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すみません、今回の記事は一般向けの内容ではありません。同様の静電気トラブルで困っていらっしゃる方の何か参考になれば…という程度の内容です。
電動式ローリフトは、工場や倉庫でパレットに載った製品や原材料の運搬するためのマテハン機器です。手動式のパレットトラックと比べて労務負荷を軽減できる便利な装置です。
表題に書いたトヨタの電動式ローリフトはこれで、おそらく杉国工業のOEM品だと思われます。このローリフトを職場で新規に購入したのですが、納車直後から考えられない頻度で静電気ショックに見舞われるのです。湿度の高い雨の日でもまったく関係ないことから、衣服の摩擦など人間側で発生している静電気ではないと考えました。以前から同型のローリフトを工場内で使っていますが、そちらは問題ありません。メーカーの方曰く、これまで同種のトラブルは聞いたことがないとのこと。個体差なのかもしれませんが、ハズレを引いてしまったのでしょう。この種の装置は受注生産品なので、交換するにしても時間がかかります。せっかくの便利な装置を、怖がって誰も使ってくれないという本末転倒なありさまです。たかが静電気、されど静電気、個人的な興味もあって調べながら対策を講じてみました。
まず、具体的な症状ですが、両手で握るハンドルグリップの小指の脇にスパークが飛びます。最初にその訴えを聞いたときは「いくらなんでもそれは大げさだろう?」と思いましたが、実際に私も走行させてみたところ、頻繁にパチパチ、そして減速時にピリピリと連続して電気ショックを感じることもあります。パチッはともかく、ピリピリ連続するのはもしかして漏電?とも思いましたが、内部で直列バッテリーの24Vを昇圧させている回路はなさそうなので漏電は考えられません。しかし、何かの罰ゲームかと思うぐらいの結構なショックだったりするので、思わず「いてぇっ!」と叫んでしまったりもします。新車ということもありハンドルグリップはきっちり塗装されているのですが、目を凝らしてよく見ると溶接部のわずかな凹部分に塗装されていない箇所があり、この部分と小指の間にスパークが飛んでいるようです。
考えられる対策のひとつは、グリップ部分の塗装をヤスリで削ってベースのスチールを露出させる方法です。こうすることで、ハンドルグリップを握っている間はステアリングユニットと人体が電気的につながった状態=同電位になるので静電気を感じることがなくなるはずです。このとき素手でハンドルグリップを握る必要があります(手袋や軍手はNG)。冬場の車の乗り降りで静電気ショックを受けることがありますが、ドアを開けたらドアストライカーに触れたまま乗り降りすると静電気ショックを感じることは無くなります。これと同じ理屈です。ただ、塗装を落として直に握るということは、錆びるのは時間の問題でしょうし、その錆びた部分を素手で握らなくてはならないのも考え物です。また、真冬に冷え切ったスチールのハンドルを素手で握るのも無理があります。
静電気にびくびくしながらしばらく取り回しながら観察してみると、減速時、つまりブレーキがかかるときに静電気ショックがくることがわかりました。ブレーキは摩擦力で動きを止めるものなので、静電気が発生してもおかしくありません。この装置はアクセルスイッチを離すと自動的にクラッチブレーキが効く仕組みで(惰性走行はできない)、定速で走らせているときは無意識のうちに小刻みにアクセルのオン・オフを切り替えていることが多いです。つまり減速時はもちろんですが、定速走行させているときも小刻みに静電気を発生させている可能性があります。
今回講じた対策ですが、ステアリングユニットと本体シャシを電気的につないでしまうという単純なものです。電線1本でこの2つをつないでしまうだけです。対策の結果、静電気ショックはウソのように発生しなくなりました。
まず、手前側の駆動部のカバーを外した様子がこちらです。取扱説明書に記載されていますが、このカバーは5個のネジで簡単に脱着できます。
