リーグレベルで劣る相手に対し、満足の行く結果を出すことは出来なかったものの、新チームとして勝つためのいくつかのヒントを得ることが出来たのではないだろうか?
以下がドイツ合宿での試合結果だ。
Eintracht Braunschweig 1-1 Valencia (ドイツ2部)
SV Rödinghausen 0-4 Valencia (ドイツ7部)
Arminia Bielefeld 1-1 Valencia (ドイツ3部)
それぞれ2部以下のチームに対して勝利はたったの一勝。
非常に残念な結果に思えるだろうが、選手の調整と
そして、この合宿を経て、本日バレンシアにある本拠地メスタージャにて、ポルトガルの強豪FCポルトと対戦を控える形となった。
この試合は元々、日本代表の長友選手が所属するインテルとの対戦が組まれていたのだが、急遽キャンセルとなり、チャリティーマッチと銘打ってFCポルトを迎える。
先日、バレンシア郊外の街で起きた大規模な火災に対してのチャリティーマッチ。
対戦を受け入れて頂いたFCポルトには感謝をしたい。
残念なのは日本でのプレー経験もあるフッキ選手がオリンピックに出場中で不在ということ。
日本からの移籍後は、目覚ましい活躍を見せていることもあり、現地で観戦できないのは非常に悔しい。

フッキ。ポルトのキャプテン。チェルシーやトッテナムが興味。
しかし、このクラブには他に何人もの優秀な選手が所属している。
FWにはヤンコ(オーストリア代表)、ヴァレラ、ジョアン・モウチーニョ(ポルトガル代表)、アルバロ・ペレイラ(ウルグアイ代表)、デフール(ベルギー代表)などなど。
その他にも代表クラスの選手を何人も有し、昨年のポルトガル・スーペルリーガで優勝を飾った。
また、現監督のビトール・ペレイラを始めとしてモウリーニョ(現レアル・マドリー監督)、アンドレ・ビラス・ボアス(現トッテナム監督)などと優秀な監督を輩出しているクラブでもある。
多くの方がご存じのように、モウリーニョ監督時代にはデコ、リカルド・カルバーリョ、マニシェと言った実力者とともにCL優勝もしている。
(その際には、現バレンシアDFリカルド・コスタも所属。)

リカルド・コスタ。実に9年もの間ポルトに所属。
さて、そんな強豪との対戦を前にどういった点に注目して見るべきか。
山﨑の目から見た注目点。そちらを紹介しよう。
【ティノ・コスタの起用法】
昨年よりウナイ・エメリ前バレンシア監督との不仲が噂され、今夏の移籍を志願していたティノ・コスタ。
「移籍を希望する。正直な所、自分が主役になれるチームに行きたい。」

ティノ・コスタ。意外にもチーム内ではムードメイカー。
このように自分が王様になれるクラブへの移籍を志願するコメントを残したことで、バレンシアニスタをヒヤヒヤさせていた。
だが、先週のペジェグリーノ監督との退団を経て、ティノ・コスタの状況は一転残留に傾いたのだ。
この際の会話の内容については、言及しないにしろ、どのようなマジックを使って現監督は、彼を残留に導いたのだろうか?
私個人としては、今回のドイツ合宿にその意図が見えた気がした。
まずは、プレシーズンでの彼の出場したフォーメーションを見て頂きたい。
<Eintracht Braunschweig戦>
no team name
Soldado | |||
Jonas | |||
Guardado | Pablo | ||
Tino | Albelda | ||
Salva | Barragán | ||
Víctor | Quintanilla | ||
Guaita |
<SV Rödinghausen戦>
no team name
Jonas | Paco | ||
Piatti | Pablo | ||
Tino | Parejo | ||
Bernat | Pereira | ||
Delgado | Ricardo | ||
Diego |
<Arminia Bielefeld戦>
no team name
Soldado | |||
Jonas | |||
Guardado | Pablo | ||
Tino | Parejo | ||
Mathieu | Barragán | ||
Víctor | Ricardo | ||
Diego |
第一戦では、アルベルダと組んでいるが、それ以外はパレホを相方に試合に出場。
些か強引とも取れるかもしれないが、パレホと組んだこの試合に彼の活躍する場をペジェグリーノが与えたのではないかと推察する。
では、ティノの特徴をおさらいしよう。
・豊富な運動量と効果的なチェイス。
・正確なロングフィード。
・相手に脅威を与えるFKとロングシュート。
この2年の間にティノはいくつものスーパーゴールとアシストを記録しているわけだが、
これらを生かすことが彼を主役へと引き上げる最大の手段であることは、間違いないであろう。
それ故にパレホと組ませ、守備への負担の減らし方、ボールを保持している際の推進力の向上を学ばせているのだと考える。
これまで彼のハードワークが武器になっていたのは守備の時。
これを高げに変換させるためには、推進力や飛び出しの能力を引き出さなければならない。
パレホのボール保持能力を一緒に組ませることで学ばせ、逆にパレホにも守備をするということが如何に重要なことなのかを印象付けさせる。

