本を読む。そしてまた、何年か経って同じ本を読む。


しかし前回読んだ時と、まったく受け取り方や、感動の仕方が違う時がある。


自分の置かれた環境が変わったり、年齢を経てまた思いが変わるのだろう。




私は、沢木耕太郎氏の「無名」という本が、そうだった。




沢木氏は、ノンフィクション作家で、小説家、写真家でもある。




私は、「深夜特急」という、バスだけでインドからヨーロッパまで酔狂な旅をする全六巻の文庫本を興味深く読んだ。とても素晴らしい本だった。


それから沢木氏の本を読むようになった。




そして「無名」という沢木氏の本に出会った。


沢木氏の父親が入院して亡くなるまでの何日間の話を描きながら、父に思いをよせ、父と過ごした日々を振り返っている。著名な沢木氏と対照的にまったく「無名」であった父の事を書いている。




一度目この本を読んだ時は、私の父は認知症ではあったが、まだまだ元気だった。


入院のところもざっと読んだが、病気の事など注意深く読み返さなかった。ベルリンオリンピックの話を父と息子でするくだりには、涙がでた。


私も父からベルリンオリンピックの話を色々聞かせてもらってたからだ。思いが重なった。




それから、時が経て私の父は何度か入院し、年もとり、とても弱くなった。



                  


二度目に読んだ時は、病院のシーンはとてもリアルに映った。


何度も何度も病院のシーンを読み返した。マンションながら自宅から家族葬で出したことなどにも感動し、色んな場面で涙が出て一回目より、もっともっと感動した。
読み終わった後、すぐに父の顔を撫でに行った。とても愛おしいかった。
そして、そこに父がいる事がたまらなく嬉しかった。また涙がでてきた。


自分も年をとったことを痛感した。



歌もそうだが、子供の時は、森進一さんの「おふくろさん」の歌詞は、ピンとこなかったが、今は歌詞が身にしみる。



年を取ることは、容姿や肉体が衰えてくる。しかし、経験や教養は積み重なり、知識も増えていく。情感はより豊かになり、涙もろくなるように思う。



子供の頃、ご対面番組で母が必ず泣いていた。自分は涙がでなくて不思議だった。


しかし自分も二十代になる頃は、涙もろくなっていた。


年を重ねる事は、まんざら悪いことではないような気がする。                      




無名 [ 沢木耕太郎 ]




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ベルリンオリンピックは、1936年ドイツベルリンで行った夏季の大会。



ヒトラーの開会宣言が有名。この頃日本は日・独・伊の三国同盟を結んでいた為日本の選手たちは、たいへん歓迎を受けたとも聞く。

あの平泳ぎで金メダルをとった「前畑ガンバレ」の河西アナウンサーの名セリフはあまりにも有名。