もそうなのかな、同じ女性として男性に申し訳ないと思いました。
『キマイラの新しい城』殊能将之
アレがアレなんてやはりどう考えてもなかったと思うのですがうーん。建物の構造ちょっとわかりにくいです。このシリーズはいろいろな点でアンチミステリを通していて、石動シリーズだから許されたのかもしれないと思いました。とはいえしっかり推理小説として形はあるのでそれなりに満足ではあるのですが。