アートセラピー作品の変遷と心の状態の変化 | グッドネーバーズ・ジャパンのブログ

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こんにちは。アートセラピー活動担当の高久です。

現在、大槌町のおさなご幼稚園では月に一度のペースでアートセラピー活動を継続的に実施しております。アートセラピー活動の成果を出すためには、継続的な実施が不可欠です。そして、アートセラピーの効果は子どもたちの作品から見て取ることができます。2012年7月から実施してきましたアートセラピー活動ですが、今までのおさなご幼稚園での作品の変化と子どもたちの心の変遷をお伝えいたします。

アートセラピーを継続的に実施すると、子どもたちの作品にはいくつかのステップを経て、子どもたちの心の状態の変化を見て取ることができます

第一段階:感情の解放
震災や、津波という今まで経験したことのないストレスを受けた子どもたちは、アートセラピーを開始すると、不安や恐怖など「言葉にできない複雑な感情を吐き出す」ということからはじめる傾向があります。この段階の子どもたちの作品には以下の様な傾向が表れます。

【作品に表れる傾向】
・紙粘土をグチャグチャにする(形のないものを作る)
・ぬり絵を単色で枠を気にせず塗りつぶす
・絵の具や粘土を混ぜ合わせグチャグチャにする

この段階での作品の特徴としては、紫、茶色、黒などの単色使いが多く見られます。
子どもたちが、紫色を使用する際の心理状況ついて専門家は以下のように述べています。

「気分を高揚させる赤と、気分を落ち着かせる青、その両方の性質を含む紫色。子どもが使う紫色の意味についてはさまざまな研究があり、心身エネルギーの低下と深い関連があるようです。(中略)子どもが紫色を好むときは、子ども自身の回復力が働いていると考え、好きなだけ使わせてあげるといいでしょう。(月間ホピー 2010年4月号 「絵を通して広がる!深まる!親子のコミュニケーション」 色彩心理学者 末永蒼生 著)
 

 
「3回目のアートセラピーで描かれた作品1(紫色)


「3回目のアートセラピーで描かれた作品2(黒)」

「3回目のアートセラピーでの作品(紙粘土)」


また、吐き出したい感情が強いときほど、ぬり絵を選ぶことが多く、画材はクレヨンを使用する子どもたちが多く見られました。

第二段階:自分と向き合う (自由に表現をし始める)
アートセラピー活動を継続していると、子どもたちの作品に以下の様な変化が現れます。このターニングポイントは6カ月目(6回目)を目安として訪れることが多いようで、おさなご幼稚園でも例外ではありませんでした。

【作品に表れる傾向】
・明るい色使いや、きれいな配色が見られるようになった
・ぬり絵よりも、自由に好きな絵を描きたがる
・紙粘土を使用して、より具体的なものを作り始める
・水を混ぜて使う画材への興味が出てきた (水をたっぷり混ぜたり、水少な目にしたり その日の状態により変化が見られた)

第一段階で一通り感情の吐き出しを終えた子どもたちは次の段階では、具体的なものを描き始めたり、具体的なものを作り始めたりします。しっかりと自分と向き合うことができ、落ち着きを取り戻しはじめていることが伺えます
 


「7回目のアートセラピーでの作品(カラフルな絵)


「7回目のアートセラピーでの作品(紙粘土で作った昆虫)」


第三段階:より心が安定しはじめる
第二段階から次の段階へ移行するタイミングとして、こちらも6カ月が目安になります。子どもたちの作品は、より具体的なもの、より緻密なものをモチーフにした作品へと変化してゆきます。4月で10回目を迎えたおさなご幼稚園の子どもたちの作品にも徐々にこの段階へとシフトし始めているようです。

 


「9回目のアートセラピーでの作品 (紙粘土で作った新幹線)」

 


「10回目のアートセラピーでの作品 (曼荼羅の絵)」


作品が、より具体的なものになるということは、子どもたちが今まで以上に自分と向き合うことができているということを意味しています。

以上が、おさなご幼稚園での作品の変化と子どもたちの心の変遷でした。おさなご幼稚園では現在、第二段階から第三段階へシフトをしつつあるということで、もう少し、活動を継続することが望ましいとの専門家の判断でした。そこで、2013年3月で終了予定であった本活動を、2013年9月まで延長することが決定いたしました。


今後の子どもたちの作品を見るのが楽しみです。

*写真提供: 東日本支援チーム・アートdeセラピー