パレホ。昨年は、守備の際に軽率なプレーを連発。
これがペジェグリーノの狙いなのではないかと私は思う。
元々、攻撃的MFとしてライバルであるが故に、実戦でのコンビを確立したことがなかった彼らにとっては、隣にお手本がいるという感覚は珍しかったのではないだろうか?
上手くマッチすれば、相乗効果となり彼らのレベルアップにも繋がると信じている。
さらにお互いが役割を理解し、攻守で協力し合えればバレンシアにとっても大きな助けとなるであろう。
このことが、これまでバレンシアで確立出来なかった3ボランチを形成する上で一番大事なことだと私は思っている。
そして、最終的には3ボランチが一つのオプションとして完全に確立すれば、モンペリア時代にティノが得意とした形での出場が見込めるようになる。
それが、彼がバレンシアで主役となれる唯一の方法だろう。

モンペリエ時代のティノ・コスタ。モンペリエは昨年のフランス王者。
モンペリエ時代のティノ・コスタ。
【魔法のアシストで生かされる選手たち】
さて、ティノの件に関しては少々強引に進めてしまったが、続いては新加入選手についても期待出来る可能性を探ってみようと思う。
表題通り魔法のアシストで数々のゴールを演出してきた、カナリアの魔法使いこと
ジョナタン・ビエラ。
昨年のセグンダA(2部)アシスト王の彼が新たに加入したことで、昨シーズンのバレンシアで日の目を見なかった選手が活躍する可能性がある。

ジョナタン・ビエラ。幼少期のあだ名は、ロマーリオ。
その一人がピアッティだ。
昨年のリーガ・エスパニョーラにおいて、彼は期待されていた程の活躍が出来なかった。
その要因として、ボールキープ時のドリブルのレパートリーの少なさが挙げられる。

ピアッティ。ベビーフェイスの若手MF。女性に人気。
小柄でスピードのあるピアッティではあるが、意外にドリブルが苦手。
ボールを持って走っているイメージが強いという方が多いかもしれないが、あくまでそれはフリーでボールを手にした時。
つまり、1対1の場面ではほぼ確実にボールを奪われている。
そんな彼が活きるためには、優秀なパサーが必要。
これまで彼へのパスが少なかったわけではない。
しかし、ジョナスやティノの低い位置からのハイボールは受けた後に加速をするピアッティにとっては若干ではあるが、受けにくいボールであったと言える。
ピアッティの長所
・オフ・ザ・ボールの動き出しと動き直しの巧みさ。
・フリーでボールを持った際の加速力。
・相手を引きつけるフリーラン。
これらの長所を生かすには、やはりフリーになることが重要。
そして、その瞬間を見逃さない選手が必要となる。
そこで、魔法使いの登場だ。
テクニカルなプレーをする反面非常に繊細なパスを放つことの出来るビエラのアシストで、今後ピアッティの得点、もしくは抜け出しを見る回数が増えることを願う。
勿論、抜け出しの上手いソルダードにとっても彼のパスは魅力的だ。
彼に関しては、もう一人の新加入選手のグアルダードとのコンビネーションに期待したいものだ
。グアルダードも昨季のアシストランキングで2位。

グアルダード。オフショットより抜粋。
魔法使いと王子のチーム内アシストランキング争いも楽しみの一つと言えよう。
ビエラのシンプルなパスとグアルダードの正確なクロス、そしてジョナスの相手をギリギリまで引き付けてからのスルーパス。
どれが今後のバレンシアにとっての武器となるのだろうか?
ドイツ遠征では放送がなかった分、日本のファンの方々にとっても私にとってもペジェグリーノの新生バレンシアを観戦できるのは、今日が初めて。
期待に胸を膨らませておくとしよう。
了