青い旅人(第40話) | 青い旅人

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16才のヒカルは国家機密情報部の重要な任務を任された。任務名コードネームゼロ。記憶の片隅に消えた歴史、青い民の生き残りを連れ帰る。そして物語の終盤で岐路に立たされる。任務を遂行できるのか。何が待ち受けているのか。ヒカルはまだ知らない。

アリシパンに帰還するとヒカルは直ちに本部に向かった。到着すると数名のクルーが集まっていた。ほどなくして上官が姿を現した。

「全員無事に集まったようだな。さっそく本題に入る。ゼロの有力情報は収集できたか。」

誰も返事ができなかった。

「どうやらまだのようだな。ちょうどよい。ゼロミッションは今日をもって解散する。各自数日後には新しい任務が下される。それまでは自宅待機。国外に出ることを禁ずる。以上!」

ヒカルは突然のことに驚いた。あと一歩でゼロに辿りつく、何よりも母のこと、父のことをもっと知りたい。そして自分自身のルーツも。はっきりとした輪郭が見えてきそうだというのに自由に行動できなくなってしまう。ヒカルはこれまでの情報を報告しようかどうか躊躇っていた。まだ確実な情報とは言いがたい。報告は確証を得てからだといつもそう決めていた。もうしばらく真相を解明したい、報告しなければこのまま青い民のことまでも歴史の闇に埋もれてしまう。しかし、こんなに急に指令が中止されるのもどこか腑に落ちない。しばらくは自宅待機をし、様子を見守ることが得策に思えた。ヒカルは納得が行かないまま、家路についた。家に着くといつものようにゲオルクが温かく迎え入れてくれた。

「おかえり、ヒカル。どうした何かあったのか。」

「それが今まで追いかけてきた任務が急に中止になったの。もうすぐで手がかりがつかめそうだったのに。これからしばらく渡航を禁止されてしまったの。行かなくてはいけないのに。」

ゲオルクはヒカルを抱きしめた。

「どこへも行くな。」

「おじさん?」

「すまない。なんでもないんだ、気にしないでおくれ。」

ゲオルクは書斎に消えて行った。しばらくしてゲオルクが戻ってきた。

「少し昔話をしてもいいか。」

ヒカルは小さくうなずいた。

「ヒカルと出会う前、実は私には家族がいた。もし娘が生きていたら、ちょうど今のヒカルと同い年ぐらいだろう。私は当時ほとんど家に帰らなかった。全てにおいて任務が最優先だったからだ。だからあの日起こった異変にも気がつかなかった。長期の任務が終わり久しぶりに帰還したあの日、家に戻ると迎え入れてくれるはずの二人がそこにはいなかった。帰還の1週間前、何度も繰り返し連絡があった。しかし私は無事に帰るまではその電話に応じることができなかった。声を聞いてしまうと、一声、聞いてしまうと会いたくなるのが分かっていたからだ。任務を遂行する上で集中力を欠くことは禁物だ。妻もそのことは十分理解してくれていたし、実際に連絡など一度もしてきたことはなかった。その時点で気づきすぐに戻ればよかった。ミリーとエイミは何者かに拉致されてしまっていた。私の手の届かない場所に。後々私の諜報活動により検挙された政治犯だとわかったとき、何度も何度も悔やんだよ。家族の幸せを願い、仕事に邁進していた。生活を支える事、父親として立派に働く後姿を娘に見せたかった、彼女にとって尊敬できる存在でありたかったからだ。その一心で、プロに徹していたのに、仕事は私から一番大切なものを奪ってしまった。この古傷は自暴自棄になり、ミリーたちを追いかけようとしたときにできたのさ。生きている意味などなくなってしまったからね。でも二人には会えなかった。生かされたといったほうがよいのかもしれない。モーディアの海岸に打ち上げられ、全身打撲で身動きができなかったとき、天使にあったんだ。娘にそっくりの優しく微笑む天使に。「あなたは生きて」とそう言われたような気がしたよ。それがお前と俺のはじめての出逢いだ。政府視察団なんて、今となっては恥ずかしい限りだ。あの時の私は、自ら命を絶とうとしていた情けない男だったのに。それから私は、危険な諜報活動からは遠ざかり、お前の事を一番に考えた。もう二度と大切なものを失いたくなかったからだ。」

ゲオルクは唇をかみ締めた。