写真の左側に写っているのがステアリングユニットで、大きなベアリング(水色矢印)を介してシャフトが本体シャシに固定されています。シャフトの下にモーターとクラッチブレーキ、操舵輪が見えます。黄色矢印はモーターと本体を結ぶ太いケーブルで、保護スプリングが巻かれているので、このスプリングコイルの中にアース線を共締めして、アース線を新設してステアリングユニットと本体シャシを結ぶというのが対策となります。
ステアリングユニット側の接続箇所
すぐに保護スプリングに潜らせています
本体側の接続箇所
上に遊びを持たせています
緑色の線が今回新設したアース線です。ステアリングは180度の角度で激しく動くため、多少の遊びを持たせて断線しにくくしてみました。宙ぶらりんの状態では、断線したとき制御ユニットの電子部品に接触しないとも限りません。その意味でスプリングコイルの中を通していますが、通すのが面倒だったら結束バンドで共締めしてもいいと思います。もし、これが自分のバイクや車だったら、迷わず保護スプリングの両端をペンチで少し伸ばしてスプリングそのものをアース線の代わりにしてしまいますが、さすがに職場のモノに対して元通りにできない改造はためらってしまいます。
ついでに保護カバーの内側に、本体シャシを床面に接触させるアース線を追加してみました。少しでも接地面積を稼ぐ目的で錫メッキ線の平編み線を使ってみました。わざわざ買わなくても同軸ケーブルを剥いてシールド線(編み線)を使ってもいいと思います。床面に接触しつつ車輪に巻き込まない長さにします。ただ、モルタルやアクリル樹脂塗装された屋内の床に対してどの程度の効果があるのかは疑問です。まあおまじない程度のものかなあ。昔のタンクローリーは車体から鎖を路面に垂らして走っていましたが、あれと同じ考えです。ただ、タンクローリーのほうは、車のタイヤに導電性があるため無意味とわかり、近年は鎖を見かけることもなくなりました。
写真でおわかりのとおり、各所に圧着端子を使っていますが、職場に圧着工具を持ってこなかったので、すべてはんだ付けで誤魔化しています。
ダメもとで講じた対策でしたが、結果として静電気ショックは皆無となり、みんな喜んで使ってくれるようになりました。
ここから少し補足です。構造的にはステアリングユニットと本体シャシは大きなベアリングを介してガッチリつながっています。ぱっと見は電気的に同電位とみるのが普通です。しかし、最初の写真の水色矢印の付近は、新車のせいかたくさんのグリスが塗布されています。この様子だとベアリングの中にもみっちりグリスが封入されているでしょう。私はこのグリスが悪さをしていると考えました。
ベアリングは金属製の外枠(アウターレース)と内枠(インナーレース)の間に真球の鋼球を並べて、スムーズに軸を回転させるための部品ですが、金属同士が接触しないように粘度の高いグリスが封入されています。このグリスのせいで絶縁状態になってしまっているのではないかと考えました。ここが絶縁されていると、モーターやクラッチブレーキの摩擦で発生した静電気は本体シャシに逃げられないので、ステアリングユニットに帯電します。このとき静電容量が大きく電位の低い人体が近づくと人間に対して放電します。これが今回の静電気ショックの正体だと思われます。それだったらより静電容量の大きい本体シャシに“逃げ道”を作ってやればよいわけで、それが今回追加したアース線です(アース線を追加する前に、ステアリングユニットと本体シャシ間の抵抗値を測定しておけばよかったと後悔しています)。
今回のトラブルは機械の個体差で運悪く発生したものだと思います。また、使い込んでいくうちにグリスが劣化して絶縁状態が悪くなると、アース線がなくても静電気は本体シャシに逃げるようになる可能性が高いです。
静電気トラブルはやっかいですが、発生源を断つか、逃げ道を作るかのどちらかしかありません。発生源は自然現象で抑え込むのはなかなか難しいので、今回は逃げ道を作る方法を紹介してみました。
長々と失礼致しました。



