吉貝は再び重い口を開いた。
「わたしがこの研究に反対した理由がもうひとつある。その新生細胞はどうやって作られたと思う?それは一人の少年から採取された。この研究の発端となった研究者は、私の友人だった。あるとき彼が、年を取らない不思議な少年について語った事がある。その後、彼は人がかわったようになってしまった。末恐ろしい質問を何度も私にしてきた。進化のためには犠牲が必要だと彼は、独り言のようにつぶやくようになった。その後、私と彼は口論となり、疎遠になり、消息はわからない。しかし、きっと彼は、研究をし続けたのだろう。彼が行方不明になった頃と時を同じくして、彼が目標としていた薬が完成したからね。」
ヒカルは胸がざわついた。
「その少年は今も拘束されているのでしょうか。」
「それはわからない。私は一度逃げ出した少年が拘束されるところを見てしまった。少年の腕には痛々しい赤いあざができていた。
「腕のあざ?」
「そう赤いあざだ。それは痛々しく見るに耐えかねた。ただ現段階では、研究がストップしてしまった。薬も未完成だったところをみると、もしかしたら彼はもうここにいないのかもしれない。」
ヒカルはその少年がゼロであることを直感した。彼を探さなければいけない。またふりだしに戻ってしまった。ヒカルたちは吉貝から得た情報の信ぴょう性を探る必要が出た。そのためには、東の国の情報がもっとほしい。しばらくヒカルは由貝に同行する事が得策に思えた。
「ハルミテン遺跡に連れて行ってください。」
吉貝はにっこりした。
「新しい歴史を刻む旅へいざ参りましょう。」